SDGs 大学プロジェクト × University of Teacher Education Fukuoka.

福岡教育大学の紹介

福岡教育大学は、九州・沖縄地方における教員養成の拠点大学として、生涯にわたり学び続ける有為な教育者を養成することを目的としています。そのために、学生に、幅広い視野と豊かな教養、高い専門性、確かな実践力が身につくように様々な教育活動、学生支援を行っています。

本学の歴史は明治6年に設置された学科取調所(後の福岡師範学校)に由来し、歴史と伝統を持っています。この間、日本の教育界を支える優秀な人材を輩出してきました。九州の教員養成拠点大学としての福岡教育大学で学ぶということは、共に学ぶ同級生、先輩や後輩、教職員との触れ合いだけでなく、全国に広がる教員養成ネットワークに参加することを意味します。

在学中はもちろんのこと、教員として就職した後も、学び続ける先輩達の背中を追いながら、成長していくことが出来ます。

石丸哲史 教授の自己紹介

私は持続可能な開発のための教育、ESD(Education for Sustainable Development)の研究を行っています。

専門分野は地理学であり、地域の持続可能な発展に焦点を当てて研究を進めています。特に、地方において社会的課題の解決を目指すソーシャルビジネスに興味を持っています。この中で、ソーシャルアントレプレナーシップの育成が重要なテーマとなっており、それが教育の一環として注目している事柄です。

地域の持続可能な発展を目指す上では、地域づくりが欠かせません。地域づくりとは、人づくりから始まるとよく言われますが、その通りであり、地域の成長や発展には地域住民の力が重要です。地域の特性や長所を見極め、それを活かす力が求められます。このような力を育むための教育プログラムを模索しています。

持続可能な開発のための教育やSDGsをめざすソーシャルビジネスを研究するきっかけ

私の専門である地理学の教科書には、早い段階から持続可能性や持続可能な発展、そして持続可能な社会構築に関する記述がみられます。このようなサステナビリティに焦点を当てたアプローチが比較的早くから展開されていたことから、持続可能な開発の教育に対する興味がわいてきました。

さらに、私の所属する大学はESD(Education for Sustainable Development)の推進拠点であるユネスコスクールを支援する大学になっており、大学としてもユネスコスクールの活動を支援し、ESDの普及に尽力しています。このような背景から、私自身も含めて大学全体でESDの推進に関する意識が高まり、取り組みが進展してきました。

また、私の所在地である宗像市はSDGs未来都市として認定されており、近接する北九州市や周辺の自治体もSDGsに注力しています。この地域においては、SDGsの重要性が認識されており、地域社会からSDGs達成に関する要請や期待が寄せられています。

持続可能な開発のための教育で学ぶこと

学習指導要項では、「持続可能な社会の創り手を育む」という観点が強調されています。この目標を実現するために、本学の使命の一つは持続可能な社会の創り手を育む教育者を養成することです。そのため、確固たる教育プログラムを通じてかかる使命を果たす必要があり、その一環として授業が開設されました。

持続可能な社会の創り手を育むことのできる教育者となるためには、授業者である教員自身が持続可能な社会を形成できる人材であることが不可欠です。ESD(Education for Sustainable Development)はSDGsを達成するための教育でもあり、まずはSDGsに対する理解が必要です。さらに、持続可能性を追求する意義は、現代社会の持続不可能な場面に対する認識から生まれており、SDGs理解にとどまることなく、具体的な解決策を提案するプロセスを通じて学生が持続可能な社会づくりに関与することを重視しています。そのため、学生たちには、自らの行動がどのように解決に貢献できるかを考える機会を提供しています。

また、STEAM教育も大学の重要な課題の一つです。持続可能な開発を達成するためには、さまざまな教科からの洞察力や視点が求められるため、授業には私を含むさまざまな分野の教員が参画しています。それぞれの専門分野を活かしつつ、サステナビリティの視点から生物多様性や倫理的消費、持続可能なモノづくり、国際理解などに取り組み、学生が持続可能な社会を構築するためのアプローチを学べるように配慮しています。また、国際協力に参画することによって持続可能な社会の創り手を育む取り組みを行っており、JICA九州さんと連携して国際理解を深める機会を提供しています。

