
SDGs 大学プロジェクト × Toita Women’s College.
目次
戸板女子短期大学の紹介


戸板女子短期大学は、東京都港区芝に位置する私立の女子短期大学です。1902年に戸板裁縫学校として設立後、1950年に戸板女子短期大学が発足しました。
戸板女子短期大学の精神は、校訓としての「知・好・楽*」と、創立者戸板関子氏の教えである「至誠貫徹*(しせいかんてつ)」という言葉に表現されています。建学の精神は「時代に適応する実学の教授研究により、職業に必要な能力を育成するとともに、知性と品性を涵養*(かんよう)し、女性の人格形成と自立を目指すこと」です。


戸板女子短期大学では、服飾芸術科、食物栄養科、国際コミュニケーション学科の3つの学科を設置し、学びを後押ししています。各学科には特色ある教育目的が設定されており、それぞれの分野で活躍できる女性の育成を目指しています。
企業コラボレーションやプレゼンテーションスキルといった社会で必要なビジネススキルの習得と、各学科それぞれ独自の履修モデルで高い専門性が修得できる大学です。2年間という短い時間でありながら、社会で求められるスキルが身につきます。
戸板女子短期大学は、学びながら社会で役立つ実践力を身につけたい高校生にとって、多彩なプログラムを通じてバックアップしてくれる大学です。
知・好・楽:何事も知って、好きになって、楽しんで実行すること。
至誠貫徹:誠意を持って根気よく最後までやり遂げること。
涵養:自然に水がしみこむように徐々に養い育てること。
大学の屋上にある菜園「ルーフトップ・ラボ」で学びと交流を深める


-SDGsの取り組みの一環として開設された貴学の屋上にある「ルーフトップ・ラボ」について教えてください。
中村事務局長:「ルーフトップ・ラボ」は、本学の約200㎡の屋上空間を有効活用したもので、学びの場の創出や地域の魅力発信、そして社会貢献への取り組みの一環として始まりました。このプロジェクトでは、人々とのつながりや自然・社会との接点を持ちながら、リアルな学びの体験を通じて、より豊かな学生生活を育んでいます。
本学がある東京都港区は、周囲にビルが数多く立ち並ぶエリアに位置しています。太陽の照り返しも強いため、その日差しを活用するだけでなくヒートアイランド現象の緩和策としても、屋上菜園は有効な活用法の一つです。屋上菜園では港区立エコプラザの方のご指導のもと、ハーブやブルーベリー、綿花、サツマイモ、落花生など多種多彩の食物や素材を育てています。
この菜園は本学の学生だけでなく、地域の小学生も対象にしており、夏野菜の植え付けや収穫を一緒に行うことで、地域の方たちとの交流の場としても重要な役割を果たしています。
戸板女子短大はコラボ企画が多彩!プロジェクトを通じた実践的な学び
-貴学では「戸板プロジェクト演習」という授業があると伺いました。具体的にはどのような学びでしょうか?
中村事務局長:戸板プロジェクト演習は、2023年度まで課外授業として実施していましたが、2024年度からは授業の一環として組み込まれるようになりました。この演習は、他の講義や演習と異なり、行政や企業から提示された課題に対して、学生の視点を活かして解決策を模索するプロジェクトです。
学生たちは解決のために意見を出し合ったり、議論を重ねたりしながら、最終的には行政や企業に対して解決策を提案することを目指します。演習の期間は「提案」「プロジェクトの実施」「評価」という3段階に分かれており、これらのプロセスを経て、半年から1年かけて課題解決に取り組みます。
-このプロジェクトの狙いは何でしょうか?
中村事務局長:このプロジェクトの狙いは大きく分けて2つあります。1つは、学びを深めてもらうことです。行政や企業の課題解決のためには、適切な解決策の提示とプレゼンテーションでの発表が不可欠です。行政や企業にプレゼンを通じて解決策を提示するためには、学びから導きだした意味のある解決策の提示が必要だからです。
もう1つは、学習意欲を高めることです。このプロジェクトは2年生も参加しますが、1年生に培った学びを活かしながら、さらに学びを深めて、より高度な解決策の提示につなげます。学内の講義や演習だけでは、より実践的な学びにはつながりにくい場面もあります。行政や企業とのコラボレーションを通じて、学生たちの意欲を高め、同時に課題に向けた経験を積むことで、やりがいや達成感につながるというメリットもあります。
「究極のノコサンプロジェクト」で「残さない」レシピの開発!食品ロスの防止に


-「究極のノコサンプロジェクト」(以下、ノコサンプロジェクト)というネーミングが素敵ですね。このプロジェクトについて教えてください。
中村事務局長:ノコサンプロジェクトは、株式会社電通のノーペコラボ(ノー、腹ペコ!の意味)さん、株式会社ローソンさんとの産学連携プロジェクトです。電通ノーペコラボさんではSDGsの理念に基づき、飢餓・貧困をはじめとした「子どもと食」のあらゆる問題を軸に、「正しいことだからではなく、楽しいことだから、だれもがついやりたくなる社会貢献」を目指して活動されています。このプロジェクトには、食物栄養科の学生たちが参加しています。食品ロス防止に関する授業で得た知識を活かしながら、企業と連携して「食品ロスの解決」に取り組んでいます。
2023年には、電通ノーペコラボさんとの産学連携プロジェクト「極上のウマイごはんフェス2023」のレシピコンテストにおいて、「豆腐で作ったクリームのフルーツサンド」がノーペコ賞を受賞しました。2024年度のノコサプロジェクトでは、「パンの耳」と「自分の家で残りがちな食材」が課題食材として設定されており、これらを使用したレシピの開発が進められています。特に、「パンの耳」を用いたレシピについては、首都圏エリアのローソンさんにて商品化も検討されています。
日頃の学びが活かせるだけでなく、食品ロスにつながる商品開発ができるよう、皆で協力し合って開発に取り組んでいます。
港区で採れたハチミツを使った焼き菓子販売で地産地消につなげる!


