SDGs 大学プロジェクト × Aichi University of Education.

愛知教育大学の紹介

愛知教育大学は、愛知県刈谷市にある国立の教育大学で、教育を専門に学ぶ学生が多いため、幼児教育専攻・義務教育専攻・高等学校教育専攻・特別支援教育専攻・養護教育専攻と教育に関する幅広い知識や技術を身につける機会があります。
学生たちは、教育実習を通じて、実際に学校現場での指導経験を積むことができます。また、教育に関する研究や実践に取り組むための施設やプログラムが充実しており、多彩な学びの場を提供しています。
愛知教育大学は、教育に関する総合的な能力を身につけることができるため、卒業生は幅広い職種に就くことができます。教員や教育関係者としてのみならず、企業や官公庁など、様々な分野で活躍する卒業生も多数います。
キャンパスは自然豊かな環境に位置し、静かで落ち着いた雰囲気の中で学ぶことができます。また、学生たちが自由に活動できるスペースや、図書館、カフェテリア、学生寮など、快適で充実した環境が整っています。
教育に興味がある高校生にとっては、愛知教育大学は教育を深く学ぶことができる、魅力的な大学です。教育に関心のある人たちが、自分自身の可能性を広げるための学びの場として、愛知教育大学を選ぶことをお勧めします。

愛知教育大学がSDGsに取り組むまで

-愛知教育大学について教えてください。
大鹿センター長:愛知教育大学は、地域に開かれた大学であり、幅広い役割を担っています。専門職業人を育成するにとどまらず、地域社会の貢献にも取り組んでいます。また、ユネスコスクールとして認定された全国でも数少ない大学であり、附属学校7校園すべてがユネスコスクールに加盟しています。
-ユネスコスクール支援大学間ネットワーク(ASPUnivNet)にも加盟されているそうですね。
大鹿センター長:そうです。2012年にユネスコスクール支援大学間ネットワーク(ASPUnivNet)に加盟しました。ユネスコスクールには、日本では 1,115校、愛知県だけで約160校の加盟校が参画しています。
-全国で1,115校しかない中で、愛知県は160校も加盟校があるのは、すごく偏っている気がしますね。何か背景がありますか?
大鹿センター長:勿論、愛知県の加盟校が多いことにも理由があります。生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年に行われ、持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議が2014年に行われました。そういった国際会議が愛知県で行われているなかで、小・中学校を中心にユネスコスクールは着実に増える流れになりました。
-そういった流れがあったんですね。どういった狙いがあるのでしょうか。
大鹿センター長:これは、愛知県内の学校のユネスコスクール加盟申請及び加盟校の活動に関する支援を実施することを目的としています。また、ユネスコスクールとして、エコキャンパスの展開、科学・ものづくり教育の推進、国際交流活動などの実施により、ユネスコの推進するESDに関連する活動を推進しています。
-具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?
大鹿センター長:愛知教育大学は、ユネスコスクール支援に関連する活動、ESD推進のための教育・研究に関連する活動、環境に関連する活動、エネルギーに関連する活動を行っています。例えば、エコキャンパスの展開や科学・ものづくり教育の推進、国際交流活動の実施などがあります。これらの活動を通じて、持続可能な社会を築くための教育を提供し、地域社会や国際社会と連携して活動しています。
-ユネスコスクール支援やESD推進を進めているなか、愛知県は「SDGs未来都市」に採択されたんですね。
大鹿センター長:そうです。そして、2019年に名古屋市が選定されています。名古屋市のSDGs未来都市計画をすすめるため、なごや環境大学SDGs未来創造クラブを設立し、そこで2つのプロジェクトに取り組んでいます。①低炭素モデル地区を中心とした「まちづくりプロジェクト」と、②次世代を担う子どもたちを対象とした「ひとづくりプロジェクト」です。
②「ひとづくりプロジェクト」では、小学4年生〜6年生をターゲットにする事業がメインとなっており、そのプロジェクトに私がメインで参画し、愛教大の学生を巻き込んでいったことがきっかけで、本学がSDGsに取り組み始めたきっかけになったかもしれませんね。
愛知教育大学の学生によるSDGsの取り組み
-名古屋市が小学生向けのSDGsの教材を開発するという話になった際、愛知教育大学の学生が教材の開発に参加されたそうですね。詳しく教えていただけますか?
大鹿センター長:はい、そうです。教員養成の中で教材作成のノウハウを学んでいたため、名古屋市が小学生向けにSDGs教育を推進することになった際、本学の学生が作ったすごろくやかるたなどの教材が活用されることになりました。また、なごやSDGs街における街づくりの教材も、私たちの学生が作成したものがベースになっています。

