SDGs 大学プロジェクト × Chuo Gakuin Univ.

中央学院大学の紹介

中央学院大学は、公正な社会観と倫理観の涵養を建学の精神とし、人権感覚や共生意識を育むことで、複雑化する現代社会を生き抜くための実力と創造力を備えた社会に貢献できる有能な人材を育成することを教育理念としています。

この理念は、大学設置法人である学校法人中央学院の前身、日本橋簡易商業夜学校の創立者の一人である高楠 順次郎氏が述べたものと伝えられている「誠実に謙虚に生きよ 温かい心で人に接し 奉仕と感謝の心を忘れるな 常に身を慎み 反省と研鑽を忘れるな」という教えに基づいたものです。

また、地域社会との連携にも力を入れており、千葉県我孫子市との包括協定を締結し、地域活性化に向けての連携や、地域で貢献できる優れた人材の育成を目指しています。学生ボランティアの活用、市職員の授業招へい、インターンシップ、大学図書館の開放など、地域社会に貢献する多様な活動を展開しています。

中央学院大学は、商学、法学、教養学の専門教育と総合的な人間教育を実践し、高い見識と人間性を持った人材の育成を目指してきました。この教育は現代にまで引き継がれ、学生一人ひとりの成長を支える多様な学部・大学院プログラムを通じて、社会に貢献できる有能な人材を育成しています。

国際家族法やジェンダー平等と、SDGsの関連性

― 大村学長は「国際家族法」が専門であるとのことですが、まずはご自身の研究概要について教えてください。

私は国際家族法のなかでも、世界各国の家族法が交錯する領域に焦点を当てています。例えば修士論文では、イギリスにおけるイスラム法上の離婚がどのような法的効力を持つかに関して判例研究に取り組みました。このような研究をはじめ、早期の段階から法とジェンダーに関連する問題に深く関わっています。

ジェンダー格差は世界各国に存在しており、例えば、イスラム教国における女性の地位に関する問題は、日本を含む多くの国に影響を及ぼしています。一時期、日本にはイスラム教出身国からの労働者が多く滞在していました。イスラム教徒の男性と日本人女性との間で結婚が行われることもありましたが、イスラム教には、夫が一方的に離婚を決定できる制度があります。その規範に従って夫が一方的に離婚する事態が発生し、その効力を認めるかどうかが議論されました。この問題は日本だけでなく、ドイツ、イタリア、イギリスなど多くの国で議論されています。

― 国際家族法やジェンダーに関する研究を進められるなかで、SDGsにも興味をもたれたのでしょうか?

そうですね。私は1983年に大学へ入学し、1年生の時から女性学のゼミを履修していました。当時、雇用機会均等法が制定される動きがあり、社会におけるジェンダー平等が注目を集めていました。この社会的な背景が、家族法やジェンダー平等に対する私の興味をさらに深めていったのです。

SDGsには環境や貧困、人権、ジェンダー平等など、多岐にわたる課題が含まれています。私の研究分野である家族法とジェンダー平等は、これらの課題に密接に結びついており、そのためSDGsへの関心が一層高まっていきました。

― そもそも、大村学長がジェンダーなどの分野に対する関心を持つきっかけはどのようなところにあったのですか?

直接的なきっかけではないかもしれませんが、私の父が法務省で働いていたことに始まります。自宅には同和問題や戸籍に関する実務的な書籍が数多くあり、小学生の頃からそれらに目を通すうちに戸籍に関する興味が芽生えていきました。このような書籍との出会いが、私の研究への出発点だったと感じています。

この興味が家族法へと繋がり、さらには歴史的な変遷や社会における女性の地位の変化にも注目するようになりました。この流れから、私の関心はジェンダーの問題へと広がり、大学時代には女性学のゼミへと飛び込んだのです。

― 女性の人権に対する意識が現在と比べても遅れていた時代からこのような研究に取り組まれていた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

幼少期の経験に深く根ざしています。父は国家公務員だったため転勤や単身赴任が多く、母と二人で生活する期間がありました。次第に家事を手伝うようになりましたが、大正生まれで戦時を経験した世代である父は、「男が家事をする必要はない」という考えを持っていたのです。当時の一般的な価値観では、男性が外で稼ぎ、女性が家庭を守ることが期待されていたのです。

一方で私の母は、結婚前は東京医大病院で衛生検査技師として働いていた、いわゆるキャリアウーマンでしたが、父方の祖母の発病と自宅療養を機に家庭に入りました。このような母の状況や家庭内での考え方の違いを実感した幼少期の経験も、ジェンダーに関する意識を形成した重要な要素となったのだろうと思っています。

