サステナブルファイナンス:持続可能な未来を支える金融の鍵

サステナブルファイナンスとは何でしょうか?

2015年9月の国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals; 持続可能な開発目標)が採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標と169のターゲットが示されました。これに応じてSDGsを支える金融面での取組みを総称したものがサステナブルファイナンスです。

サステナビリティ(持続可能性)については、以前から国連で検討が進められており、1983年にJavier Pérez de Cuéller国連事務総長からノルウェーのGro Harlem Brundtland首相に、持続可能な成長のために必要な環境政策の検討委員会を依頼。その委員会によるBrundtlandレポートの定義(将来世代のニーズを損うことなく現在のニーズを満たす成長)が引用されることが多いようです。

サステナブルファイナンスにおいては、ESG(Environmental, Social, and Governance)という言葉もよく用いられます。営利企業の主な目的は収益を最大化することにあるわけですが、その際に環境・社会・企業内部のガバナンス(経営)にも配慮することが求められるようになってきており、年金基金などでは投資対象をESGに配慮した企業に絞っていることもあります。

なぜ、現代のビジネスや金融業界において重要なのでしょうか?

サステナビリティは広く一般的に重要な課題であり、特に、ESGはビジネスや金融業界で意識される課題であることは前述のとおりです。近年の金融においては、ESGへの配慮が求められるようになってきているのですが、その中でも特に環境Eの中で、気候変動リスクへの対応が重要検討事項となっています。

地球温暖化の影響で台風が大型化する傾向で企業が物理的な損害を受けるリスクを物理的リスクと呼び、この損害を見込んだ対策を考えている企業は多いのではないかと思います。気候変動の直接的なリスクともいえます。

気候変動リスクに対するファイナンス面でのリスクには、もう1つ、移行リスクと呼ばれるものがあり、気候変動の間接的なリスクですが、金融業界ではこちらも重要なリスクとして認識されています。2015年のCOP21において採択されたパリ協定により、主要排出国・途上国を含む全ての国が、温室効果ガス(CO2)の削減目標を策定し、削減義務を負うことで、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことが合意されました。日本でも「国・地方脱炭素実現会議」で2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組みが進められています。こうした低炭素経済への移行に伴い生じるリスクが移行リスクです。

企業には、温室効果ガス排出量のみならず、取組み内容等報告の強化や既存商品やサービス等に対する規制を通じたコンプライアンス費用等の増加などの政策・法的な移行リスクがあると言われています。石炭、石油、天然ガスの採掘、生産、使用等に依存する組織には、短期的にも重要な財務的影響を及ぼす可能性があり、移行リスクの1つです。政府による規制が課せられなかったとしても、市場における選別やレピュテーションによって、CO2排出削減量や再生エネルギーの利用が十分でない企業が、サプライチェーンから排除される(移行)リスクもあります。実際、取引先企業からCO2排出削減を強く求められることが(特に大手の)企業では多いようです。アップル社は2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束しており、取引先企業が必死に対応していることは有名です。金融業界は直接的なCO2排出は少ないのですが、取引先企業のCO2排出の削減も求められるようになっており(Scope 3と言います)、取引先企業の脱炭素化の金融面での支援を行うことが求められています。

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Apple、グローバルサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請

投資やビジネスにおけるリスク管理にどのような影響を与えますか?

投資におけるリスク管理は基本的には金銭面でのリスクを扱うものですが、投資対象としてサステナビリティを意識したものに限定するなど意識するリスクの範囲が変化してきたかもしれません。前述のとおり、サステナビリティは将来世代の成長を損なうことなく現在の成長を促進していくことです。特に具体的に何かを特定することは難しいのですが、将来世代を担う新入社員の方々がどのようなことができるのか意識しておくことが重要ではないかと思います。

貢献する方法や機会について教えてください!

上述のとおり、サステナブルな社会の実現は人類共通の課題であり、エコバックの利用など身近なところから貢献する方法は多々あると思います。

関連するスキルを身につけるためにアドバイスをください!

気候変動リスクへの対応をはじめとしたサステナブルファイナンスの取組みは、精力的に進められている分野であり、ニュースやインターネットでの情報・書籍なども数多くあります。興味のある、あるいは、取組みが必要になってきたものから情報の入手を始めるのがよいのではないかと思います。

▼取材にご協力いただいた吉羽 要直 教授のHPはこちら
教員紹介 :: 吉羽 要直 | 東京都立大学