
SDGs 大学プロジェクト × Kanda University of International Studies.
目次
神田外語大学の紹介
神田外語大学は、「言葉は世界をつなぐ平和の礎」を建学の理念として、多様な文化と価値観に精通するグローバル人材を育成することを目指して1987年に設立された、千葉県千葉市にある私立大学です。
同大学では、英米語学科のほか、アジア言語学科(中国、韓国、インドネシア、ベトナム、タイ)、イベロアメリカ言語学科(スペイン、ブラジル・ポルトガル)、国際コミュニケーション学科(国際コミュニケーション、国際ビジネスキャリア)、そしてグローバル・リベラルアーツ学科と、異文化コミュニケーションを学び、世界の課題と向き合う国際教養を身に着ける専攻が多くあります。
多くの授業でディスカッションやディベート、プレゼンテーションが行われ、総合的な考える力を身につけるのが特徴で、多様な文化と価値観を知ることは、自分を客観的に見ることにつながり、固定観念にとらわれず論理的に考える「クリティカル・シンキング(論理的思考法)」を養います。
どの専攻でも、英語も確実に修得するダブルメジャー制度を採用。グローバル環境で通用する幅広い専門領域が用意され、キャンパスには、ハラール食も提供しているアジアン食堂がある他、英語学習に没頭できる巨大な自立学習空間や、アジアや中南米など各国の代表的な建築物を模した学習施設など、多文化共生を肌で感じモチベーションを高める仕掛けづくりが、各所でなされています。また、学生団体やサークル活動も盛んで、様々な国の留学生や日本人学生と交流することができます。
神田外語大学は、グローバル社会で活躍するために必要なスキルを身につけることができる、国際色豊かな大学です。興味のある方は、ぜひ一度キャンパスを訪れてみてください。
SDGsに取り組まれてたきっかけ
LIVIKA(島崎): 神田外語大学で、SDGsに関する取り組みが始まったきっかけは何ですか?
学長室 外間さん:2018年4月に宮内孝久学長が就任したことが、SDGsについて取り組むきっかけとなりました。学長は三菱商事株式会社の代表取締役副社長を務めたこともあり、国際ビジネスの第一線で活躍された経験を持ち、SDGsについても深く理解しています。当時、学長が話した学生の中で、SDGsという言葉を知っている学生がほとんどいなかったことに衝撃を受け、まずは啓蒙活動から始めましょうということになりました。
LIVIKA(島崎): 学長がSDGsに取り組むことを決めた後、具体的にどのような活動が行われたのですか?
学長室 外間さん:当時、全学的にSDGsを掲げた活動はありませんでしたが、学長の危機感から、学生全体がSDGsを知ることをゴールにした啓蒙活動が学長室主導で始められました。学長は、全国でもいち早くSDGsの推進を始めていた金沢工業大学の大澤敏学長と懇意にしていたこともあり、大学でのSDGs推進についてヒントをたくさんいただきました。
大学におけるSDGs推進
LIVIKA(島崎): 具体的にどのような活動が行われたのでしょうか?
学長室 外間さん:金沢工業大学の学生主導で始めたTHE SDGs アクションカードゲーム「X(クロス)」に感銘を受け、学内のFD講演会でのワークショップを開いたり、1年生全員が参加するオリエンテーションキャンプ等で実際にカードゲームを使ってSDGsを学ぶセッションを導入したりするなど、取り組みが広がっていきました。2021年度には本学のイベロアメリカ言語学科スペイン語専攻の青砥ゼミ生たちがお手伝いして、カードゲームのスペイン語版を共同で製作したこともあります。
また、Self-Access Learning Center(以下、SALC)という、学生一人ひとりに合った英語学習をサポートする施設があるのですが、比較的新しい施設ということもあり、学生が集まります。そこでの学びの一つに、ラーニングコミュニティと呼ばれる学生の自立学習を支援する仕組みがあり、そこを統括している教員にSDGsの啓蒙活動を企画して欲しいと持ち掛けたところ、「SDG Awareness Week」という啓蒙週間のイベントが生まれました。2019年6月に5日間開催された「SDG Awareness Week」では、SALCで有志の学生による展示だったり、教員によってSDGsを教材とした「サステイナブルな生活をするためには」を考えさせるようなワークショップが行われたりしました。新型コロナの影響で2020年は開催できませんでしたが、2021年、2022年は毎年継続的に開催されています。
ボランティアセンター玉造さん :本学は、ボランティアに関心が高い学生も多く、ボランティアサークルに所属していたり、ボランティアセンターの方で紹介しているプログラムに参加する学生もおり、SDGsへの関心は高いと思います。
学生全体にSDGsの認知を広げる施策とは
LIVIKA(島崎): それでは、ボランティアセンターが旗振り役を務め、ボランティアに関心がある学生にSDGsを広げたのでしょうか?
