SDGs 大学プロジェクト × Atomi Univ.

跡見学園女子大学の紹介

跡見学園は、学祖・跡見花蹊の“日本の誇る伝統文化を踏まえ、豊かな教養と高い人格を持ち、自律し自立した女性を育てる”という建学の精神を受け継いでいます。
跡見学園女子大学では、時代に必要とされる人材を世に送り出す女子の教育機関として、下記4つに取り組んでいます。

①広い視野を身に付ける。
②多様な世界で通用する力を養う。
③プロとして活躍できるスキルを磨く。
④社会に貢献できる人材になる。

マネジメント学部 生活環境マネジメント学科の紹介

衣・食・住、そして環境分野にフォーカス
人々の快適な暮らしを支えるビジネスのプロを目指します

ファッションや食生活、インテリアなど身近な暮らしへの関心から出発し、女性の視点で環境や社会と共生するビジネスを学びます。
生活環境に関する専門科目と具体的な事例研究や演習を通じて、衣・食・住から金融・サービスまで幅広い企業で活躍できる専門知識と実践力を身につけます。

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跡見学園女子大学 『生活環境マネジメント学科』のページ。

そもそもSDGsを始められたきっかけとは?

2006年、マネジメント学部に生活環境マネジメント学科が開設されました。
その当初からSDGsに近しい教育方針をとっていたことが、いわゆる家政学系の学科と大きく異なる特徴です。SDGの発表は2015年ですので、約10年ほど先んじていたことになりますね。
食事や住まいなど身近な生活が学びのスタートになりますが、それは環境との関係を無視しては語れない(成り立たない)ということに まず気づいていただきます。いわゆる衣食住と環境は、一体にあるということを伝えます。さらに、環境へのやさしさと生活の豊かさを両立させるビジネスを考えることのできる学生を育て、社会に送り出す使命をもって教育をしています。
詳しくは、学科のコンセプトブック「暮らしゆたかに」-サスティナブル対談-をご覧ください。開設時のコンセプトとなる環境と両立する新しいものづくりの理念「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle)」が掲載されています。

※ 大量生産・大量消費社会での「ゆりかごから墓場(ゴミ箱)まで」という考え方を改め、工場で生産後、消費者が使い、また「ゆりかご(工場)」に戻し、資源としてほかのモノの生産に活かすことを大切にします。廃棄物を生みださない自然界の仕組みそのもの、まさに”サスティナブルなものづくり”を目指しています。

カリキュラムにおけるSDGsの活動紹介をお願いします

1年生と2年生は、関連する基礎的知識を習得します。さきほども触れましたが、”生活とは環境との関わりの中で成立”することに気づく機会を提供しています。身近な生活の中でどんな問題があり、それらをどういう風に解決したら良いのかを考えるにあたって、「環境」というキーワードが欠かせないのだと教えております。「衣生活と環境」、「食生活と環境」、「住生活と環境」など生活の様々な観点から、講義を展開しています。
3年生からはより専門的な学びになります。例えば、「環境政策」では、我が国の環境問題に対する政策が、どのような経緯で展開されるようになり、現状はどのようになっていて、それらにはどのような課題があるのかを幅広く学びます。
「地球環境と経営」では、持続可能な経営がなぜ必要とされているのか。また、持続可能な経営においては何が求められているのかについて学んだ上で、環境問題を解決する方法を企業の立場から考察しています。

生活環境マネジメント学科では、「消費者の立場」と「企業の立場」双方向からの学びが大切だと考えております。
例えば、最近注目されているマイクロプラスチック問題ですが、解決するためには企業だけが頑張るのではなく、消費者も関心を持ち行動すること(エコバッグの持参やゴミの適切な分別)が必要です。そのため、企業の立場での取り組みを学ぶ傍ら、消費者の行動にも目を向け、両軸から解決策を考えられるよう指導しています。本学科には、「消費者の立場」と「企業の立場」それぞれの専門家が在籍しているからこそ、可能となる取り組みです。
※ 海の生物がエサと間違えて「マイクロプラスチック」を食べてしまい、死に至らしめる問題。生態系を含めた海洋環境への影響が懸念されている。

ゼミが1年生から始まるのも本学の特徴です。
高校での学びとは異なり、大学での学びは社会人として働くことに直結しますので、主体性が必要となります。レポートが感想文のようになっていたり、分かりやすくプレゼンテーションができなかったりすると、自分の考えを相手に伝えることができず、就職活動でも社会人になった後も苦労します。とはいえ、高校での学びとの温度差に苦しむ学生も少なくないことから、大学での学びの目的と意義を伝えるとともに、春学期はレポートの書き方を、秋学期はプレゼンテーションの仕方を指導します。
この春学期のレポート課題の1つにSDGsについての考察が含まれます。身近な生活の中で興味のある分野を選び、その分野の中でSDGsに関連してどのような問題が発生しているのか。そして、その問題に対してどのように解決したらよいのかをまとめます。ファストファッションや空き家、食品ロス、海洋汚染と提出される課題は多岐にわたります。
※ 流行による過剰生産や大量廃棄による環境問題。
※ 高齢化社会になり、所有者が老人ホームや子供宅に住むことで、空き家が発生。
人口の減少だけではなく、建物の老朽化により倒壊や崩壊、ごみの不法投棄の可能性が高まるため、地域の魅力の低下につながる。