-そうなんですね。それから、学生たちがSDGs教育に取り組む活動がはじまったのでしょうか?
大鹿センター長:2020年にコロナが始まった頃、私たちの学生たちはSDGs教育の普及活動をはじめようという話になりました。私自身も少し焚き付けたところがあったのですが、学生たちがSAGAという活動団体を立ち上げ、新たに教材を作ったり、出前授業を行ったりするなど、SDGs教育の活動を進めています。この活動が、私たちのSDGs教育の根幹となりました。

学内でのSDGs推進

-なるほど。そうしたSDGs教育の活動は、学内でどのように推進されているのでしょうか?
大鹿センター長:現在は、全学でSDGsを推進できているわけではありません。とはいえ、大学もSDGs教育を推進する必要性を感じているため、認識のすり合わせが進みつつある状況です。学生たちが作成した教材を活用したイベントや出前授業を行うなどして、SDGs教育の普及を進めています。SAGAの認知度が広がることで、学生たちのモチベーションに繋がっているようです。しかし、学内においては、まだSDGs教育についての認識が十分ではありません。教員や学生たちがSDGs教育についてもっと盛り上がる必要があります。大学としても、外部での活動と同時に 内部でもSDGs教育を推進することが必要だと考えています。
-なるほど。最近、新しい学習指導要領や教育課程が始まり、小中高の教科書にもSDGsが取り上げられるようになってきましたね。そこで、愛知教育大学では先生の育成に力を入れているからこそ、SDGsに対する理解を深める必要があるかと思いますが、具体的にどのような教育を行っているのでしょうか?
大鹿センター長:はい、そうですね。SDGsについての知識や理解を深め、授業で教えるための教員を育成する必要があると感じています。SDGsについて、何が必要で、どのように取り組むことができるかを学ぶことで、教育者としての能力を高めています。
-他の大学と比べて、愛知教育大学でのSDGsの特徴は何ですか?
大鹿センター長:他の大学では、主に研究や企業との協力によってSDGsに取り組んでいる場合が多いですが、本学では教育を中心に考えています。すべての人がSDGsについて知っておくべきことであると考え、教育によって普及を図ります。また、小学生などの子どもでも理解できるような教材の提供も行っています。
-大鹿先生のゼミ生が、すごろくやかるたなどの教材を作っていると聞きましたが、本当ですか?
大鹿センター長: コロナがはじまった2020年に、私のゼミ生を中心に学生団体(SAGA)を立ち上げています。主力メンバーは理科の学生ですが、いろいろな専攻の学生もいます。厳密には、すべてのゼミ生が関わっているわけではありませんが、概ねそのような形です。
-なぜ学生団体を作ることにしたのですか?
大鹿センター長: 学生たちが学校現場でSDGsに取り組むことを望んでいるからです。ただ授業で学ぶだけではなく、実際に活動を通じて経験することが大切だと思っています。私は、学生たちが自主的に活動することが、主体性を持って行動できるようになることにつながると考えています。そのため、できるだけ私の名前を出さないようにしています。企業との連携についても、学生たちが窓口になり、すべてのやり取りをしています。
-今後、学生団体の活動を広げる予定はありますか?
大鹿センター長: はい、そのつもりです。現在は少人数で活動していますが、学内で広めて多くの学生に参加してもらいたいと思っています。特に、自然科学系だけでなく、社会面や経済面の教材も作れるように、様々な分野の学生に参加してもらいたいと考えています。
-新入生や教職員も巻き込む予定はありますか?
大鹿センター長: そうですね。先生方の研究がSDGsにどのように関連しているかを知ってもらったり、部活やサークルの活動もSDGsに関連するものが多いので、それを伝える必要があると思っています。
企業とのSDGs推進
-愛知教育大学でのSDGsに関する取り組みについて、どのような反応がありますか?
大鹿センター長: 本学の学生たちは、SDGsについて学ぶことで、社会的な課題について考える力や解決するためのアイデアを持つようになっています。実際に、SDGs AICHI EXPOというイベントで、学生が作成した教材や体験を紹介する機会があり、学校の先生方や企業の方からも多くの反応があります。企業からは、大学とのコラボを希望する声もあるほどです。例えば、名鉄百貨店さんが子供売り場でSDGsイベントを開催し、本学の学生が参加しました。また、丸善さんともイベントを行う予定です。コロナの影響で実現していないものもありますが、東海テレビさんからも依頼があり、学生が中学校の社会見学でSDGsについて説明する予定でした。企業の方がSDGsの重要性を理解しており、学生が持っているSDGsを分かりやすく伝える力を求めています。企業からは、研究的なものではなく、コミュニケーションや教育面での取り組みが求められているのです。