このように、多岐にわたる専門分野の教員が協力して授業を進行していますが、共通の目標に向かって一致団結しているため、認識のずれはありません。授業を受ける学生たちも、異なる分野からのアプローチにもかかわらず、共通の目標に向かって進んでいることを実感しています。授業の前には、参画いただく教員と学生の実態についての協議の場を設けており、授業計画を練り上げています。その結果、学生たちは異なる専門分野のアプローチを受け入れつつ、共通の目標に向かって前進するスタンスを感じることができています。

また、今日の学生は入学前からSDGsについての知識を持っていますが、その知識は主に17のゴールそのものの理解に限定していることが多いです。しかし、SDGsは単なる理解だけでなく、それを実現するための行動を求めています。このため、私の授業は、まず身近な状況から持続不可能性を感じ取ることから始まります。このアプローチによって、学生たちは自身の日常生活や活動における持続不可能な場面を認識し、グローカルな面でバランスの取れた持続可能な選択ができる力を養うことができます。その結果、学生たちはSDGsへの単なる理解にとどまらず、目標達成に向けた行動に結びつけることの重要性を実感するようになります。

高校生がSDGsに対してどの程度理解しているか、またどのようにSDGsに向かって取り組んでいるかを把握することは、高大連携の観点からも大学教育において重要です。そのため、高校で講演を行うことで、高校生の視点や取り組みについての情報を収集しています。この情報を通じて、大学の授業や取り組みをより適切に調整し、社会への貢献を追求してまいります。

福岡教育大学SDGsクラブの活動

主に、持続可能な社会の創り手を育む方法を検討する活動を行っていますが、同時に学生自身にも持続可能な社会形成に貢献できる意識を高めるため、授業だけでなく実践の場を提供するクラブと位置づけています。また、クラブの集団活動のみならず、学生個々の行動も重要視して、ボランティア活動など現実的な社会貢献を促しています。

具体的な活動としては、宗像市の海岸清掃への参加や、インドネシアを訪れてゴミ収集活動に参加するなどの取り組みが挙げられます。最近では、JALスカラシッププログラムにおいてアジアの大学生とSDGs達成の取り組みについて協議し、またJICA九州さんに多文化共生カフェを主宰していただき学生たちとの対話の場を設けました。これらの活動を通じて、学生たちの成長した立派な姿勢に触れる機会を得ることができ、大変感銘を受けています。

こうした機会やプラットフォームを提供することで、学生たちの成長を促進する手助けをしております。教育課程内外からアプローチし、学生たちが将来的に持続可能な社会を築くリーダーシップを発揮できるよう支援しています。

自分自身の行動を持続可能な社会への貢献と結びつける力を向上させたことが、活動後の感想から見て取ることができます。また、教育者としての役割を果たす上で、自身がどのように行動すべきかを考えるきっかけにもなっており、教師としての資質や能力を向上させることにもつながっています。

今後の展望

国の教育振興基本計画では、持続可能な社会の創り手の育成と日本社会に根差したウェルビーイングの向上が主要なテーマとされています。ESDにおいても、ウェルビーイングの重要性が強調されており、サステナビリティとウェルビーイングは相互に連動する方向性を持っていると捉えております。

サステナビリティを追求する人材育成には、具体的なビジョンや方針が求められるわけですが、ウェルビーイングという概念が示されることで、より具体的な展望が得られたと考えています。教師、生徒、学校、地域の関係者が共にウェルビーイングを志向し、持続可能な社会の構築を目指すための人材育成に取り組むことが、私たちの使命です。今後も、私たちがどのように貢献できるかを考え、努力してまいります。

SDGsクラブの展望について、まずは学生の参加人数を増やすことを目指しております。現在の授業はカリキュラム上3年生に設定されており、クラブに参加しても直ちに教育実習に臨み、その後は教員採用試験や卒業研究に向けた準備に入ることから、クラブ活動の機会が限られています。

そのため、来年度からは2年生向けの授業に変更し、新たなメンバーを募り、学年ごとの連携を強化していく方針です。SDGsの目標期限が2030年までと迫っており、残り7年という時間が限られています。これからも幅広い学生に対して声をかけ、参加を促し、達成すべきことや可能なことを共に考え、実行していく機会を持ちたいと考えております。

高校生へメッセージ

高校に出向いて話をする機会があるのですが、いつも質問攻めにあって驚きます。それだけSDGsに関心があるのだと思います。本当に2030年までに達成できるのでしょうかと問題を突きつけてくる真剣な生徒さんもいます。追究意欲があり、学ぶ意味を自分自身が把握して大学の授業に臨めるガチな生徒さんをお待ちしています。