SDGs 大学プロジェクト × Bukkyo Univ.

佛教大学の紹介

佛教大学は京都市内にある仏教精神を建学の理念とした私立大学で、2022年に開学110周年を迎えました。
仏教・文学・歴史・教育・社会・福祉・保健医療の7学部15学科を有し、学生数は約6,000名。目的意識の高い学生が多く、卒業後の目標実現に向けて学んでいます。

さらに、60年の歴史を持つ通信教育課程では、教員免許状の取得や京都や仏教、書道について学ぶ教養講座など、様々な学びの機会を提供しています。

エコキャンパスプロジェクトの活動と目指しているゴール

–エコキャンパスプロジェクトの主要な活動と目指しているゴールを教えていただけますか?

活動の発端は「2050年カーボンニュートラルを目指す」の考え方から始まりましたが、現在の社会情勢に鑑み、本学においてもエコキャンパスを推進したいという願いから、このプロジェクトは立ち上げられました。

2022年には開学110周年を迎え、次の10年、20年と新たな歴史を刻んでいくために、環境問題と真摯に向き合い、私たちはこのエコキャンパスプロジェクトに取り組んでいます。

このプロジェクトの趣旨は、佛教大学の学生と教職員を中心に、そしてキャンパス周辺の地域の皆様を含め、あらゆるステークホルダーが共に協力し、エコキャンパス化を実現させることです。

具体的な取り組みとして、緑のカーテンを用いて省エネを図ったり、学内でのペットボトルの使用量を可視化し、破棄されるペットボトルの数を把握するとともに、それらを再利用したペットボトルツリーを作成する企画を進めています。

さらに、外国産の割り箸の使用を減らすため、竹を使用したマイ箸作成ワークショップを開催するなど、様々な取り組みを実施しています。

京都府と佛教大学の共同開発イベント

–京都府・佛教大学共同開発イベントについて経緯などを教えてください。

最初、このプラごみワークショップは学内で開催され、学生が楽しみながら参加できるワークショップを提供し、環境に関する考えを深める機会を提供することを目指していました。

プロジェクトメンバーでアイデアを出し合い、最終的に海洋ごみを活用したアクセサリー制作に取り組むこととなりました。当イベントは、本学の学生が夏期休暇期間中に収集した海洋ゴミを使用し、キャンパス内で3日間にわたって開催されました。予想を超える多くの参加者が集まり、高い評価を受けました。

更に、タイミング良く京都府の関係者に興味を持っていただき、京都府と佛教大学は共同でイベントを開催することとなりました。これまでに、この共同イベントは地域のショッピングセンターで4・5回程度開催され、子どもたちを対象に楽しく体験できる場を提供しています。

実は、このイベントが始まる前、エコキャンパスプロジェクトがスタートした段階で、私たちは京都府の循環型社会推進課に連絡を取り、「何か一緒にやりませんか?」と提案していました。
関係者の方が名前を覚えてくださっており、京都府のマイボトル利用促進キャンペーンともマッチするため、共同で取り組むことが決まりました。

プロジェクトにおける学生の役割

–啓発活動というと大学生の存在が大きいポイントになると思いますが、そういう意味で大学生の役割は具体的にどんなところになるでしょうか?

プロジェクトメンバーとして参加する大学生に対して、私たちは役割を強制するのではなく、むしろ「楽しみながら環境問題に向き合うことを一緒に行いませんか」という形で参加を呼びかけました。ですから、役割を与えるというよりは、お互いに協力し、共に学びながら活動する仲間としての意識を持っています。学生も教職員も、同じ視点から問題に向き合い、協力し合って取り組んでいます。

緑のカーテン

–では学生によるプロジェクトの前に、緑のカーテンについて、経緯と具体的にどういうことをされたか、お伺いしてよろしいでしょうか?

