SDGs 大学プロジェクト × University of the Ryukyus.

琉球大学の紹介

琉球大学は、日本の沖縄県にある総合大学で、美しい自然に囲まれたキャンパスで学ぶことができます。学部や大学院にかかわらず、地域社会に貢献することを目指して教育や研究を行っています。沖縄の歴史や文化に関する研究や、亜熱帯の地理的特徴を生かした21世紀の社会課題に取り組む研究など、世界でも注目される成果を出しています。
また、留学生や外国人研究者を積極的に受け入れており、国際的な教育環境を提供しています。語学教育にも力を入れており、語学ラボや語学e-Learningなどのサポートが充実しています。さらに、図書館やスポーツ施設、食堂などの設備も充実しており、学生生活をサポートする様々な施設があります。
琉球大学は、沖縄の文化や歴史を学び、世界で通用する知識や技術を身につけることができる、とても魅力的な大学です。

瀬名波 出教授の研究について

-まず、CO2の削減に関する研究を行っていると伺っていましたが、どのような研究内容なのでしょうか?
瀬名波 教授:はい。私は海藻に二酸化炭素を固定化する技術、つまり最近よく耳にするブルーカーボン技術の開発を行っています。この技術は、火力発電所から排出される大量の二酸化炭素を回収し、海藻の養殖やバイオ燃料の生成に活用するものです。
-なるほど。地球温暖化の原因は二酸化炭素の排出量が大きく関わっているということですが、その二酸化炭素を回収するための具体的な方法を教えていただけますか?
瀬名波 教授:火力発電所から出る排ガスをボンベに詰め、そこに専門に開発された装置を使って海水を霧状に吹きかけます。二酸化炭素は水に溶けやすい性質を持っているため、海水中に二酸化炭素が溶けこみ、炭酸水のような海水ができあがります。この炭酸海水を海藻を養殖する水槽に入れることで、海藻が光合成を行うために二酸化炭素を消費し、二酸化炭素は海藻に吸収(固定化)されます。
-なるほど。その海藻はどのように利用されるのですか?
瀬名波 教授:海藻の成長スピードや品質を高めるために、濃度の高い二酸化炭素を与えます。これによって海藻の光合成が高まり収穫量が増えると、将来はバイオ燃料の材料にすることも可能になると考えられています。
-研究の概要について、ご説明いただきありがとうございます。どのような技術が開発されたのでしょうか?
瀬名波 教授:株式会社リテックフローは、二酸化炭素の再利用技術と画期的な海藻養殖技術を開発しました。海藻養殖に最適な流れを与えることで二酸化炭素や栄養分が吸収されやすくなり、従来の海藻養殖に比べて数倍も成長が促進されます。地元の海ブドウ屋さんとコラボし、養殖実験を行いました。その結果、養殖量は1.5倍、最終的な収益は2倍になる可能性があるということがわかりました。

産学官連携のソーシャルプロジェクト

障がい者就労支援施設

-この技術をビジネスに落とし込むことになった経緯を教えてください。
瀬名波 教授:今できている範囲で社会貢献する方法を考えた際、ビジネスに落とし込み、雇用を生むことを目指すことにしました。障がい者雇用に役立てることを考え、就労継続支援B型の方々と一緒に進めていくことに手を差し伸べることを決めました。
-なるほど、具体的にはどのような雇用形態を考えているのでしょうか?
瀬名波 教授:海ブドウプロジェクトでは、生産の半自動化に成功しており、重労働がありません。施設での海ブドウの植え付けや回収、パッキングなどの軽作業になります。全ての作業を就労継続支援B型の施設で賄うことは難しいかもしれませんが、いろいろな人たちを巻き込み、ビジネスモデルの構築を進めております。
-海ブドウの販売先について、どのように考えられていますか?
瀬名波 教授:海ブドウの販売先については、まだ具体的には決まっていません。ただ、収益を上げるためには、ある程度は横展開していかないといけ量をかさに作れないため、複数の販売先を確保する必要があります。そこで、NPO法人ちゅらゆいさんとコラボレーションしています。

