
SDGs 大学プロジェクト × Tohoku Univ.
目次
東北大学の紹介
東北大学は、日本を代表する国立大学の一つで、東北地方の宮城県仙台市に位置しています。創立から100年以上の歴史を持ち、教育、研究、社会貢献など、多岐にわたる分野での実績を誇っています。
学部・大学院を問わず、東北大学は学生の自主性を重視し、グローバルな視野を持った人材を育成することを目指しています。そのため、語学教育に力を入れており、留学や海外研修などの機会も豊富に用意されています。
また、東北大学は科学技術分野においても、研究力が高く評価されています。特に、東日本大震災以降、自然災害の発生が多い東北地方での防災・減災に関する研究は世界的にも注目されています。
キャンパス内には、多彩な研究施設や図書館、スポーツ施設などが整備されており、学生たちは充実した学生生活を送ることができます。
東北大学は、学術的なレベルの高い教育と研究、そして社会課題の解決を追求する、多くの人々から尊敬される大学です。将来に向けた夢や目標を持つ高校生におすすめです。
SDGsに取り組まれたきっかけ
LIVIKA(島崎): 東北大学はグリーン未来社会を目指すミッションを掲げ、2021年にグリーン未来創造機構を設置したそうですが、その活動内容について教えてください。
佐々木 副学長:はい、本学ではグリーン未来社会を目指すため、レジリエントでサステイナブルな未来社会を構築することを目指しています。このため、2021年4月に災害復興新生研究機構を改組し、グリーン未来創造機構を設立、あらゆる社会課題に対して取り組んでいます。また、本学は総合大学として、様々な取り組みをしており、この機構は企業や自治体などと連携し、シンクタンク的な役割も持っています。
LIVIKA(島崎): なるほど、東北大学は2011年の東日本大震災の被災地にあるということですが、災害復興新生研究機構についても教えてください。
佐々木 副学長:はい、震災が発生した2011年の4月に立ち上げた災害復興新生研究機構では、復興に向けた研究活動を行ってきました。被災地に出向き、様々な取り組みをしています。また、この流れには、現在のSDGsに関連する取り組みも多くあります。注目すべきは、2015年に立ち上げた「社会にインパクトある研究」の取り組みです。
LIVIKA(島崎): 「社会にインパクトある研究」とはどのようなものでしょうか?
佐々木 副学長:これは、社会的な課題を解決するための研究を指します。東北大学は2015年にこの取り組みを始め、持続可能環境の実現、健康長寿社会の実現、安全安心の実現、世界から敬愛される国づくり、しなやかで心豊かな未来創造、生命と宇宙が拓く交感する未来へといったさまざまな研究を行っています。
これらの領域において、それぞれの分野の専門家が集まり、社会課題を解決するための研究を進めています。具体的には、再生可能エネルギーの開発、地球環境問題への取り組み、高齢者医療や介護の向上、食料安全保障、防災・減災、国際協力などの研究が行われています。また、研究成果の社会への還元を重視しており、実際に地域や企業との共同研究を進め、社会実装につなげることも大切な活動としています。これらを見て、気づくことはありますか?
LIVIKA(島崎): 文言が違うものの、SDGsの指標と限りなく近いですね。
佐々木 副学長:SDGsと本質に同じものであり、ある意味では先駆けともいえます。
LIVIKA(島崎): “社会にインパクトある研究”を立ち上げた2015年は社会に多くの変化が起こったようですね。どのような出来事がありましたか?
佐々木 副学長:はい、2015年は本当に面白い時期でした。私たちは、その年の7月に「社会にインパクトある研究」を開始しました。その後、同年9月にSDGsが発表され、12月にはCOP21のパリ協定が締結されました。また、防災の観点からは、仙台防災枠組が2015年3月に制定されました。これらは、国際社会における三大アジェンダとして位置づけられています。
LIVIKA(島崎): なるほど、SDGsやCOP21のパリ協定、そして仙台防災枠組が重要な役割を果たしたのですね。それらの意義は何でしょうか?
佐々木 副学長:SDGsは、持続可能な開発のための国際的な目標であり、2030年までに貧困や飢餓、気候変動などの課題を解決するためのアクションプランを提供しています。COP21のパリ協定は、世界中の国々が気候変動に取り組むための枠組みを定め、温室効果ガスの排出量を減らすことを目的としています。そして、仙台防災枠組は、災害に強い社会の実現を目指し、国や地域、そして国際社会が協力して、災害の予防、被害軽減、復旧・復興に取り組むための枠組みを提供しています。
これらの出来事は、世界中の人々が直面している課題に対する共通の取り組みであり、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となる出来事でした。
これらの背景から、2011年の4月に立ち上げた災害復興新生研究機構も、10年が経過したタイミングで見直しを行い、中身もよりグリーン未来を創るようにシフトし、グリーン未来創造機構へと改組したわけです。
グリーン未来創造機構設立の背景と目指す世界
LIVIKA(島崎): グリーン未来創造機構を作るにあたって、どのような取り組みが行われたのでしょうか?