SDGsとともに進める大学の挑戦やビジョン

― 最近は、SDGsに対する関心がやや下がり気味であると感じられる雰囲気も見られます。貴学がSDGsに注力されている思いや背景を教えてください。

前提として、本学には障害学生の受け入れに対し前向きであるという特徴があります。身体障害者や精神障害者など、多岐にわたる障害を抱える学生に対する支援体制を整備し、必要な配慮を提供するよう心がけております。

先日の大学入学共通テストにおいても、配慮が必要な受験生を受け入れ、ひとりひとりに合わせた環境整備や支援を実施いたしました。この「誰一人取り残さない」という姿勢は、SDGsの理念と密接に関連しているのではないでしょうか。

また、本学が位置する千葉県我孫子市の自然豊かな環境も重要な財産であると捉え、地域の特性を活かしたSDGsの取り組みを進めることで、持続可能な社会の実現に貢献できるとも考えています。

しかしながら、現時点ではSDGsを推進する体制準備を進めている段階であり、実績づくりはこれからです。SDGsの取り組みにおいては後発ではありますが、本学の中長期計画にもSDGs教育の推進を明記しており、SDGsへの取り組みは今後も発展を続けていくと考えています。MDGsからの流れを受け継ぎつつ、長期的な視野で取り組んでいきたいですね。

学生主導の「地域連携カイギ」が新たな学びと成長の場に

― 大学全体でSDGsに取り組まれることで、どのような効果や影響を期待されていますか?

本学には、控えめながらも真面目で、潜在能力を秘めた学生が大勢在籍しています。適切な機会を得れば能力を発揮し活躍できる、やる気がある学生たちなのです。
昨年には地域との連携を深めるため、「地域連携カイギ」という、地域や他団体とつながり、さまざまなイベント企画に携わることのできる学生サークルが設立されました。

地域連携カイギでは、学生たちが自らが地域プロジェクトの企画・立案ができるほか、子ども食堂の支援や駅前での花植えプロジェクトへの参加など、多岐にわたった活動に参加することができます。私がこの団体の活動を見学した際も、学生たちのポテンシャルやエネルギーを強く感じました。

本学には、学生たちの力を最大限に引き出し、さらに大きな成果に繋げるべくサポートする責任があります。SDGsもテーマの一つに据えることで、学生たちの活動にさらなる意義をもたらし、彼らの成長と社会への貢献を促進できるのではないかと考えています。

▼ 地域連携カイギについてはこちら
地域連携カイギとは(中央学院大学 公式HP)

― 地域連携カイギをはじめ、学生たちの活動において印象深かった出来事はありますか?

印象深いというと、やはり「学内熟議」でしょうか。学内熟読とは、異なる学部の学生たちが集まり、本学の将来について話し合うグループワークです。以前、この熟議に参加した学生たちから提出された報告書を拝読し、その中から実現可能な提案に対し、私からも積極的に対応策を講じました。

昨年の学園祭では、外部から招いたゲストによるスピーチを基に、大学生と附属高校生を含む約30名でディスカッションが行われ、私も少し見学させていただきました。今後もこのように、学生や生徒が主体となる企画が賑わってくれると嬉しいですね。

▼ 学内熟議についてはこちら
坂井ゼミ「学内熟議」実施報告書を大村学長に提出(中央学院大学 公式HP)

― 学生の方々は、自分たちの提案が学長によって実現されたことに驚いたのではないでしょうか。実際の反応や、そこから得られたきづきはありましたか?

学生とも話す機会がありましたが、とても好意的に受け取ってくれたように感じました。
実は、今後も学生とのカジュアルな意見交換会を開催したいと考えています。私はフォーマルな形式よりも、ラウンドテーブル形式で自由に意見を交換するようなリラックスしたスタイルが好みです。

現在、民主主義を専門とする若手の先生とそのゼミ生と一緒に、定期的に意見交換会を行っています。その先生は地域連携カイギの立ち上げメンバーでもあり、このような場を通じて学生との交流が拡がっていると感じています。

今後も穏やかな雰囲気の中で意見を交換する場を提供し、学生の力を活かし、彼らが取り組んでいる活動をアシストしていきたいと思います。

― 学長ご自身が、学生の方と気軽な雰囲気で接したいと考えられるようになったきっかけはありますか?

千葉商科大学の島田晴雄先生が学長を務めておられた時に行われていた「学長ゼミ」の存在を知ったことが、大きなきっかけです。

島田先生と学生の方々が共に様々な課外活動に取り組まれている姿を目にし、そのカジュアルで開かれた雰囲気の中での学生との交流に、非常に魅了されました。

たとえば、私のSNSアカウントのフォロワーの半数近くが学生であり、「春からCGU」や「春から中央学院大学」といったハッシュタグを活用し、新入生をフォローすることもあります。なかには、フォローバックしてくれる学生もいて、彼らが私の投稿に反応してくれた時は、実はとても嬉しいんですよね。

日々の小さな交流を通じて学生たちとのつながりを深めていくことが、私にとって大きな楽しみとなっています。今後も様々な形で学生との交流を継続し、更なるつながりを築いていきたいと考えております。

▼ 大村学長のアカウントはこちら
大村芳昭 / Yoshiaki  Ohmura(@cgufan19660401)|X

学生が主体となれる学習環境や機会の創出

― SDGsを理解し、実際に行動に移すことのできる学生を増やしていくための取り組みはありますか?

