SDGs 大学プロジェクト × Osaka Jogakuin Univ.

大阪女学院大学の紹介

大阪女学院大学は1884年設立のウヰルミナ女学校が前身で、2004年に開設した小さな大学です。キリスト教教育、人権教育、英語教育を3本柱として、キリスト教の精神を基盤におき、独立した人格の育成と尊重を教育の中心としています。

国際・英語学部では、世界の中のわたしとして国際社会・現代社会の課題を英語「で」学び、授業では自分の考えを常に求められます。多様な学生が共に学び、ダイバーシティに富みインクルージョンを重んじる環境で、英語運用力・コミュニケーション能力を培います。

「Women’s Global Leadership専攻」「国際・英語専攻」に加え、2023年度には在学中に長期韓国留学が可能となる「韓国語専攻」を新設しました。韓国語で国際社会・現代社会の課題を学びます。

「平和を創り出す人に」なってほしいと願い、国際社会に貢献できるプロフェッショナルな女性を育てます。

おにぎりアクションOJUの概要

–おにぎりアクションとはどういった取り組みでしょうか?

おにぎりアクション学生有志:毎年10月の「世界食料デー」月間にあわせて、世界の食料問題について考え行動するグローバルキャンペーンです。Table for Two というNGOが主催しています。

具体的には、InstagramやTwitter(現X)などのSNSに#OnigiriAction をつけておにぎりの写真を投稿することによって、1投稿につき給食5食分に相当する寄付を協賛企業が提供し、実際に開発途上国に住む子どもたちに給食がプレゼントできるというキャンペーンです。

大阪女学院大学(OJU)では2年前からOJ actionという有志グループでこのキャンペーンに参加し、ZOOMおにぎりランチ会やおにぎりコンテスト、ポスター掲示、小学生を対象とした食料問題について考えるワークショップの開催、他大学への活動紹介などを通じ、学内外を問わずこの活動を盛り上げています。

▼大阪女学院大学 OJ ActionのInstagramはこちら
OJ Action

プロジェクトに参加した経緯

今回はおにぎりアクションOJUにてアドバイザーを務める前田美子教授(以下:前田教授)と、昨年のおにぎりアクションでリーダーを務めた入江瑠香さん(以下:入江さん)のお二人にお話を伺いました。

–おにぎりアクションOJU 2022に参加した経緯について教えてください。なぜこの取り組みに参加しようと思ったのですか?

入江さん:もともと、前田先生の国際開発に関する授業を受講しており、その中で先生からおにぎりアクションのことを教えていただきました。国際的な協力活動にも興味があり、この機会を逃す手はないと考え、参加を決意しました。

–先生はなぜおにぎりアクションの活動を取り入れようとされたのでしょうか?

前田教授:かつて、青年海外協力隊として共に活動した仲間が、おにぎりアクションを支援している企業に勤務しており、大学生とのコラボを相談されたことがきっかけです。この相談を受けて、学生たちに声をかけました。現在で3回目の参加となりますが、毎年学生の方々が積極的に参加してくれています。

–入江さんは前田教授の声掛けに応じて参加を決められたと思いますが、SDGsに関心を持っていたのでしょうか?

入江さん:授業を受けるまでは全く知らなかったのですが、この活動に誘っていただいたことでより関心を持つようになりました。SDGsについての情報は以前から掲示などで目にすることはありましたが、その重要性を理解し意識的に捉えるようになったのは、おにぎりアクションに参加してからになります。

実際の活動について

この章では、実際の活動での「苦労したこと」や「工夫したこと」をお話いただきました。

苦労した点と成長した点

–実際の活動を通して難しかったことや苦労したことはありましたか?

入江さん:実際には、いくつかの困難がありました。まず、活動期間(9月〜11月)が短期間だからこその忙しさであったり、企画に制約がなかったため、どうすればこの活動に興味を持ってもらえるかを自分たちで白紙の状態から考え、実行する必要がありました。さらに、コロナの影響もあり、限られた中で興味を持ってもらえる企画を作ることにも苦戦しました。

私はリーダーとして、おにぎりアクションの活動に参加させていただきましたが、企画を練る際にメンバーが揃わないと進めることができなかったため、メンバーのスケジュール調整なども難しかったと感じています。
一方で、言いにくいことを伝えるのもリーダーの役割だと思っていたので、メンバーにしっかり伝えられる関係性を作る為に1人1人にコミュニケーションを取り、繋がりを作っていく部分は活動を通じて意識的に行っていたことです。

また、勇気を出してリーダーに立候補したことで自分に自信を持てたことは非常に大きく、自分自身を成長させてくれるきっかけにもなった活動でした。

工夫したポイント

–おにぎりアクションのキャンペーンを短期間で盛り上げていくために工夫したことはありますか?