ボランティアセンター玉造さん :ボランティアセンターは学生が様々な社会課題に興味を持ってもらえるよう、難民支援や国際協力、フェアトレードといった様々なオンラインセミナーを実施していますが、旗振り役という程ではありません。学生たちは、将来のために、今何ができるかを考えて動きだしているという感じでしょうか。例えば、オリンピックを幕張から盛り上げようと立ち上げた「55!MAKUHARI」という学生団体があります。彼らは、コロナでオリンピックが延期となった際、オリンピックだけではなく、もっとサステイナブルなことにも視野を広げたいとSDGsに取り組み始めました。団体のロゴは、SDGsのカラーを使用しています。「55!MAKUHARI」以外にも、地域のボランティアとして、千葉市に来られたウクライナ避難民の方々と一緒に幕張の浜のビーチクリーン活動を行っている学生もいます。様々な活動が結果的にSDGsの活動になっているというところでしょうか。
LIVIKA(島崎): 建学理念は、”言葉は世界をつなぐ平和の礎”というものですが、SDGsとの共通点はありますか?
グローバル・リベラルアーツ学部 石井教授:はい、私たちは「多様性」と「繋がり」という価値観を共有しています。ですから、SDGsの土台となる「持続可能な開発(Sustainable Development)」の考え方がある程度自然に浸透しているとも言えます。”SDGsを意識的に頑張って取り組もう”というよりも、平和な世界の実現に向けて、自分たちの活動を通じて世の中をより良くしていきたいという想いが、SDGsに繋がっているのではないかと思います。
SDGsらしい活動とかはありますか
ボランティアセンター玉造さん :SDGsらしい活動として2つのプロジェクトをご紹介いたします。
55!MAKUHARI
LIVIKA(島崎): 「55!MAKUHARI」は、具体的にどのような活動を行っていたのでしょうか?
ボランティアセンター玉造さん:コロナ禍で経済的にも大変な思いをしている人が少なくないことから、先輩から後輩に教科書や本を渡せるようにとホームページを作って「おさがり企画」と名づけた活動を行っています。その他にもコンタクトレンズの空きケースを、企業を通してアイバンク協会の寄付に繋げたり、UNICEFの子どもたちへのワクチン接種に繋がるペットボトルキャップの回収を行ったりしています。
阪田ゼミの学生による”SDGsネイティブからの変革への提言”
LIVIKA(島崎): 2021年度には、国際コミュニケーション学科(当時)の阪田恭代教授のゼミ生が、SDGsに関するワークショップを開催したそうですね。その背景にはどのような課題があったのでしょうか?
学長室 外間 さん:そうですね。ゼミ生たちは、特に環境問題や社会課題に強い関心があり、その解決に積極的に貢献したいと常に考えている「SDGsネイティブ」世代であるという意識を持っている学生たちで、大学として何ができるかを考えるためにゼミに参加し、行動に移したのがこのワークショップだったということだと思います。
LIVIKA(島崎): ワークショップの他にも、「KUIS SDGsマッピング」が作られたとのことですが、具体的にどのような調査が行われたのでしょうか?