ほかにも、スマホ依存症に注目する学生もいます。調べるうちに都市鉱山ともいわれるように電気電子機器(テレビやスマートフォン)からレアメタルを回収し再利用しようという試みがあることを知り、スマートフォンそのものが”悪い”のではないという気づきを得たりしています。このようにSDGsに触れた知識や経験を2年次以降ではより実践的な課題解決力に結びつけます。企業や行政と共に取り組む場合もあります。教員の話を聞くだけではなく、学生自身が考え、行動していきます。

環境分野のゼミでは、段ボールを設計する企業や住宅メーカー、お酒の販売会社など、様々なSDGsに取り組まれている企業の方をお招きしています。会社の取り組みをご紹介の後、「すぐに取り組めるSDGsの活動は何だと思いますか?」や「SDGsと連動したパッケージのデザインをしてください」など課題を提示していただきます。そして学生が協力しながら調べ、討議を繰り返し、アイディアをまとめて、グループごとにプレゼンを行います。その際にも、企業の担当者にまたお越しいただき、コメントをいただきますが、「若い人でないとできない発想であり、刺激を受けた」「すぐ取り組むことができそうな提案もあった」など、アイディアの柔軟性や提案の具体性を高く評価していただいています。

また、ファッションのゼミでは、衣服の廃棄を減らす取り組みをしています。
タンスに眠っている服や、使われていないカーテンやタオルなどを学生が持ち寄り、テーマを決めて学生たちでドレスをつくります。最近ではディズニープリンセスをテーマにし、プリンセスたちが日頃着ている服の再現を行いました。完成度がとても高いと思います。私は非常に手先が不器用なので、本当にすごいなと思っていつも見ています。
コロナの前までは、オープンキャンパスでこうしたドレスを学生が着て、ファッションショーをしていました。2011年の東日本大震災では、学生たちが被災された方に何かお役に立てないか、お気持ちを癒すことはできないかと考えて、包帯でウェディングドレスを作ったところ、被災地の方にもかなりご好評をいただきました。
コロナ禍では、対面でのオープンキャンパス実施が難しいという背景もあり、ドレスをつくっている様子を自分たちで動画に収め、配信する活動を行いました。

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跡見のサスティナブルファッション宣言

私のゼミでは「福祉・住まい・まちづくり」をテーマにしています。2021年度には2年生の活動として、跡見学園女子大学と包括協定を結んでいる埼玉県三郷市と共同で、インクルーシブ公園の開発を行いました。障がいの有無に関わらず、全ての子どもたちが分け隔てなく共に遊べるというコンセプトの空間です。整備対象の公園を見学したり、遊具などの調査研究を行ったりして、様々なアイデアを三郷市に提案したところ、その一部が採用され、2023年3月22日に開園します。

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<子どものあした>みんな、一緒に遊ぼうよ! 三郷にインクルーシブ公園 本年度中の完成目指す

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<この人に聞きたいQ&A>誰もが交流できる場に 跡見学園女子大・赤松瑞枝 准教授

このように、単に知識を詰め込むのではなく、実社会で問題になっていることを解決するにはどのような方法が良いのかを模索するのが、本学科のゼミの大きな特徴です。各教員は、若者らしい柔軟な発想やアイデアを尊重し、自由で活発な議論を促しています。実現するための経済的な方法や想定する利用者の状況など、考えが至らないことも多いですが、それらは行政や企業とコラボレーションし、具体的な評価やご指導をいただくことで、知識が知恵になります。利益を生む仕事はひとつの側面だけではなく、様々な事情や背景を考慮して提案しなければならないと、早い段階で学生が実感でき、実践的な学びに繋がっているのです。

学生にとって、SDGsは馴染みのあるキーワードでしょうか?

最近では、中学・高校で既に学ぶため、全く馴染みがないという学生はほとんどいないですね。受験生も、ファストファッションや食品ロス、海洋汚染等を高校の授業で学び、解決しなければならない問題として意識して、もっと詳しく学びたい、と本学科の門戸を叩く傾向にあります。家政系と環境を両方学べるのはここしか無いからと言って受験してくださいます。
さらに、高校生の時とはとらえ方が変化した、という声も聞こえてきます。これまでは言葉としての認識にとどまっていたことが、学科の学びの中で実際の生活と結びつき、”こうしたらよくなるんじゃないか”という主体的な気づきへと変わっていきます。

今後の施策について

今までの取り組みの成果が徐々に見えるようになってきました。それは、何も言わずとも、3年・4年生のレポート課題のテーマにSDGsとの関りを書くようになったことからも窺がうことができます。今年は1年生からもその傾向にあるという報告がありますので、こうした流れをぜひ定着させたいと考えています。自分の中の問題意識や解決策を、自分の言葉で分かりやすく表現することができるようになることが学びの集大成ですから。

2023年の4月からは、環境分野(ライフサイクルアセスメント)の専門家を専任教員としてお招きすることになりました。これにより、衣・食・住・環境全てにおいて、ものをつくる側と使う側、2人体制での教育が可能となりました。「SDGsを学んで生活と社会・環境を変えていく」学科として、学生にも高校生にもしっかりと認知していただけるように、教育や情報発信に励んでいきたいと思います。

▼取材にご協力いただいた赤松 先生のゼミはこちら
跡見学園女子大学、赤松ゼミのHP