SDGs 大学プロジェクト × Tokai Gakuin Univ.

東海学院大学の紹介

東海学院大学は、岐阜県各務原市に昭和38年に県下初の私立短期大学として開学した東海女子短期大学(現東海学院大学短期大学部)から、昭和56年に開学した東海女子大学が前身であります。平成19年の短期大学を含む大きな改組転換の際に男女共学して以来、2学部(人間関係学部、健康福祉学部)4学科(心理学科、子ども発達学科、管理栄養学科、総合福祉学科)の教育・研究力を備えた総合大学として発展を続けています。

本学は、建学の精神である、「国際的視野を備えた創造性と行動力豊かな教養人の育成」のもとに各学部・学科に明確なアドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーを定め、広く教養を学び社会人として不可欠な実践力や問題解決力を養うという大学での大切な学びは勿論のこと、専門知識と専門技術を習得するための質の高い教育に日々努めています。

また、平成26年からは、医療系スペシャリスト養成のための「メディカル・プログラム(Medical.Specialist.Educational.Program) 通称:エムセップ」を開始し、チーム医療を支える人材養成のための大学の存在を明確にしてきました。完成年度である平成29年以降は、国家資格(救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師、臨床工学技士、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士)等を取得した学生が様々な現場で活躍しています。

本学の教育の目的は、「自分の関心、興味、適性を把握し、将来像を持っている学生」のみを対象とするのではなく、「将来像をまだ描けていない学生」を育てることにもあります。本学で学んだ方々が、「確かな未来」を見つけ力強く羽ばたいていくときが、本学教員が最も喜びと達成感を得る瞬間です。いつの時代も人は無限の力と可能性を秘めていると考え、「自分の適性・能力を見つけることができる」、「そのための専門教育が受けられる」大学としてこれからも努力を積み重ねていきます。

食品ロスの削減に向けて生まれたプロジェクト

–規格外野菜Caféプロジェクトの概要を教えてください。

東海学院学生(小貫泰廣さん):2016年頃、私たちのプロジェクトは、管理栄養学科の4人の先輩が学内の野菜くずや食品残渣などを利用して堆肥作りを始めたことから始まりました。2017年からは、持続可能な社会の実現を目指し、本格的に食品ロス削減と堆肥作りに取り組み、1年の努力を経て堆肥が完成しました。

2018年からは、この堆肥を使って野菜を栽培し、2019年からはその収穫物を出荷もしています。出荷先は多岐にわたり、大手スーパーマーケットなどにも供給していますが、同時にこの頃から、傷がついたり形が不揃いで出荷できない規格外野菜を活用する方法について課題を抱えるようになりました。

学内では規格外野菜を使ったマルシェの開催や、こども食堂の設立など、いくつかの方法で規格外野菜を利用しようとしましたが、まだまだ消費できなかったため、2020年からは学内に営業許可を取得し、規格外野菜をスイーツに加工する菓子工房を開設しました。

2021年3月からは、キッチンカーで規格外野菜のスイーツを販売するなど、エシカルな消費の啓発活動も展開しています。そして、2023年4月からは、長らくの夢だったカフェを運営することで、規格外野菜の活用範囲がさらに広がりました。

私たちは専門的な学びを活かし、食事バランスガイドなどを取り入れた食育活動も展開しています。これにより、私たちの取り組みは、食品ロス削減から、食育の推進に向けた継続的な活動へと発展しています。

–規格外野菜Caféプロジェクトが念願のカフェを開始するまでには7年という長い道のりがありましたが、その間にどのような困難や課題に直面し、それらをどのように乗り越えてきたのでしょうか?

東海学院学生(松浦ことみさん):カフェを開業することが最終目標であるわけではありません。むしろ、規格外野菜の利用方法が徐々に広がって、私たちはカフェをスタートさせることになりました。

困難という点では、新型コロナのパンデミックの影響が大きかったと感じます。これまで行っていた対面での啓発活動やこども食堂の自粛を余儀なくされたこともありました。しかし、みんなで協力し、対面で行えない活動を動画配信などデジタル媒体を活用して食育を広めることができるようになりました。

このプロジェクトは最初から長期的なスケジュールに組み込まれていたわけではありませんでした。年ごとに話し合いを重ね、実現させたものです。そのため、後輩たちがどのようにこの活動を継承していくのか、非常に興味深く思っています。

運営する中での気づきを活動や連携に活かす

–管理栄養学科の学生有志が堆肥の作成から野菜の栽培、カフェの運営まで幅広く手がけていらっしゃいますが、それぞれの段階でどのような”学び”があったのでしょうか?

東海学院学生(田中佳奈さん):堆肥作りにおいて、食品ロスの削減に真摯に向き合うことで、私たちは「もったいない」という思いを胸に、活動を展開しています。捨てられる食品を堆肥として再利用することで、ゼロエミッションを目指しています。

野菜の栽培に関しては、農業生産の苦労や気候変動の影響に真摯に向き合うことができました。高温による収穫の困難さや異常気象によって作物が損なわれる様子を目の当たりにし、農家の方々から聞かせていただいた話から、高齢化による担い手不足という課題があることも知ることができました。

昨年から、農業生産における化学肥料の問題がプラネタリーバウンダリーを超えていることを意識し、有機農業への取り組みを開始しました。また、カフェの運営においても、食品衛生管理や食品表示に加え、お客様に美味しく召し上がっていただく方法についても、日々多くの学びがあります。

–食品ロスの削減や規格外野菜の利用に焦点を当てたプロジェクトとして、地域や行政機関との連携や支援はどのように役立ってきましたか?