入江さん:提供できる給食の数を増やすために、キャンペーンへの投稿数を増やすことを重要視しました。多くの人にキャンペーンを知ってもらうため、おにぎりアクションと記載された紙を先生に持ってもらい、それを写真に収めて掲示板に載せるなど、広報に力を注ぎました。

やはり、自分の知っている先生が掲示されていたことで、気になった何人かの学生が興味を持ち、足を止めてポスターを見ていただけたことは大変嬉しいことでした。他にも、おにぎりアクションのメンバーがたこ焼きおにぎりなどユニークなおにぎりを自分で作り、他の学生に投票をしてもらうようなおにぎりコンテストという企画も行いました。

何か他の学生にも興味を引いて一緒に参加できるような企画になるように意識していたこともあり、周りの友達もこの企画に協力してくれて盛り上がったと思っています。

–活動の中で印象的だったことはありますか?

入江さん:TABLE FOR TWO Internationalさん主催の【Creative Onigiri Competition!】というアメリカの大学生とZoomで交流する企画が印象に残っています。

この企画は、アメリカに住んでいる学生さんとZoomを通して交流するという企画で、私たちが参加した回ではハロウィンに関するおにぎりを1時間の制限時間内に作るというテーマが設定されていました。私たちはゲゲゲの鬼太郎とろくろ首のモチーフをおにぎりで表現しました。海外の学生との英語を用いた交流は非常に楽しく、有意義な思い出となりました。また、私たちが制作したろくろ首のおにぎりが、日本代表に選ばれたことは非常に嬉しかったです。

活動を通してもたらされた変化

この章では、おにぎりアクションを通して変化があったと思う部分を学生、先生という異なる2つの視点からお二人それぞれにお話いただきました。

学生が感じた変化

–今年もおにぎりアクションに取り組む予定だと伺っていますが、この活動に参加して良かったと感じることはありますか?

入江さん:自分たちで一から企画し、実行するという経験は長い人生の中でも、特に大学生のうちでは簡単にできることではないですし、そこでの苦労や達成感を得られたのは非常に良い経験だと思っています。

大阪女学院大学では、家庭学習の必要な課題も多く、学業との両立からサークルに参加する時間も取ることができなかったのですが、この活動に参加することで、学業以外でも壁を乗り越えて成長し、自分に自信が持てるような経験を積むことができたので、本当に参加できて良かったです。

また、コロナの影響で友達を作りにくい環境だったのですが、このプログラムを通じて全く関わりのない学生とも友達になれたり、授業を履修していない先生とも交流できたことは、このプログラムの魅力の一つです。

–おにぎりアクションの経験を通して今後社会に出たときに目指したい社会人像はありますか?

入江さん:このプログラムでリーダーという役割を通して自信がついたので、社会に出たときも人の上に立つ役割を頑張って目指してみたいと思えるようになりました。

おにぎりアクションの期間内でも何をどう進めていけばいいのか私を頼って聞いてくれるメンバーもいて、私自身も聞いてくれて頼ってくれるのは嬉しかったので、責任感があり頼ってもらえるようなリーダーになりたいです。

–このおにぎりアクションは3年生が主体で、4年生はサポートとして活動されると伺っていますが、入江さんはどのように昨年度の経験を活かしていきたいですか?

入江さん:昨年は10人のメンバーで様々な企画を実施しましたが、今年はメンバーが少ないため、負担をかけずに確実に企画を進めたいと考えています。また、昨年はコロナ禍の影響で実際にみんなでおにぎりを作るということが実現できていないので、今年はそれも実現できたらとは思っています。

先生の目から見た学生の成長

–この活動を通して、先生から見た学生さんたちの成長した所を教えていただけますか?