保健医療技術学部の学生が主に利用している、JR二条駅に隣接する二条キャンパスは、一つの建物そのものが一つのキャンパスとなっており、緑化の不足が課題でした。このため、まず二条キャンパスの緑化を促進し、同時に省エネにも繋がる取り組みとして、緑のカーテンを設置することに決定しました。

具体的には、キュウリとゴーヤが中心となる緑のカーテンが採用されました。今年、これらの野菜は十分な収穫ができたため、学内の食堂に提供され、学生の食事メニューにも取り入れられました。

この取り組みは、学生からではなく、職員からの提案に基づいて始まりました。私は紫野キャンパスに所在しており、常に学生の反応が把握できるわけではありませんが、作業中に「あ、こんなカーテンできたんや!」や「なんか、涼しげやね」といった学生からの声を聞くこともありました。

また、野菜は毎日供給できるわけではないため、食堂では学生が列を作る場所にポスターを掲示し、「今日は、佛大の二条キャンパスで収穫されたキュウリを使用しています」とお伝えすることで彼らにも認知されました。さらに、学内のホームページでも同様の情報を提供し、広く周知しました。

学生主導のプロジェクト

現在、学生主導のプロジェクトを二つ進めています。ひとつ目は、ペットボトルのキャップを収集し、それをアート作品に仕立てるという取り組みです。

もうひとつは、11月に行われる学園祭に向けて、学生や教職員から古着を集め販売し、その売り上げを環境保護活動の団体に寄付し、社会貢献に繋げる計画です。

ペットボトルキャップアートについては、現在デザインの下書きを考えている段階です。学内で集めたキャップは1ヶ月ほどで30キロもの量に達しました。予想以上に多くのキャップが集まったため、超大作を制作する予定です。卒業式と入学式が近い日程で開催されますので、その際にキャンパス内で展示し、花を添えられたらと考えています。

私たちが学生たちに期待しているのは、独自の視点や素晴らしいアイデアを出してくれることです。それを活かし、このプロジェクトを通じて自身の強みを発揮し、成長していく姿を見ることができることに大きな喜びを感じています。

エコキャンパスプロジェクトと社会連携センター:大学内外での連携と役割

–一般には、学生は意見を出しづらいようにも思います。それを受け止める窓口や、受け皿となる制度などはあるでしょうか?

私は今回、エコキャンパスプロジェクトのリーダーとしてお話させていただいていますが、普段は社会連携課の課員として業務にあたっています。「プロジェクト」とは、若手の教職員を中心に学生支援課、広報課、入学課など、様々な部門を超えたメンバーで構成されており、いわゆる「配属部署」とは異なる位置づけとして取り組みを行っているものです。学生を含め、自由に意見を言いやすい雰囲気づくりを心がけていますが、これは普段、社会連携課で行っている学生の活動支援に基づいたものでもあります。

社会連携センターでは、ボランティア活動の支援や、地域社会の課題を解決するためのプロジェクト等を展開しており、「こんな活動をしたい」という学生に対して、具体的な提案を行っています。例えば、環境保護に興味がある学生には、京都府や南丹市等の行政や学外団体との協定に基づいたプロジェクトである「モデルフォレスト運動」への参加を促します。参加した学生たちは、美山町での林業体験を通して「自然の尊さを学び、森林保護をとおして人と人が繋がる」ことができます。

その他、社会連携センターの多様な取り組みにおいて、学生が「自ら考え、課題解決に向けて意見を出し、チャレンジできる」プロジェクトを展開しています。

学生にとっての自分ごと化

–エコプロジェクトそのものと少し異なりますが、地域貢献や環境保護、環境保全のようなテーマに、大学生は強い意識を持っていますか?

学内で行われたアンケート調査において、「環境問題に興味がありますか」という問いに対する回答は多くが「はい」となっています。しかしながら、「実際に行動していますか」という問いに対する「はい」という回答は減少傾向にあります。このことから、多くの学生が環境問題には興味を持っているものの、具体的な行動には移せていない可能性が高いと推測されます。

しかしながら、興味を持っている学生たちは、適切な機会さえ提供されれば積極的に行動に移すことができると考えています。ですから、環境問題に関心を持つ学生たちが、プロジェクトをきっかけに実際の行動につなげ、より持続可能な未来への一歩を共に踏み出すことができたら、プロジェクトメンバーとして嬉しく思います。

–今の時代では、中学生や高校生でもSDGsという言葉を耳にする機会が増え、学校でも「社会貢献が重要だよ」という教えが行き渡っています。しかし、具体的にどのようにしてプロジェクトに参加できるのか、またはどのようにしてプロジェクトを立ち上げることができるのか、といった方法について指導してくれる存在に出会う機会は少ないかもしれません。このような窓口の設置や方法に関して、特にこだわっているポイントはありますでしょうか?