大きく二つのアプローチがあると考えています。一つ目は、学生が自ら活動できる場の提供です。本学では従来の座学形式だけでなく、学生が授業に積極的に参加し、自ら学びを深めることができる環境を整えることが重要だと考えています。

この実現には、アクティブラーニングの推進が欠かせません。学生の参加を促し、能力を引き出せる工夫を凝らす必要があります。そのために、まずは教員の方々に対し、シラバスの作成段階からSDGsやアクティブラーニングを意識した授業設計の推進を働きかけています。

二つ目は、授業外での実践的な経験を積む機会の拡大です。本学には、新入生歓迎のプライムセミナーや学園祭、体育祭などの伝統行事があり、これらの企画や運営は学生が主体となっています。これらの活動を通じて、学生はチームワークやプロジェクトマネジメントのスキルを身につけることができるのです。

地域連携カイギでも、地域社会と連携して社会課題に取り組む機会を提供しています。これらの活動はSDGsの理念にも合致しており、学生が社会の一員として貢献する意識を高めることに繋がっているのではないでしょうか。

学生と地域が協力して社会を形成していく過程は、SDGsの実現に向けた重要なステップとなります。今後も学生が学内外問わず積極的に活動できるよう支援し、見守っていきたいと考えています。

― 学生主体での体制において、壁(課題)を感じられることはないのでしょうか?

教員側が望むことを伝える際に、難しいと感じる場面はあります。
例えば、コロナ禍における学園祭の開催方法が大きな課題に直面した時です。コロナが少し落ち着いた際、学園祭を一般公開するか、学内限定で行うかという議論が起こりました。

私たち教員は、できるだけ地域の方々を招いて開催したいと考えていましたが、コロナ前の学園祭を経験していない学生たちは、非常に慎重な姿勢を示していました。そのため、その年は「来年は外部開催を再検討しよう」と伝えて学生たちの意見を尊重し、学内限定での開催を決定しました。翌年の2023年には学生たち自身がこの問題を再考し、般公開の形で学園祭を成功させることができました。

このように、学生主体の体制では時に調整が必要となりますが、本学は学生の能力を信じ、彼らが主体的に活動できるよう支援しています。

― SDGsやアクティブラーニングを意識したシラバスの作成は、非常に大変なのではないでしょうか? 先生方はどのような反応をされていますか?

SDGsやアクティブラーニングを意識したシラバスの作成には、確かに挑戦的な側面もありますが、本学では既に数年前より文部科学省が推奨している学習力や社会人基礎力をシラバスに組み込んでおります。社会人基礎力に関連する約20項目を明確に設定し、各授業においてそれらの項目がどの程度身につくかを具体的に(これまではシラバスに、これからは学生要覧に)明記します。

また、SDGsには17の目標が存在しますね。今後、各授業がどのSDGsに該当するかを示すことを検討したいと思っているのですが、そのことによって、学生たちのSDGsに対する理解を深め、具体的な行動に移しやすくなるのではないかと考えています。

まだ準備段階ではありますが、この試みが教育内容の充実につながり、学生たちが社会で活躍できる人材としてさらに成長できることを期待しています。

今後の展望

― 今後の展望や、力を入れていきたい方向性について教えてください。

先ほどご説明したシラバスの作成は、本学の取り組みにおける出発点であると考えています。シラバスに掲載された内容を実際の授業で実施し、その結果を踏まえて改善を進め、PDCAサイクルを回していくことが大切です。

SDGsを授業に組み込むことは、一筋縄ではいかないかもしれません。授業によってはSDGsの特定の目標に当てはまらない場合や、複数の目標に関連する場合があります。各授業とSDGsがどのように結びつけられるのかを見極め、適切に取り組んでいくことが重要と考えています。

本学の目標はSDGsに限らず、学生が社会人基礎力を身につけ、世界的な課題に積極的に取り組む視野を持てるよう促すことにあります。そのためには、大学が提供する教育内容の質を向上させ、学生たちが深い学びを得られる環境を整えることが不可欠です。

新たな取り組みを進める中で、授業の内容や方法を見直し、学生たちの学びが最大限に引き出されるよう努めていきたいと考えています。シラバスはその基盤であり、本学の学生が社会に出てからも持続的に価値を生み出せるようなスキルや知識を身につけられるよう、これからも継続的に工夫を凝らしていきたいと考えています。