
後藤英之准教授に聞く!泊村地域産品ブランド化プロジェクトの舞台裏
目次
泊村地域産品ブランド化プロジェクトの概要
商学を基盤とする国立大学である小樽商科大学と私立大学である札幌学院大学の協力による地域活性化プロジェクトです。原子力発電所が所在する北海道泊村において、育てる漁業の一環として養殖の取り組みが進んでいるカブトホタテの知名度と付加価値を高めるため、学生の視点から販売戦略の策定やブランド化を進め、地域の活性化を推進することを目指しています。
プロジェクトを進めるために
対象となる地域のことを知らなければ、プロジェクトを進めることができません。泊村の魅力を知るために、主要な観光施設やスポットを訪れ、まずはフィールドワークを行いました。これは地域の理解を深める取り組みです。
そして、地域の産品であるカブトホタテのテストマーケティングを行うため、販売に向けた打ち合わせを進行しています。テストマーケティングの一環として、泊村役場の関係者、地元漁協組合のメンバー、学生が協力し、札幌市内のスーパーマーケットで試食販売を行い、実際の販売を体験します。その後、販売結果に基づいた評価会議やブランド戦略の報告会を予定しています。
泊村がプロジェクトの舞台となったきっかけ
泊村がこのプロジェクトの舞台となった背景には、私自身が泊村の地方創生に関わり続けてきた経緯があります。
私は現在、泊村の総合戦略策定委員会の委員長を務め、地域産業の育成に尽力してきました。泊村は北海道唯一の原子力発電所を抱える村であり、原子力発電と漁業が主要産業で成り立つ状況に対して、新たな産業の育成や雇用拡大、経済の振興を図る必要があります。この目標に向けて、大学と学生の支援とフォローを通じて地域の振興を推進することが求められました。
地方創生は単なる提案だけでは成果を出せません。そこで、大学と学生の協力を得て、着実なサポートを行うことが重要となりました。泊村からの要望も受け、このプロジェクトを立ち上げることに至りました。
小樽商科大学との連携理由
私は今年の4月に札幌学院大学に着任しましたが、以前は小樽商科大学の教員としても活動していました。今回のプロジェクトは、元々の同僚と協力して進めることとなりました。
私は現在は札幌学院大学の教員として、本学のゼミ生をプロジェクトに参加させています。ただ、本学のゼミ生が参加する前から、小樽商科大学の学生も既にプロジェクトに参画していました。実際、このプロジェクト以前には試行段階のプロジェクトがいくつかありました。カブトホタテのブランド化アイデアも、小樽商科大学の学生たちが提案して「カブトホタテ」という名称が誕生しました。
今年のプロジェクトでは、本学が本格的な活動をスタートさせましたが、それ以前に関与していた小樽商科大学の学生との連携を通じて、プロジェクトを進行しています。
産学連携を実施する上で大切なこと
産学連携において、巻き込み方を誤ると、計画は失敗してしまうことがあります。産学連携を成功させるために重要なのは、関係者との協力関係を築くことです。私は長い7~8年という期間をかけ、将来の総合戦略に基づきながら、役場関係者や漁業関係者とコミュニケーションを取り、徐々に信頼を築いてきました。まずは個人的なネットワークを築くことが重要だと考えています。
さらにもう一つ重要な点は、プロジェクトに学生を参加させることです。学生は利害関係が少なく、関係者同士を結びつける架け橋となります。例えば今回の場合、役場関係者と漁協関係者、または民間企業だけで協力関係を構築するのは難しいことがあります。しかし、学生が介在することで、私たちが支援し、協力しようという意欲が生まれます。このように、学生の存在によって関係が和らぎ、プロジェクトを円滑に進行できると考えています。
また、教育的な観点から、学生には北海道の現状を理解してもらうことを自指しています。私たちのマーケティングゼミでは、学習した理論を実践に活かすことを重要視しており、学生たちにもその目的を持って取り組んでいただいています。
マーケティングを行う上で意識すること
泊村のカブトホタテは、現在国内での幅広い流通はまだ実現していませんが、これには大きな可能性が秘められています。ほとんどが海外への輸出として取引されていますが、地域内で産出される資源を、地元で有効に活かせる機会を逃すことはできないでしょう。
しかしながら、カントリーリスクを考慮すると、単一の流通経路への依存はリスクを伴います。将来的には、多様な流通システムを築くことが、この状況を好転させる鍵となるでしょう。特に、北海道の人口密集地である札幌市圏での市場マーケティングを展開することは、カブトホタテの魅力を広め、新たな可能性を切り拓くために極めて重要です。ホタテの価格、売上、利益の展望を学生の皆さんが検討していることは素晴らしいですが、その価格で実際に販売が成り立つかを実証することも同様に重要です。これは、消費者の皆さんに新たな価値を提供することを目指す重要な活動です。
流通の拡大に関しては、学生の関与はこれからですが、これからの展開においては大いに期待しています。
今回カブトホタテの販売においては、北海道を代表する流通小売り業者であるコープさっぽろの店舗を利用しています。カブトホタテは独自のブランドとして位置づけられ、新鮮な状態で提供されます。そのため、価格が高めになるかもしれませんが、価値ある商品としての需要を見込んでいます。実際、コープさっぽろにおいては、高額な商品であっても購買される顧客が存在することが明らかになりました。
この好例をもとに、学生の皆さんがさらなる展開に向けてアイデアを出し合い、知識を活かしていくことを期待しています。企業との交渉は挑戦的な課題かもしれませんが、その過程で得られる経験やスキルはきっと大きな成果を生むでしょう。皆さんの活躍に期待しています。
高校生へのメッセージ
何事もそうですけれど、失敗しても再度挑戦していくこと。失敗をしなければ学習もしません。失敗を恐れず、新しいことにチャレンジをしてください。成功するかどうか、失敗するかどうかは別として、新たな試みに取り組むことが大学生活で求められる要素です。私のゼミの学生たちにも常に伝えていることですが、失敗を恐れずに積極的に新しいことにチャレンジしてほしいです。