佐々木 副学長:はい、私たちはこの機構を作る際に、まず大学内の教員に対して2週間ほど調査を行いました。その中で、グリーンテクノロジーに関しては東北大学が伝統的に強い半導体など、リカバリーアンドレジリエンス、ソーシャルイノベーションアンドインクルージョンといった分野においても様々な取り組みが行われていることがわかりました。その結果、合計632件ほどの案件が集まりました。
LIVIKA(島崎): 632件ものプロジェクトがあるとは驚きですね。具体的にどのようなものなのでしょうか?
佐々木 副学長:それぞれの案件には、SDGsに関する社会的な課題の教育、テクノロジーを用いた課題解決の取り組みなど、様々な分野が含まれています。例えば、リカバリーアンドレジリエンスには、福島原発の廃炉や減災教育が含まれ、グリーンテクノロジーにはカーボンニュートラルやプラスチックの循環などが含まれます。また、大学として今後取り組むべきグリーン社会の目標として、Green Goals Initiativeを宣言しています。
LIVIKA(島崎): なるほど、具体的な取り組みがたくさんあるのですね。この機構の目的について教えてください。
佐々木 副学長:この機構の目的は、大学として今後取り組むべきグリーン社会の見本を作ることです。具体的には、SDGsの達成に資する人材育成や社会との連携などの教育面、そしてゼロカーボンシティの実現などにチャレンジしています。全ての取り組みがぴったりと結びついており、非常に意義深い活動だと思います。
SDGs取り組み① -キャンパスのゼロカーボン化(ZEB化)-
LIVIKA(島崎): グリーン社会に向けた取り組みとして、大学キャンパスのゼロカーボン化を謳っていると聞きました。具体的にどのような取り組みが進められているのでしょうか?
佐々木 副学長:はい、そうですね。東北大学は、2040年にカーボンニュートラルなキャンパスを目指しています。日本や世界の目標が2050年になっている中、東北大学は2040年を目指しています。具体的には、建物のZEB化を進めています。
LIVIKA(島崎): 建物のZEB化とは何でしょうか?
佐々木 副学長:ZEBとは、ゼロ・エネルギー・ビルディングの略で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物を意味します。具体的には、消費するエネルギーを減らすこと(省エネ)とエネルギーを創ること(創エネ:太陽光発電)を通じて、建物のエネルギー効率を高め、必要なエネルギーを自給することができるようになります。
LIVIKA(島崎): それは素晴らしい取り組みですね。このような取り組みを進めることによって、どのような効果が期待できるのでしょうか?
佐々木 副学長:これらの取り組みによって、CO2の排出量を削減することができます。また、自給自足のエネルギー供給とエネルギーの効率的な利用によって、環境への負荷を低減することができます。
LIVIKA(島崎): なるほど、そのようなメリットがあるのですね。
SDGs取り組み② -経済産業省GI基金事業への参画-
LIVIKA(島崎): 経済産業省の方で、グリーンイノベーション基金事業をされていますね。この基金はどのようなものでしょうか?
佐々木 副学長:はい、グリーンイノベーション基金は、グリーン社会を目指してエネルギー問題や材料問題など様々な研究開発から社会実装までの取り組みを支援するために設立された基金事業です。
LIVIKA(島崎): なるほど、それはすごいですね。この基金が具体的に支援している研究開発には、どのようなものがありますか?
佐々木 副学長:この基金が支援する研究開発には、エネルギー問題を解決するための研究や、新しい材料の開発などが含まれます。また、社会実装までをサポートするため、製品の開発や試作品の作成にも力を入れています。
LIVIKA(島崎): なるほど、それは素晴らしいことですね。東北大学とも関係があると伺いましたが、具体的にはどのような関係があるのでしょうか?
佐々木 副学長:はい、東北大学では、燃料アンモニアプロジェクトなどさまざまな領域において企業に協力し、研究面で関わっています。
SDGs取り組み③ -グリーン未来創造機構プロジェクト-
ネイチャーポジティブ
LIVIKA(島崎): ネイチャー・ポジティブというプロジェクトについて教えてください。
佐々木 副学長:このプロジェクトは、生物や自然が失われていく状況にある中で、自然をプラスに増やしていく取り組みです。これに関わる私たちの取り組みとして、は海の水から環境DNAを解析することで、その域に生息する生物の種類や生物量を把握するプロジェクトがあります。現在、私たちはこの手法を用いて、沖縄までの日本全国の沿岸の生物マッピングを行っています。また同様の手法で、陸地の水生生物の指標も作れるできるでしょう。世界的にも注目を集めている取り組みの1つです。
LIVIKA(島崎): このプロジェクトのネイチャー・ポジティブにおける意味はどのようなものでしょうか?
佐々木 副学長:はい。現在、ネイチャー・ポジティブに関する取り組みを企業の評価に取り入れようとする自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が、イギリスで立ち上がっています。東北大学の取り組みは、数値化が難しい生物多様性の指標を作ることとなり、TNFD活動の推進、ネイチャー・ポジティブに貢献します。このように、TNFDは、カーボンニュートラルに関する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)とともに、企業が環境に対してどのような貢献をしているかを公開することで、持続可能な社会の実現を目指しています。
LIVIKA(島崎): そのような取り組みが今後どのような役割を果たすのでしょうか?
