
SDGs 大学プロジェクト × Osaka Seikei Univ.
目次
大阪成蹊学園について

大阪成蹊学園は、1933年の創立から90年以上にわたる歴史と伝統を誇る総合学園です。幼稚園から大学まで多岐にわたる教育機関を展開し、約7,700名の在籍者と約640名の専任教職員が所属しています。創設以来、「桃李不言下自成蹊」の精神のもと、多角的な知識と実践力、そして「人間力」を備えた人材の育成に努めています。
学生が主体的に学ぶことを支援する「LCD教育プログラム」を導入し、アクティブラーニングを全面的に展開しています。特に、産官学連携プロジェクトや課題解決型学習(PBL)を積極的に取り入れ、実社会と直結した学びの場を提供。企業や地域社会と協力し、学生が現場での実践力を養える環境を整えています。
大阪成蹊大学では2023年4月にデータサイエンス学部や看護学部を新設し、文・理・芸にわたる幅広い分野で専門性と応用力を培う教育を推進し、次代を担う人材が多様なフィールドで活躍できるようサポートしています。
若者の視点で大阪産(もん)農産物の魅力を発信!伝統野菜とパンの新たな可能性
― 大阪市、株式会社ジェイコムウエスト、サラヤ株式会社と連携プロジェクトで開発された「大阪黒菜」を使用したオリジナルパンについて、開発のきっかけや経緯を教えてください。
石倉 久里朱さん(以下、石倉さん):きっかけは、大阪市が推進する「大阪市都市農業振興基本計画」に基づく「大阪市都市農業等振興事業」です。この事業の委託先であるジェイコムウエストさんから、「一緒に進めてみませんか?」とお声掛けをいただき、事業の一環としてオリジナルパンの共同開発に取り組むことになりました。
実は今回の取り組みは、当初、ゼミで案内されていた企業候補先にはなかった試みでした。私はもともと企業と連携して商品開発に取り組みたいという希望をもっていて、どのように進めるべきか悩んでいたところ、髙畑先生から「ジェイコムウエストさんから連携の話しが届いているけど、やってみない?」と直接お話をいただいたんです。
以前から地域の野菜を活用したプロジェクトには興味を持っていて、さらに大阪市との連携も含まれていると聞き、「ぜひやらせてください」とお返事させていただきました。
大阪成蹊大学HP 経営学部食ビジネスコースの学生が、なにわの伝統野菜に認証された大阪黒菜のリーフパンを共同開発!

髙畑 能久教授(以下、髙畑教授):石倉さんが取り組んだ今回の産官学連携は、従来の企画とは異なり、今年が初めての試みです。
大阪市が進める「大阪市都市農業等振興事業」は今年で4年目になりますが、ジェイコムウエストさんは令和4年度から携わっている企業です。大阪市から「今年は、若い世代にも大阪の農業の大切さや地元の農産物を知ってもらいたい」という要望を受け、本学に話を持ち掛けてくださったことから、今回の取り組みが実現しました。
商品開発は、連携先から助言を受けながら試行錯誤を重ねれば学生1人でも進めることはできると思います。実際に石倉さんも、家中が小麦粉だらけになるほど熱心に取り組んでくれました。
ただし、PR活動は1人では難しい部分があります。そこで、同じく「大阪産(もん)の良さを広めたい」という意欲を持つ髙畑ゼミに所属する梅原さんも途中から参加し、多方面でサポートしてくれています。この2人のチームは、非常に良い結果を生んでいると感じていますね。
石倉さん:例えばPR動画の撮影時には、映り方や話し方を何度も確認し合いました。写真撮影でも、画角や記載する内容について2人で時間をかけて話し合うことができ、本当に心強かったです。

― 当初から地域野菜の活用に興味をお持ちだったとのことですが、どのようなきっかけで「パン」というかたちにたどり着いたのでしょうか?
石倉さん:今回は、ジェイコムウエストさんから「私たちのノウハウを活用して、Z世代向けの新しいパンを一緒に開発しませんか?」というご提案をいただきました。わたしもこの提案に賛成し、サラヤさんの経験やアドバイスを取り入れながら、若い層に向けたパンを開発することに決まりました。
― 大阪という地域に根ざした活動にも、もともと興味をお持ちだったのでしょうか?
石倉さん:私自身は滋賀県高島市出身で、大阪市が地元ではありません。
ただ、髙畑ゼミに所属する先輩がローソンさんと連携し、大阪産の小松菜を使ったスイーツやおにぎりを開発した際のお話を聞いたことをきっかけに、大阪の農産物や地域に関連した食材を活用した商品開発に興味を持ちました。そこで、髙畑先生に私も挑戦してみたいという旨を相談していたんです。
髙畑先生:大阪黒菜は、大阪のなにわ伝統野菜の一つですが、今回のプロジェクトでは、伝統野菜全体のPRを行うことになりました。
大企業と連携する場合、その規模の大きさから、どうしても生産量が少ない食材の使用は難しいことが多いです。昨年は生産量が多い小松菜を使用しましたが、伝統野菜は大量発注が難しいことから、取り組むことができませんでした。
一方で、今回のように小規模で進められるプロジェクトでは、伝統野菜に焦点を当てることができました。この試みを実現できて、本当に良かったと感じています。
YouTube|大阪成蹊大学 公式チャンネル
【大阪成蹊大学】産官学連携~なにわの伝統野菜に認証された大阪黒菜のリーフパンを共同開発!~/経営学部 食ビジネスコース