NPO法人ちゅらゆい

-NPO法人ちゅらゆいさんとはどのような活動をされているのでしょうか?
瀬名波 教授:NPO法人ちゅらゆいさんは、ひきこもりや不登校、障がいなど生きづらさを抱えた若者を支援するプログラムで、居場所を提供し、トレーニングして社会に適用できるようにして、就職まで支援しています。昨年はソーシャルビジネスの発表会「島ラブ祭」(2022年4月)で”アシタネプロジェクト”という自立したソーシャルビジネスアイデアの取り組みが「島ぜんぶでうむさんラブ賞」を受賞されました。
-それは素晴らしい活動ですね。では、NPO法人ちゅらゆいさんの子たちが海ブドウプロジェクトにどのように関わっているのでしょうか?
瀬名波 教授:NPO法人ちゅらゆいさんの子たちが、海ブドウプロジェクトに参加して、収穫の手伝い、パッキングしたものを回収や、販売先への運搬など、様々な活動をすることを見込んでいます。彼らは精神的に弱い子たちですが、得意不得意を補いながら力を合わせて、このような活動を通じて社会参加を促しています。
-そうした子たちが海ブドウプロジェクトに参加することで、どのような効果があるのでしょうか?
瀬名波 教授:彼らが海ブドウプロジェクトに参加することで、自分の得意なことを分かち合い、お互いに支え合って成長することができます。また、仕事を通じて自信を持ち、社会との接点を持つことができます。これは、彼らが将来的に就職する際にも大きな助けとなるでしょう。

うむさんラボ

-このコンテストを開催した”うむさんラボ”についてお聞かせください。どのようなところなのでしょうか?
瀬名波 教授:うむさんラボは、比屋根隆社長がソーシャルビジネスを広げたいという思いから創設された組織です。比屋根さんはこれまでにも琉球フロッグスという取り組みを起こして、沖縄県内の意識が高い子どもたちを選抜し、AppleやGoogleといったシリコンバレーの企業に派遣し、ビジネスモデルを発表させることで人材育成をしています。最近では、子どもたちの人材育成だけでなく、育った人材がソーシャルビジネスをするための組織としてうむさんラボを立ち上げてその支援も行っています。
-うむさんラボが関わっているOKINAWA SDGs プロジェクトについても教えてください。
瀬名波 教授:OKINAWA SDGs プロジェクト(OSP)は、県内の企業約80社が参加しているプロジェクトです。うむさんラボはこのプロジェクトを管理しています。OSPには弱者を支援するようなプロジェクトに関心がある企業さんも多く参加してご存知でいらっしゃいます。その参加企業と連携して販路の開拓などの支援を行っています。
-また、琉球大学とも連携してビジネスモデルを構築しているとお聞きしましたが、具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?
瀬名波 教授:琉球大学との連携では、複数の企業や団体が協力してビジネスモデルを構築することを目的としています。当然、どこかが儲けようとすると破綻することになりますが、協力し合えば持続可能なビジネスモデルになると試算を行っており、ある程度成功の見通しがあるとして取り組みが進められています。

藻類ビジネスがもつ可能性

-藻類ビジネスについてお話いただいたわけですが、藻類ビジネスは、将来的にものすごく期待されているということですね。このビジネスが発展することで、多くの就労マイノリティの人たちが雇用されることができるということですか?
瀬名波 教授:はい、そうです。日本においても、藻類ビジネスは2030年までに約2兆円の基金があると言われ、2050年までに20兆円ほどの市場になると予想されています。そして、世界全体でも、2027年には4700億円ほどの市場があると言われています。沖縄県も含めて、日本は藻類ビジネスに適した地域であるため、今後、ますますビジネスが展開されていくことが予想されます。
-しかし、藻類ビジネスに携わるにはどのような人材が必要なのでしょうか?
瀬名波 教授:そこで、私たちが提案しているのが、就労マイノリティの人たちを雇用しながらビジネスを展開することです。先ほどお話したように、藻類ビジネスが発展すれば、多くの人材が必要になってきます。そこで、我々が構築したビジネスモデルを使って、就労マイノリティの人たちを雇用しながらビジネスを拡大することができます。障がいを持っている人たちも、十分に労働資本になる可能性があります。私たちは、そのような人たちに働いていただくことで、社会に貢献し、ビジネスを成功させることができると考えています。
-なるほど、非常に意義のある取り組みですね。藻類ビジネスは世界的にも注目を浴びているということでしょうか。
瀬名波 教授:私たちは、藻類ビジネスを中心に、就労マイノリティの人たちを雇用しながら、社会貢献をするビジネスモデルを構築していくことを目指しています。藻類ビジネスは、今後非常に期待される市場であり、日本でもカーボニュートラルに向けた取り組みが進んでいる中で、藻類ビジネスが注目されています。日本では2027年には海藻ビジネスが4700億円ほどの市場になるとが予想されており、またブルーカーボンに関しては2030年までには、藻類ビジネスに関する約2兆円の基金が作られ、2050年には世界全体で20兆円ほどの市場に成長すると予想されています。また、世界全体でも2027年には4700億円ほどの市場が予想されており、沖縄県を含めた日本は、藻類ビジネスに非常に適した土地柄であるため、大きな可能性を秘めていると言えます。しかし、このような市場が成長しても、必要なのは働く人たちです。障がい害のある方々は、従来は就労が難しかったとされてきましたが、私たちは彼らがビジネスに参加し、労働資本として活用されることができるよう、新しいビジネスモデルを構築しようとしています。この取り組みには、ボランティアだけでなく、企業の協力が欠かせません。近年は、人手不足が深刻化しているため、障がい害のある人たちが雇用されることで、ビジネスにとっても非常に有益な人材となる可能性があります。私たちは、このような取り組みを積極的に提案し、新しいビジネスモデルを構築することで、就労マイノリティの方々をサポートすることを目指しています。
-ここまでの話から、藻類ビジネスが将来的に非常に期待される市場になることがわかりましたね。そして、この市場が成長すれば、就労マイノリティの人たちにとっても雇用機会が生まれる可能性があるということですね。それでは、このビジネスを拡大するために、現在はどのような取り組みを進めているのでしょうか?
瀬名波 教授:はい、そうですね。今はまさにビジネスモデルを構築する段階にあって、多くの方々から声をかけていただきながら、横展開を広げていくための準備を進めています。