東海学院学生(田中佳奈さん):地域や行政機関とはさまざまな支援や連携をさせてもらい、食品ロスの削減については、消費者庁の食品ロス削減推進サポーターの認定を得て活動をしています。認定講座においてはグローバルな視点や食品ロス削減について学ぶ機会をいただき大変勉強になりました。

また、JA全農岐阜様やJAぎふ様とは長らく連携を築き、日常的にご支援を賜っております。これまでの数々のご支援のおかげで、私たちはここまで活動を広げることができました。心より感謝申し上げます。

プラネタリーバウンダリー*とは:化学肥料の使用(窒素・リン・カリウム主成分)が食料生産に欠かせず、年間1億4500万トン使用されるが、川や海への流出により環境汚染が進んでいる。窒素とリンは運輸や産業、廃棄物、下水からも放出され、微生物の増殖により強力な温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)が排出され、気候変動問題とも関連している。

カフェにおける商品づくりの工夫

–カフェのメニュー内での規格外野菜の活用はどのようにアイデアを出し合い、試行錯誤されてきたのでしょうか?

東海学院学生(松浦ことみさん):東海学院大学の試験補助で出荷できない規格外の野菜を活用して料理を開発しております。私たちの専門は栄養学ですので、季節の野菜をどのように有効に活用するかという課題に対して、皆でアイディアを出し合って楽しみながら試作しています。

その中で、一番評価の高かった料理を商品化しております。製品開発の際に心掛けているのは、栄養価を適切に計算し、栄養バランスを調整することです。最終的には、健康的な料理として提供できるように心がけております。

–規格外野菜Caféで提供される岐阜県特有の野菜である飛騨・美濃伝統野菜を使用したアフタヌーンティーのアイディアなども素晴らしいと感じました。Z世代向けのアプローチについて何か工夫をされたことはありますか?

東海学院学生(石原千竹さん):Z世代に興味を引くアフタヌーンティーを導入することで、見た目に華やかな商品になるよう心掛け、同時に食品ロスに対する意識が低い若い世代にも訴求できるカフェを提供できるよう配慮いたしました。

管理栄養学科だからこそ実現できる発信と私たちができること

–このプロジェクトに参加して一番良かったと思った瞬間や経験があれば教えてください。

東海学院学生(小貫泰廣さん):皆で協力し、試行錯誤を重ねながら生み出した商品を、実際のキッチンカーなどでお客様に提供し、規格外の野菜から作られた商品でも、美味しく召し上がっていただくことができました。これは私たちの喜びであり、誇りです。

食品を提供するカフェとしての役割だけでなく、食品ロスの問題について知ってもらう機会を提供し、啓発活動を積極的に行っています。だからこそ、私たちの活動が理解されたとき、「やって良かった」と喜びを感じられる瞬間です。

–食品ロスの情報発信をする上で手応えを感じるような経験はありましたか?

東海学院学生(松浦ことみさん):大学内のカフェという立場から、多くの利用者が若い層であることを踏まえ、アフタヌーンティーという選択肢を提供することは、特に若い方々に喜ばれる工夫と考えております。

私自身も、これらの商品を試食し、楽しい時間を過ごした経験があり、その充実感を感じながら、お客様から「すごい」「美味しい」という賞賛の言葉をいただいた際には、非常に嬉しく感じました。

さらに、管理栄養士の専門知識を生かす機会として、地域の方々との交流を通じて、食品ロスについての意識向上に貢献できる点がすごく良かったです。

–規格外野菜Caféプロジェクトは授業ではなく、有志による企画だと伺っておりますが、その活動を続けるモチベーションの根源を教えていただけますでしょうか?

東海学院学生(石原千竹さん):一言で言えば「楽しいから」です。私は管理栄養学科で管理栄養について学んでいます。食べ物や食品ロスなど、皆で楽しく学び、それを活かすことができる場であることに魅力を感じています。

私たちのプロジェクトにはリーダーという役割がいませんが、皆で話し合って楽しみながら自分たちにできることをしています。規格外野菜Caféプロジェクトメンバーは他の棚田プロジェクトにも参加したり、複数のプロジェクトに関わることもでき、学年を超えて自由に活動できます。

また、規格外野菜という問題は大学に入学する前はあまり意識されることがありませんでした。しかし、日本では年間500万トン以上の食品ロスが発生しており、その中で食べ物が足りない子どもたちがいるという現実に気づきました。この対照的な問題に触れ、少しでも環境を改善できる責任を感じています。

皆さんも食品ロス削減に向けて、地球のために何ができるのかを考え、一歩ずつ始めてみてはいかがでしょうか。

▼取材にご協力いただいた規格外野菜CaféPJのnoteはこちら
規格外野菜Caféプロジェクトチーム