SDGsの意義を身近に感じる、学生たちの活動と気づき

大鹿センター長: 先日、名古屋外国語大学でSDGsリレーシンポジウムが行われました。多文化共生の地域づくりがテーマで、SDGsに取り組む学生たちが発表するというものですが、そこで得た”気づき”があります。
大鹿センター長: 学生たちが放課後に学校に行って、学習困難な子どもたちに学習をサポートするという活動がありました。教員関係以外の人からすると、驚きや感動を与える活動ですが、実は教員になる学生たちが普段から当たり前に行っている活動でした。愛知教育大学の学生たちは1年生〜4年生の間で、この活動を何年にも渡って継続しています。
-なるほど、普段から当たり前に取り組んでいる活動が、SDGsに該当するものだと気づかなかった人もいるかもしれませんね。
大鹿センター長: そうですね。学生たちはこの活動を当たり前のように行っているため、SDGsという言葉に特別感があるように思えるかもしれません。しかし、実は学校での清掃活動や挨拶運動、給食を残さず食べることなどもSDGsに該当するものと考えています。小学校の先生にも、日頃のこのような活動がSDGsに関連することを伝えています。
-そうすることで、より身近なところでSDGsの意義を理解することができるということですね。
大鹿センター長: はい、その通りです。今の私の仕事は、SDGsを身近なことと捉えられるように、ツールを使って学生たちに教えることです。そして、学生たち自身も自分の生活を見直し、SDGsに貢献していることを実感してほしいと思っています。私たちができることはささいなことかもしれませんが、大切なことでもあります。

SDGs学習ツール:ワークシート

-教材に関して、どういった工夫をされているんですか?
大鹿センター長: 学生たちは自分たちで色々工夫して教材を作っています。私はあまり手出ししていません。実際に出来上がった教材は、学生たちからのアイデアが多いです。
-そうなんですね。ワークシートを作られているとのことですが、具体的にどのようなものを作っているのでしょうか?
大鹿センター長: 名古屋市科学館や東山動植物園など、小・中学校の遠足や郊外学習で使えるワークシートを作っています。配布もされています。このような施設と連携した教材を作ることで、先生になった時に自分たちが作った教材があることに自信を持って、子どもたちに教えることができます。また、校外学習に行く時にも使えるので、学生たちは自分たちが作ったワークシートが実際に使われることにやりがいを感じます。
-なるほど、自分たちで作ったものが使われることでやりがいを感じるんですね。ワークシートの内容は、どのように作られているんですか?
大鹿センター長: 学生たちは、実際に施設に行って、施設の担当者と話をして、施設の意図と学校の子どもたちに合わせたワークシートを作っています。それぞれの施設によって内容が異なるので、カスタマイズも可能です。