今後の展望について

-企業からの協力などはありますか?また、企業側の印象はどうでしょうか?
瀬名波 教授:まずはまだまだビジネス的に成り立つことを証明しないといけないため、企業からの協力はまだ限定的です。ただ、障がい害者施設などからは声をかけていただいており、そういった場所から手伝いを受けながら、ビジネスモデルを確立していくことが目標です。
-なるほど、それではまずは黒字化することが大切ということですね。今後、スーパーなどの小売店との連携も進めていく予定ですか?
瀬名波 教授:はい、実はすでに沖縄県の大手スーパーとには話を進めており、来年度の4・5・6月にはテスト販売的なことができればと考えています。そして、需要と供給のバランスが取れるように、少しずつ規模を拡大していく予定です。

学生とソーシャルビジネス

-まさに今、あのソーシャルグッド・ソーシャルビジネスとして地域に貢献されているとのことですが、学生側にはそのような事例を学べる機会があるのでしょうか?
瀬名波 教授:はい、私は琉球大学の産官学連携活動担当の学長補佐をしています。国自体がスタートアップ創出元年と位置づけ、大学にもビジネス創出の課題が課せられており、学生発ベンチャーも非常に盛り上がっています。多くの学生が、2〜3年で儲けることよりも、SDGsや社会課題解決に興味を持っています。
-そうなんですね。学生側にはどのような機会があるのでしょうか?
瀬名波 教授:学生さんには、SDGsや社会課題解決に関心を持ってもらうために、アントレプレナーシップ教育や、ソーシャルビジネスに関するプログラムを開催しています。また、学生発ベンチャー支援の仕組みを大学内で拡大する予定もあります。今後、より良い社会を作るためのSDGsや、社会課題解決に焦点を当てたプログラムも準備中です。この数年は琉球大学にとって変革の年になることでしょう。
-琉球大学として、変革するには強い力が必要だと思うのですが、どこからその力が生まれているのでしょうか。学長様もしくは行政からの影響でしょうか。また、地域の人材を支える教育機関として、どのように受け止められているのでしょうか。
瀬名波 教授:琉球大学では、1つの力だけでなく、さまざまな要素が組み合わさって変革が進んでいると考えられます。特に、SDGsに関する取り組みは、琉球大学が積極的に取り組んでいる分野であり、THEインパクトランキングでも取り上げられたように、全国の大学の中でもSDGsの評価が高いです。
南の離島に位置する特殊な地域にある大学として、地域や社会に貢献することは非常に重要であり、琉球大学SDGs推進室を設立設置して、「教育」、「研究・教育」、「社会貢献」、「業務・ガバナンス」及び「カーボンニュートラル推進」の軸でSDGsの達成に貢献する取組みを進めています。
また、国中がスタートアップエコシステムなどを含めた新たなビジネスを推進している中で、大学発ベンチャーを含めたビジネス創出も大切な観点です。この分野でも、大学内には教員や学生のベンチャー支援の仕組みが整備され、大学発ベンチャー創出助成事業も行っています。これらの取り組みは、4・5年前から行われており、着実に成果を上げてきたことが、今の状況につながっていると考えられます。
-この数年は琉球大学の活動から目が離せませんね。あらためて、ありがとうございました!