学長室 外間さん:「KUIS SDGsマッピング」は、学内の関係者がどのようにSDGsに取り組んでいるかを調査した結果をまとめたものです。学生や教職員がどのような活動をしているか、そしてそれらの活動がどのように相互作用しているかを調査しワークショップで報告してくれました。その結果、SDGsをテーマに取り入れた語学授業が多くあったり、様々なサークルでのボランティア活動があること、個人でも、ボランティアセンターを通して学外のボランティアに参加する学生がとても多く、様々な活動をしていること等が可視化され、お互いの活動への理解を深めることができたのですが、それと同時に、たくさんのアクターたちが様々な活動をしているにもかかわらず、お互いの活動をほとんど知らないままになっているという課題が明らかになりました。同じビジョンを持って活動しているアクターたちがお互いに協力し合ったり、より大きなプロジェクトに発展させられる可能性を秘めていると考え、そのギャップを埋めるための施策が提案されました。
LIVIKA(島崎): ワークショップ後には、提言「KUIS SDGs 2030~行動10年のための計画~」が作成され、学長室に提出されたそうですね。これはどのような内容だったのでしょうか?
学長室 外間さん:「KUIS SDGs 2030~行動10年のための計画~」は、神田外語大学がSDGsに取り組むことを強く求め、具体的に何ができるかを提案した提言書です。マッピングやワークショップで明らかになった課題を踏まえ、神田外語大学内の全アクターがSDGsに参加できる共通の環境を提供するプラットフォームをつくり、そこで各アクターの活動を可視化して全員がガバナンス、教育、社会貢献で協働できる環境を作ることが提案されました。このプラットフォームを教職学協働で創出し、ポスト2030を見据えたサステイナブルな未来を創造していくことが期待されています。
LIVIKA(島崎):なるほど。では、SDGsプラットフォームは具体的にどのようなものになるのでしょうか?
学長室 外間さん:まずは、学内のSDGs関連活動に関する情報をまとめるポータルサイトを作ることを目指しています。
今後の取り組みについて
LIVIKA(島崎):なるほど、学長室の方々もこの取り組みに関わっているということですが、どのような役割を果たされているのでしょうか?
学長室 外間さん:私たちは、当時のゼミ生と一緒に、このプラットフォームの実現に向けた体制づくりのお手伝いをしています。また、その時のゼミ生はもうすぐ卒業してしまうのですが、学内で説明会を何度か実施して、理念に共感し、一緒にプラットフォームを立ち上げたいと、ゼミ生以外の学生も加わりました。
神田外語大学では、学生たちが自ら考え、調べ、行動に移すことを推奨しており、学長室としても、「学生全体がSDGsを知る・考える」機会の創出にのみこだわってきました。2018年から行った種まきが実を結びつつあると感じています。ここでの大学の役割は、学生主体の活動を積極的に支援し、彼らが自ら立てた目標を実現するためのお手伝いをすることだと考えています。
地域の企業・団体との連携”株式会社千葉ステーションビル”
LIVIKA(島崎):株式会社千葉ステーションビルは、SDGsの推進を考えているそうですね。その中で、火事などの緊急時に英語が通じない人がいることから、マニュアルを多言語化するなどの取り組みに協力されているとのことですが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
ボランティアセンター玉造さん:はい、本学はJR京葉線の駅や、駅ビル千葉ペリエを運営している株式会社千葉ステーションビルと連携協定を結んでおります。駅ビルの店舗にいる外国のスタッフのために、火災などの緊急時初動マニュアルを学生ボランティアが翻訳いたしました。
具体的には、学生たちの翻訳を教員が確認し千葉ステーションビルにお渡ししました。現在、そのマニュアルは、バックヤードに貼って、スタッフが緊急時に参照できるようにされているそうです。
この取り組みは小さいものですが、私たちの地域への貢献活動の一環として、大切なものだと考えています。昨年の11月には大学最寄りの海浜幕張駅前広場で開催された「海浜幕張わくわくフェスタ」では、千葉ステーションビルをはじめとして地域の企業・団体と一緒に学生たちが企画したSDGsブースを出展しました。こうした地域に求められる活動を継続してまいります。