前田教授:この活動を通じて、多くの学生の成長を感じることができました。特に、大人とコミュニケーションをとることを恐れなくなったことが挙げられます。学生たちは、大人と堂々と対話し、自信を持ってコミュニケーションをとることができるようになりました。

初めの頃は、企業にメールを送る際にも細かなチェックが必要でしたが、活動を通じて経験を積むうちに、非常に洗練されたメールのやり取りが可能になりました。大学生が社会人に向けてメールを送る機会は滅多にありませんので、この活動を通じてマナーが身についたと考えています。

また、教室内でもリーダーシップを発揮するようになりました。グループワークをしても積極的に話を切り出してまとめたり、グループだけでなく教室全体を牽引する存在にまで成長しました。彼女らは私にとってすごく頼もしい存在です。

SDGsを自分ごととして考えるためには

最後に前田教授と入江さんにSDGsへの意識についてそれぞれの想いを伺いました。

活動を通して変わったSDGsへの意識

–おにぎりアクションOJU 2022はさまざまなSDGsに紐づくプロジェクトであり、捉え方は多種多様だと思いますが、どの目標に貢献していると思われますか?

入江さん:SDGsの目標である中でも、主に「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」の3つに該当すると考えます。

–この活動に参加する前と後でSDGsへの意識が自分の中で変わったと思うことはありますか?

入江さん:SDGsは今非常にフォーカスされていて、さまざまな場所でポスターや掲示物などが見受けられますが、私も興味を持つ前は見過ごしていたことが多かったです。

おにぎりアクションに参加したことで、SDGsに対する意識が高まり、これらのテーマに自然に関心を持つようになりました。また、就職活動の際にも、企業がSDGsに向けた貢献を行っている事例などが目に入るようになりました。

–確かに最近では就職活動においてもSDGsへの取り組みを軸に企業を選ぶ学生さんも増えてきているとよく聞きます。そういった経験を通して視野が広がるのはすごくいいことですよね。

ちなみに前田教授はSDGsに対してどういう思いを持って取り組んでいらっしゃいますか?

前田教授:私はSDGsという文脈というよりも、国際協力活動にもポジティブな面とネガティブな面の両面があるという本質について知ってほしい気持ちがあります。「SDGsの達成 に取り組んでいます、国際協力をしました、すごいでしょう」で終わってほしくないと思っています。SDGsの抱える矛盾や問題、例えば、経済成長と環境保全の両立は本当に可能なのか、ということにも気付いてほしいです。

SDGsへの取り組みと情報を汲み取る力を養うために

–ではSDGsを自分ごととして考えていくために、主体的に取り組むには何が必要でしょうか?

前田教授:「国連総会で採択」「国際社会共通の目標」「政府が推進」というフレーズを掲げてSDGsを捉えると、SDGsは遠いところにあって自分ごととして考えることは、難しいと思います。しかし、SDGsの知識や理解がなくても気づかないうちにそれに貢献していることはあると思うのです。

たとえば、こまめに電気を消したりマイボトルを持参する学生さんもいますし、普段の買い物のなかでも、賢く物を節約し、無駄遣いをしない人もいます。コミュニティ活動に熱心な人もいます。SDGsに貢献していることに気付かないかもしれませんが、意識せずとも自然な形でそれを実践していることが多いのです。

SDGsという自分とかけ離れたところにあると思っていたものが、そういう普段の行動と結びついているのを意識したとき、より主体的に取り組む気持ちが起こってくると思います。

–今は指先ひとつで多くの情報に触れることができる環境にいますが、SDGsを含めて正しい情報を掴み取るにはどんな力が必要だと思われますか?

前田教授:情報収集においては、信頼性のある情報を適切に選び取ることが大切です。そのためには、良い面も悪い面も含め、たくさんの情報に積極的に接し考え抜く力が必要ではないでしょうか。

本学の授業では、国際協力について深く考える力を養っていくために、国際協力に取り組むことで逆に途上国の人たちに迷惑がかかる、開発援助が先進国の人たちの利益のためにだけ行われることがあるなど、国際協力のそういったネガティブな面にも目を向けています。

SDGsについても、良い面ばかり強調されていますが、SDGsの一つの目標に取り組むことが、他の目標の達成の妨げになることはないかなど、批判的に考えることを学生に勧めています。