
SDGs 大学プロジェクト × Nagoya City Univ.
目次
名古屋市立大学の紹介

7学部・7研究科を擁する総合大学として、社会ニーズに対応する教育・研究に取り組む名古屋市立大学。
名古屋市教育委員会をはじめ、さまざまな教育機関と連携して社会課題と向きあっていることも特徴である。
そもそもSDGsを始められたきっかけとは?
本学(名古屋市立大学)のSDGsセンターは、2021年5月1日に設立されました。
そこから本学のSDGs活動がスタートした…というわけではなく、それ以前より活動自体積極的に行っておりました。
例えば人文社会学部では、豊かで人間らしい生き方のための持続可能な地域社会をつくっていくためには、教育が必要であるととらえ、 2008年 には今で言う「ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)」を学部の中心に据え、持続可能な社会の創り手を育む教育に多くの教員が着手してきました。また、 2009年 には大学院システム自然科学研究科(現在の理学研究科の前身)に「生物多様性研究センター」を設立し、生物多様性に関して多彩な研究を進めるとともに、啓発活動を積極的に行ってきました。
これらは、 2015年 に国連でSDGsが採択される前から取り組んできた活動となります。大学の使命は「知」の集積であり、「人財」を育むことでもあり、 2015年 にSDGsが国連で採択されて、 2030年 を達成期限として定められたことを契機に、本学でもSDGsを通した人づくりやまちづくりに貢献しようという機運が高まってきました。
とはいえ、学内ではSDGsへの関心が必ずしも高くなく、一部の教職員や学生の限られた活動であったこともあり、まずは学内に向けて、そして学外へと広くその活動を紹介し、大学や研究機関、医療機関、自治体やNPO・NGO法人など多様な人々や機関と連携していくことを目的に、SDGsセンターを設立しました。
やはり大学としてはSDGsの認知度は高かったということでしょうか?

これは学部による温度差があったと思います。さきほど申し上げた人文社会学部は学部をあげてSDGsに取り組んでいることもあり、非常に認知度も高くまた活動も盛んに行われております。経済学部でも同じような状況だと思います。
しかしながら、他の多くの大学でも同じかもしれませんが、医療系の学部はSDGsへの関心があまり高くないと感じております。本学には医学部・薬学部・看護学部という3つの医療系学部がありますが、おそらく「自分たちは社会に貢献している。多くの方々のために働いている。」という意識がもともと高いため、敢えてSDGsに紐づけて考えていなかったのではないかと考えております。たとえば、“子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現”を目指し、2010年から環境省は「エコチル調査」という大規模な国家プロジェクトを開始していますが、本学はその中部地区の拠点となって精力的に活動しています。まさに、SDGs活動といえますが、これまではあまりSDGsと結び付けて考えてこられなかったものと思います。
▼詳しくはこちら エコチル調査 愛知ユニットセンター
イギリスのTimes Higher Education(THE)が2019年から大学の社会貢献(SDGs)の取り組みを評価するTHEインパクトランキングの公表をはじめました。2022年4月に発表されたTHEインパクトランキング2022において、本学は17ある目標のうち、SDG3:「すべての人に健康と福祉を」で全国1位(世界21位)となりました。
多くの学生や教職員はSDGsを意識して活動していたわけではないと思いますが、様々な活動のエビデンスを集めて申請した結果、知らず知らずのうちに多くの学生や教職員がSDGsに貢献していることが明らかとなりました。SDG3を知っていますか?何か活動していますか?と訊かれたとしても、よく知らない、たぶん何もしてない、と多くの方が回答されるのではないかと思います。
▼詳しくはこちら THEインパクトランキング2022のSDG3(健康と福祉部門)で全国1位!
また、名古屋市立病院の本学医学部附属病院化が進んでおり、2021年4月には2病院、2023年4月にはさらに2病院が本学医学部附属病院となる予定です。
市民の多岐にわたる医療ニーズに応じた、より的確かつ最高水準の医療を継続的に提供することとなり、社会的貢献が実現できるものと思います。
学生が持続的に取り組むためには、モチベーション向上は大切かと思います。評価されるような仕組みはありますか?

SDGsセンター事務局が大学HP上で「SDGs活動紹介」という情報発信をしております。また、定期的に「SDGs News Letter」も作成しており、学内だけではなく、学外の人でも目にすることができます。その影響か、小学校から中学、高校に至るまで、SDGsについての講義やワークショップの依頼の問い合わせもあり、必要とされることで得られるモチベーションもあると考えています。
また、「SDGs IDEA FORUM」という名古屋市の地域課題を大学生のアイデアで解決に導くコンテストを名古屋市と共催しています。
4つの地域課題(2022年度は、ジェンダー平等、地域コミュニティ、観光、脱炭素の4課題)が提示され、多様なアイデアを募集しており、本学以外にも、様々な大学の優秀な学生が参加しているため、熱がこもったプレゼンを聞く機会が多いですね。ここで受賞して得た賞金を利用して、アイデアを社会実装していくことがモチベーションになっている学生もいるのではないでしょうか。
このほかにも、SDGsをキーワードに企業と連携し、学生に働きかける活動も行っています。最近では、花王グループカスタマーマーケティング株式会社様とコラボレーションして、本学の学生向けに「就活生応援 身だしなみセミナー」を開催したりもしました。
SDGsを取り入れたことで変化はありましたか?
わたしは、センター長として関わるようになり、だいぶ変わりました。
大学生や大学院生の多くもSDGsを聞いたことはあるものの、まだまだ何をしたらいいかわからない世代ではないでしょうか。あるいは、内容的にはSDGsの活動をしているものの、その行動がSDGsに結びついていることを知らない層とも言えます。ただ、本学で様々な活動を目や耳にすることで興味を持つ学生、教職員は増えていると思いますし、就職活動を機にSDGsに興味を持つ学生もいるようです。
そもそも、SDGsを知ること、そしてSDGsの活動だから行うことが本質ではなく、ローカルな課題、そしてグローバルな課題を自分ごと化し課題解決に取り組めることこそが本質だと捉えています。SDGsという言葉ではなく、理念を教える役割を今後も大学が担っていければと考えております。