-「みんなとプロジェクト」は地産地消への取り組みにつながっていると伺いました。具体的にどのようなプロジェクトでしょうか?
中村事務局長:このプロジェクトは、地域版のSDGsプロジェクトの一環として、港区や済生会中央病院さん、株式会社文化放送さんと一緒に取り組んでいます。
2023年には、港区芝地区で実施する多世代交流を目的とした養蜂事業「BeeBee’sプロジェクト」で採れたハチミツ「しばみつ」を使用したスコーンを考案し、販売した実績があります。レシピ開発は本学の食物栄養科の学生が担当し、製造はお菓子作りを得意とする地域の福祉作業所「港区立障害保健福祉センター(ワークアクティ)」の利用者のみなさんが担いました。

この「はちみつチーズスコーン」は、港区立芝公園で開催された「第18回ふれ愛まつりだ、芝地区!」や「東京タワーでの販売会」で販売しました。販売では食物栄養科の学生も協力し、チラシの配布や来場者への呼びかけを行った結果、完売しました。
「港区は都会」というイメージが強いかもしれませんが、実際にはハチミツが採れる学校や公園が意外と多い地域です。これからも地域で採れるハチミツなどを使用した商品の開発やその他の活動も通じて、地域の方と協力しながら地産地消につなげていきたいと思っています。
「それ式根で島せんか?」プロジェクトで伊豆諸島の式根島を応援!


-「それ式根で島せんか?」というプロジェクト名はおもしろいネーミングですね。これはどのようなプロジェクトですか?
中村事務局長:本学がある東京都には伊豆諸島・小笠原諸島に含まれる11の有人島があり「戸板女子短大として何か役に立つことができないか」と思い、伊豆諸島の一つ新島村とこのプロジェクトが発足しました。その新島村の島の1つに式根島があります。
式根島は夏には観光客が多いものの、島は夏のイメージが強いため、秋や冬の観光客が少ないこと、また小笠原や伊豆大島にくらべ知名度が低いなどが課題とのお話を島の方からいただきました。この課題に対し、現在、式根島における課題を学生の視点で洗い出し、島の活性化につながるプロジェクトを進めています。また、このプロジェクトは、総合教養センターが担当しており3つの学科の学生が参加しています。
本学は、60社以上のフレンドリーパートナー企業と連携し、さまざまな産学連携プロジェクトを推進しています。その一環として、フレンドリーパートナー企業に、島にある宿泊施設の一室をサブスクリプション形式で一定期間ご利用いただき、社員の方々にワーケーション先として活用してもらおうというプロジェクトです。
式根島には波穏やかで透明度の高い海水浴場や温泉が湧き出る豊かな自然があり、釣りやダイビングなど質の高いアクティビテイを楽しみことが出来ます。さらに、竹芝桟橋から高速船で約2時間20分、調布飛行場からも飛行機で約40分(飛行機は新島着)と、都心からも比較的利便性が良い島です。そのため、ワーケーション先としても利用できる島なのです。
このプロジェクトを通じて、式根島の知名度アップや振興に貢献したいと思っています。
「もったいない」を合言葉に、サスティナブルな活動を


-今、SDGsの観点からも、衣類の大量廃棄が問題になっています。貴学でも衣類のリサイクルを通じたプロジェクトがあると伺いました。どのようなプロジェクトですか?
中村事務局長:服飾芸術科のファッションデザインゼミでは、国内最大級のファッションリコマースサービス「ブランディア」を運営する株式会社デファクトスタンダードさんと共に「廃棄0(ゼロ)プロジェクト」を展開しました。このプロジェクトは、ブランド品の廃棄衣料を再利用したサスティナブルな服を製作し、完成した作品を「サスティナブルファッションショー」で発表する企画です。
プロジェクトのきっかけは、学生たちの「もったいないを解決したい」という想いから発足しました。現在、家庭から排出される衣類の約95%は、焼却または埋め立てによって処分されています。これは、世界全体で見ると、1秒ごとにトラック1台分に相当する量となります。衣類は安価なものも増えており、手軽に購入できる時代となっています。そのため、ファッション産業は商品が溢れている状況でもあるため、SDGsへの取り組みが急務な産業の一つです。
服飾芸術科のファッションデザインゼミでは「廃棄0%」を目指し、SDGsの目標12である「つくる責任、つかう責任」への貢献のために、廃棄衣料を再利用したサスティナブルファッションの制作にチャレンジし、その成果が高く評価されました。「もったいない」という気持ちはとても大切です。本学としてもこの想いに賛同し、学生たちの声に耳を傾けつつ、さらに支援できるよう努めていきたいと考えています。
今後の展望やメッセージ
-SDGsへの取り組みについて、貴学における今後の展望や、貴学に興味がある学生たちにメッセージをお願いします。
中村事務局長:さまざまなプロジェクト演習を進めて行くことで、今後もより一層プロジェクト演習や産学連携を強化させていきたいと思っています。その取り組みの中で、学生たちがさらに産学連携やSDGsの達成に貢献できる環境を整えることにも力を入れていきたいと思います。
高校生の方たちは今SDGsについて学ぶ機会が多いと思います。本学に興味を持ち、入学された際には、演習や実習を通じて楽しく学べる環境を整えるよう努めてまいります。
ぜひ、「もったいない」という気持ちから生まれる新たなプロジェクトを共に生み出していきましょう。