「やってできないことはない」試行錯誤の道のり
― 今回開発された、『具ぎっしり!大阪黒菜のリーフパン』の特長やこだわりについて教えてください。
石倉さん:このパンの大きな特長の一つは、見た目を大阪黒菜をイメージして葉っぱの形にデザインした点です。また、野菜を丸ごと使うことは難しかったものの、具材をあえて大きめに切り、パンの中にごろごろと入れています。
使用している大阪黒菜は本来の味が濃く、風味も強いため、その美味しさを最大限に引き立てられるよう、シンプルな味付けにこだわっています。こうした工夫が、他のパンとは異なるポイントです。
― 商品完成までの苦労は、かなり大きかったのではないでしょうか?
石倉さん:商品開発には、確かにかなりの時間と労力を要しました。パンに使用する野菜の選定段階から私が担当させていただいたこともあって、20種類以上のアイデアを提案したんです。
その中から現在の商品にたどり着いたのですが、味だけでなく見た目の形にもこだわり、例えばハート型などのさまざまなデザインを試しました。見た目や価格、使用する素材について、毎週少なくとも一度は食ビジネスコースの伴准教授にもレビューを受けながら、丁寧に相談を重ねて進めていきました。
特に、まだ手探り感の強かった開発初期は「このアイデアでは実現が難しいね」と言われてしまう提案が多く、修正を重ねることが続いた時期もあり、この頃はとても苦労しましたね。

― 商品開発の過程で直面した困難や不安は、どのように乗り越えられましたか?
石倉さん:当初から、精神的な負担はほとんど感じることはありませんでした。それは、ゼミの先輩方が全面的にサポートしてくれたおかげだと思います。
商品開発においても、最終的な判断を私に任せていただけた上に、私の意見を尊重しながらフォローしていただいていたので、苦しいと感じることは少なかったです。連携企業の担当者の方々も非常に協力的に接してくださり、「何でも相談していいよ」と励ましてくださっていたので、他のゼミ生と比べても苦労は少なかったかもしれません。
髙畑教授:このような取り組みを見ていると、毎年、学生たちはしっかりしていると関心させられることが多いです。もちろん、しっかりした学生を選んで重要な研究を任せているのですが、それにしても、責任感の強さや成長の速さにはとても驚かされています。
私は、自身の経験からも「やってできないことはない」という考えを大切にしながら、学生にとって乗り越えられない課題は与えていないつもりです。実際に挑戦してみた学生たちは、この言葉の意味を体感し、理解してくれているのではないでしょうか。

商品開発で磨かれた提案力と、大阪黒菜パンに込めた想い
― 特に大変だったことや、心に残っているエピソードがあれば教えてください。
石倉さん:特に大変だったのは、やはり商品の試作段階です。本格的にパン作りをするのは初めてだったので、試作と試食を繰り返しながら最適な形に仕上げていくプロセスは本当に大変でした。
実際に20種類以上のパンを試作しましたが、その都度、分量の微調節を繰り返しました。毎週2回は時間を確保してパン作りに取り組んでいた時期は、かなり大変でしたね。
また、心に残っているエピソードは、大阪市さんからのご紹介を通じて大阪黒菜などを栽培している生産者の方々を訪問し、直接お話をうかがった時のことです。
生産者の方が「食べれば良さが伝わるけれど、食べる機会がなければその美味しさは伝わらないんですよね」とおっしゃっていた言葉は、非常に印象に残りました。この言葉を胸に、10月の大学祭で行う初めての販売イベントでは、なんとしてもオリジナルパンを600個完売させたいという強い決意を持ちました。
また、試作段階ではありましたが、生産者の方々にも私の手作りパンを試食していただき、ご家族にも楽しんでいただけたことも、とても嬉しかったです。

― 商品開発を通じて身に付いたスキルや、地域・食に対する意識の変化があれば教えてください。
石倉さん:特に大きな変化として感じているのは、消費者の方にどのように商品を楽しんでいただきたいかを、以前よりも深く考えるようになったことです。また、この取り組みでは積極的に提案する姿勢が求められたため、提案スキルも格段に向上しました。
さらに、大阪市の都市農業に取り組む方々の少なさや、新しい若者が参入しにくい環境があることに気付いたことも、大きな変化をもたらしていると思います。こうした課題を改善し、大阪の農産物をもっと広くアピールできる環境を作れたら良いなと感じるようになりました。
今回の取り組みで、農産物の生産者の方々ともコミュニケーションを取り、私の考えや感じたことを伝えていきたいと思います。大阪市内の農産物について学ぶ機会を得られたことをきっかけに、農業への意識が変わるとともに、地域の農産物に対する関心が一層高まりました。今後もこうした商品に関わっていきたいという思いが強くなったと感じています。

今後の展望や目標
― 今後挑戦してみたいことや目標を教えてください。
石倉さん:今後取り組みたいこととして、実際に大学祭でのオリジナルパンの販売ができた暁には、購入してくださった方々からのアンケート結果などのフィードバックを基に、パンの改良を重ねていきたいと考えています。また、地元のベーカリーなどとも連携するなど、取り組みの幅を広げていきたいです。
さらに、大阪市内の農産物の認知度はまだまだ低いというお話をお聞きすることも多いので、知名度向上につながるPR活動にも力を入れていきたいと思っています。
現在準備を進めている大学祭で行うパンの販売イベントでは、私も店頭に立ち、直接お客様の接客を担当する予定です。ジェイコムウエストさんのスタッフの方々と協力し、販売目標の600個達成を目指してがんばりたいと思っています。

また、大学祭の特設ステージで行う食育トークイベントへの登壇も予定しています。こうした経験を積み重ねながら、大阪市の農産物がより多くの人々に愛されるよう、今後も取り組んでいきたいです。
大阪成蹊大学HP 経営学科 食ビジネスコースの学生が考案したオリジナルパンの特別販売を実施