私たちがこだわっているのは、学生の主体性や発想の自由度を保つことです。「プロジェクト」は、自らがやりたいという意志から生まれたものですので、「やらされている感」を感じさせないよう心掛けています。ただし、やるならば、きちんと責任を持って取り組む姿勢を持つことをメンバーで共有しています。主体性を確保しつつ、仲間として連携し、共に頑張っていくことを意識しています。

ー現在お話いただいている内容、すなわち「自分ごと化」することは、容易ではないと考えます。学生にとって、環境破壊の問題は直接的には自身と結びついていないことが一般的であり、またSDGs(持続可能な開発目標)という言葉に対しては、国連や遠くの地域で起きている出来事といった印象が抱かれることもあるでしょう。

このような状況の中で、「自分ごと化」するきっかけを提供できるのは、教育機関の強みだと考えています。そのための仕組みは、設けられているのでしょうか?

本学には、環境問題に特化した学部はありません。しかしながら、関連分野においては、社会学部にて環境問題に焦点を当てた授業が実施されています。例えば、林隆紀准教授が担当されている授業では、ペットボトルごみの廃棄量を削減する方法や分別したくなる仕組みについて、学生自身に考察を促し、実際に学内のゴミ箱を利用して検証まで行いました。

最終的にはそれぞれの班がプレゼンテーションを行い、エコキャンパス化に向けて提案を行いました。林先生ご自身も、このエコキャンパスプロジェクトのメンバーの一人であるため、この検証は、プロジェクトの一環として実施されました。身近なことを題材とすることが、「自分ごと化」するきっかけになると考えています。

エコキャンパスによる環境意識の変化と今後の展望

この章では、プロジェクトの影響と今後の展望について、触れていきます。

エコキャンパスによる環境意識の変化

–エコキャンパスを実施することで、学生さんや教職員の方々や地域の方々などに、行動や意識の変化はありましたか?

例えば京都府と共同で実施したワークショップでは、親子で一緒に参加するケースが多いです。そこで、ウミガメが網に絡まってしまっているポスターを見て、「海にゴミ捨てたら、こんなことになるんやで!」といった会話が交わされていました。このような状況が、家庭内で環境学習のきっかけになっているのだろうと感じさせられる事例でした。

また、キャンパス内では、階段の利用促進キャンペーンの一環として、階段に工夫を凝らした取り組みを行ったことがあります。階段に絵を貼り付け、階段を上るごとに絵が見えてくるという仕組みでした。期間限定の企画でしたが、学生からは「あれがあるから階段を使ってました!」といった反響を頂戴しました。

もうひとつの取り組みとして、学内にウォータースタンドを設置しました。冷水と常温水をマイボトルに入れる仕組みを導入し、学生や教職員からは「ペットボトルの水を買わなくなりました」「これを機にマイボトルを導入しました」といった様々な声を頂戴しました。

これらは生活の中の些細な変化かもしれませんが、環境への配慮が変わり、良い方向へと選択を変えるきっかけとなったと言えるでしょう。
これらの取り組みは、小さな一歩かもしれませんが、環境への意識を高め、持続可能な未来への貢献を目指す上で、意義深い成果と言えるのではないでしょうか。

今後の展望

–では最後の質問として、今後やっていきたいことを教えてください。

今までの取り組みは、一つ一つが単独であり、いわゆる点の取り組みでした。加えて啓発にフォーカスしており、実際には環境への貢献が限られていました。このような状況を踏まえ、環境への積極的な貢献を目指し、キャンパスの電力供給を再生可能エネルギー100%に切り替える準備を進めています。

また、海洋ゴミワークショップをきっかけに、京都府をはじめ、ショッピングセンターの関係者との連携を構築することができました。これらの関係性を今後一層強化し、地域全体で環境問題に取り組んでいけたらと考えています。

さらに、大学という組織の主役は学生ですから、学生が環境問題に向き合うことで成長し、気付きを得て、輝けるようなプロジェクトにしていくことが私たちの目標です。その取り組みの中で、エコキャンパス化は確実に成果として表れてくるものと考えています。また、在学中だけでなく、このプロジェクトを通じて、学生が卒業した後も環境に配慮した選択ができるような人材を育てていきたいと思っています。