佐々木 副学長:将来的には、自然環境の保護に対して企業がどの程度貢献しているかを示す指標として、TNFDなどの財務情報開示タスクフォースが重要な役割を果たすことが期待されています。ネイチャー・ポジティブな取り組みも、その一環として、数年以内には世界的に注目を集める指標として確立されることが予想されます。私たちが行っている日本全国の生物マッピングは、そのような指標の1つとして、持続可能な社会を作っていく上で重要な役割を果たすことができるでしょう。
伊沢拓司 特任准教授(客員)による「SDGs入門」特別講義
LIVIKA(島崎): 先日、SDGsに関連する全学教育科目について聞いたのですが、QuizKnock CEOの伊沢拓司氏が特任准教授(客員)に就任し、「SDGs入門」を担当しているそうですね。具体的にはどのような取り組みが進んでいるのでしょうか?
佐々木 副学長:はい、QuizKnock CEOの伊沢拓司氏は、SDGsに強い関心を持っており、全学教育科目にSDGsカリキュラムが導入されることを高く評価しています。そこで、グリーン未来創造機構の特任准教授(客員)として招聘し、「SDGs入門」を担当してもらうことになりました。
「SDGs入門」は、SDGsに関する基本的な知識や理解を深めるための講義であり、SDGsの目標や取り組み、世界的な課題などを学ぶことができます。伊沢氏は、自身が経営する企業でもSDGsに取り組んでおり、その経験や知見を生かして、より実践的な内容も盛り込んでいます。これにより、学生たちは、SDGsについて深く理解することができ、将来的にはSDGsを実現するための取り組みに貢献することができるようになると期待しています。
▼詳しくはこちら 【動画公開】伊沢拓司特任准教授(客員)によるSDGs入門特別講義の動画を公開しました
東北大学総長 大野英男先生の研究であるスピントロニクス
佐々木 副学長:半導体において特に注目している技術は、スピントロニクスと呼ばれるものです。この技術では、本学の総長が世界の第一人者です。
スピントロニクスを用いた半導体を携帯電話に置き換えた場合、ほとんど電力を使わずに動作することができます。また、タッチしたときに感じる熱を利用して発電することもできます。すでに実現されつつある技術なのです。
この技術によって、将来的には電力を大幅に削減し、環境にも負荷をかけないエレクトロニクスが実現されることが期待されています。また、この技術の研究は非常に重要です
SDGs施策と学生とのつながりについて
LIVIKA(島崎):SDGs施策と学生とのつながりについてお話を伺えますか?
佐々木副学長:はい、震災後の復興は、私たちにとって使命でした。多くの大学では、社会課題に対して”自分ごと”になりにくいと言われていますが、私たちは身をもって経験したため、誰よりも”自分ごと”でした。地元が全て被災した状況で、私たちは様々な取り組みを始めました。そのため、教職員や学生たちの意識も変わってきたのです。
LIVIKA(島崎):そこで、教職員や学生たちの意識はSDGsの本質に迫ったということでしょうか?
佐々木副学長:私たちは、震災後の復興活動を通じて、社会課題を解決することが重要だと感じていました。しかし、当初はSDGsという言葉で捉えていなかったかもしれません。それでも、復興活動を通じて、SDGsに通じる考え方を持っていたと思います。
LIVIKA(島崎):具体的にはどのような取り組みが行われたのでしょうか?
佐々木副学長:震災後は、全てが瓦礫の状態でした。津波被害を受けた地域では、塩で汚れていました。福島では、高い放射線量とガレキにまみれていました。そこで防災、医療、エネルギー、廃炉などの8つの大きなプロジェクトをはじめ、農地の除塩など教員の自発的な100件以上のプロジェクト(復興アクション100+)が立ち上がり、活動を続けてきました。結果として、様々な形で社会に繋がることができました。その延長線上に伊沢拓司氏によるSDGs教育、学生からの企画コンペによるクラウドファンディング(ともにプロジェクト:ともプロ)などの活動があります。私たちの大学で活動することは、SDGsを実践することに等しいと思います。
今後のSDGsの展開
トヨタ自動車株式会社との連携プロジェクト
新たな未来のまちづくり
LIVIKA(島崎):今後の東北大学のSDGs活動について、どのような展開が考えられていますか?
佐々木副学長:一つとして、トヨタ自動車株式会社と進めている連携プロジェクトがあります。具体的には、水素技術(新エネルギー)の活用や脱炭素型園芸(農業分野)をはじめとしたプロジェクトに取り組んでいます。これらの取り組みは、SDGsに貢献すると同時に、地域課題の解決にも繋がります。「グリーン未来創造機構」を通して、次の10年、あるいは50年先の未来を見据え、安心・安全で持続可能な未来社会の実現に貢献ができればと考えております。