林秀紀 准教授から好奇心の森への招待:子どもの好木心『発見・発掘』プロジェクト

林秀紀 准教授の紹介

林准教授は、主にプロダクトデザインを担当し、豊かな経験と専門知識を持ち、若い学生にデザインの魅力を伝えています。デザインは時代とともに変化し広がっており、製品の美的側面だけでなく、現代の社会問題の解決や情報システム、サービスの改善、人にやさしい街づくりなど、多岐にわたる分野でデザインの力を活用しています。

林准教授は数々の論文や著書を発表しており、特に子どもの発達を促す木製玩具のデザインについての研究が評価されています。教育効果のある木育玩具の開発や、中身を大切に守るブックカバーのデザインなど、実用性と教育的要素を結びつけたデザインが多く、国内外で高く評価されています。

情熱と才能は数々の受賞歴にも証明されています。林准教授の指導のもとで、デザインへの情熱と創造性を持った学生たちが育ち、未来のデザイナーや問題解決者が輩出されることが期待されています。

子どもの好木心『発見・発掘』プロジェクトとは

東京都にある檜原村を舞台に展開される「子どもの好木心『発見・発掘』プロジェクト」は、プロダクトデザインを学ぶ学生と林業会社が協力して、市場に流通しない素材を活かした新しい木のおもちゃを開発する取り組みです。

このプロジェクトは、子どもたちの「ワクワク」を引き起こす木の素材を活用したおもちゃの開発を通じて地域産業の活性化に貢献し、子どもたちの心を「好木心」と呼ばれる愛着や興味を持つ心へと成長させ、また森と人とのつながりを広げることを目指しています。

このプロジェクトの目標は以下の3つです。

  1. 子どもたちの「ワクワク」を引き起こす木の素材を活かしたおもちゃを開発し、地域産業の活性化に貢献すること。
  2. 開発されたおもちゃを通じて、子どもたちの好奇心が「好木心」と呼ばれる愛着や興味を持つ心へと成長すること。
  3. おもちゃを通じて子どもたちの「好き」が親や先生など周囲の大人に伝わり、森と人とのつながりが広がっていくこと。

プロジェクトのきっかけ

林業会社の株式会社東京チェンソーズから木のおもちゃの研究開発から商品化までの協力依頼があり、林秀紀准教授によって着想されたプロジェクトは、企業と地域(「トイビレッジ構想」)と大学の連携(産官学連携)により実現し、社会貢献への展望を持ちながら進行しています。

このプロジェクトは、木育の一環として子どもたちに木のおもちゃを提供し、彼らにその良さを理解してもらうことを初めの目標としています。子どもたちが楽しんで遊ぶ姿を通じて、保護者にもその良さが地域社会へ広がることを期待し、また木育の情報発信も視野に入れています。個人としてではなく大学として連携を行うことで、単発のプロジェクトになるのではなく、継続して人材を育むことができるという狙いもありました。

子どもたちの好奇心を刺激するためには

木のおもちゃで遊ぶ、「おもちゃの広場」を地域で開催したり、幼稚園や保育園で、木のおもちゃのワークショップを行っています。その中で、子どもたちが天然の木に直接触れる機会を提供しています。

ワークショップでは、子どもたちが木材の成長過程や木の特性を理解できるような工夫をし、自然と親しみながら学ぶことができるようにしています。また、この取り組みは教育施設に直接提供することを重視しています。

子どもたちとの密接なコミュニケーションを通じて、天然の木材から作られるおもちゃの価値を広めていくことが目標です。このような実体験に基づいた学びは、インターネットだけでは得られないものであり、子どもたちの五感を刺激し、記憶に残る学びに繋がると考えています。

プロジェクトに取り組む学生の変化

プロジェクトの初期段階は、森林調査や子どもとの遊び体験を行います。その中で、これまで木や子どもにあまり関心のなかった学生の意識は少しづつ変化していきます。

間伐体験で、切りたての木の香りや荒々しい表情、濡れた表面を手で触った時の感触を実感し、年輪の様子から成長過程を想像することができます。こうした、動画では得ることのできないリアルな五感の体験や天然の木材の価値を、どのように子どもたちに伝えられるのかを考え、木のおもちゃをデザインします。

プロジェクトの目標は、木のおもちゃの遊びを通して、幼少期から自然を大切にする心を育てていくことです。それに加え、活動の中で、学生の意識の変化を促す教育効果も考えています。

産官学のそれぞれの役割とは

学術界と産業界が連携するこのプロジェクトでは、大学の立場から教員と学生がそれぞれの強みを生かし、プロジェクトを共同で進めています。大学の教員は豊富な知見を持ち、学生たちもプロジェクトに参加しながら学びながら開発を進めることができます。

一方で、産業界の林業会社は豊富な素材と製剤加工の経験を持っており、効率的にプロダクトを作成することができます。相互の強みを活かすことで、より効果的な協力体制が構築され、地域の発展と社会貢献が実現しています。

子どもたちの好奇心を後押しする教育と今後の展望

子どもたちの好奇心を後押しするためには、教育や社会の変革が必要です。既存の教育プログラムを超えて、子どもたちが自主的に関わり、自ら学び、発見することを重要視することが大切です。子どもたちが自分で興味を持ち、アクティブに学ぶ環境を整えることで、好奇心を引き出すことができます。

また、今回のプロジェクトが檜原村に限らず、各地域に展開できる可能性を秘めています。地方には豊富な森林資源があり、子どもたちが好奇心を発揮する理想的な環境が整っていることがあります。しかし、地域としてその資源を活かす教育の仕組みが不足している場合もあります。そこで、今回のプロジェクトをきっかけにして、地域ごとに子どもの好奇心を引き出す仕組みを創り出すことが大切です。

地域が子どもたちの好奇心をサポートする教育プログラムを提供することで、子どもたちが自然と触れ合い、新たな発見や学びを楽しむことができるような環境が築かれます。このような取り組みが地域全体で広がれば、子どもたちの心に「好木心」と呼ばれる愛着や興味が育まれ、地域産業の活性化にもつながるでしょう。

子どもたちの好奇心を大切にし、地域と学術界が協力して展望を広げることで、より豊かな未来へ繋げられるようこれからも努めてまいります。

▼取材にご協力いただいた林秀紀 准教授のHPはこちら
林 秀紀 デザイン研究室 / Hideki Hayashi Design Lab.