-なるほど、施設によってカスタマイズができるんですね。それでは、ワークシートを作ることによって何が良いことがあるんですか?
大鹿センター長: ワークシートを作ることによって、学生たちは自分たちで学びを深めることができます。また、自分たちが作ったものが実際に使われることで、やりがいを感じることができます。そして、校外学習に行く施設は決まっているので、そこをターゲットにしてワークシートを作ることで、効果的な学びの機会を提供することができます。
大鹿センター長: 最近では、よりSDGsに関する教育が求められています。しかし、学校現場ではそのための時間を作ることが難しいということもあります。そこで、校外学習に行く際に、SDGsに関連するワークシートを用意しておくことで、知らない間にSDGsの勉強をすることができます。これは一石二鳥ですね。
-なるほど、ワークシートは学生たちが自分たちで作っているんですね。ワークシートの展望についてお聞かせください。
大鹿センター長: 今後は、もっと多くの施設のワークシートを作ってほしいと思います。また、学生たちには自分たちの興味がある分野でワークシートを作ってもらいたいと思います。そして、愛知県中の施設がどこもワークシートを用意していれば、より効果的な学びの機会を提供することができます。ワークシートは作るだけでなく、使ってもらうことが大切です。施設や学校現場が使いやすいような形式で提供していきたいと思います。

SDGs学習ツール:バイオミミクリートランプ

-学生たちが作ったバイオミミクリートランプについて教えてください。
大鹿センター長: その教材は、ヤモリの足の仕組みを利用して開発されたマスキングテープのように、生物の特徴と、それを活かして開発された科学技術製品がセットになった26セットのカードで、子どもたちが神経衰弱として遊びながら、生き物の特徴が科学技術に役立っていることを理解するための教材です。
-なるほど、この教材はどのように普及していく予定ですか?
大鹿センター長: 現在、学生が大学を通してクラウドファンディングを計画しており、西三河の全小学校に寄贈する予定です。学生たちは出前事業をより多く行いたいと考えていますが、活動できる人員が限られているため、学校の先生方に教材を寄贈して、気軽に使っていただきたいと思っています。

-企業からの支援は受けていますか?
大鹿センター長: 現在、教材を製品化して企業からの支援を受ける話もありますが、私たちは学校で使ってもらいたいという思いが強いため、学校に買ってもらうことは本末転倒だと考えています。
大鹿センター長: 本学でもクラウドファンディングを始めており、愛知県全体で実施したいと考えていますが、非常に高額の予算が必要になるため、どうしてもハードルが高い状況です。
-そうですね。クラウドファンディングで高額な資金を集めることは簡単ではありませんね。でも、企業が協賛する形で応援することはできるかもしれませんね。
大鹿センター長: そうですね。スポンサーとして協力してくれる企業があればとても助かりますが、本学は目標金額を達成しなかった場合には 返金しなければならないシステム(All or Nothing型)になっているため、成功させるために小さなところから始め、徐々に拡大していく方法を考えています。
-なるほど、クラウドファンディングの活用方法にも指定があるんですね。他の大学では特定の産業や研究成果を持つ企業とコラボすることができる場合もあるようですが、教育大学の場合は難しいですね。

今後の展望について

大鹿センター長: 教育大学だからこそ、学校で使ってもらいたいという学生たちの思いを尊重することが大切だと考えています。学生たちはSDGs教育に熱心であり、学校で実際に活用してもらいたいという思いが強いです。そのため、私たちは製品化を進めるだけでなく、学校との連携も大切にしています。例えば、教育現場での評価やフィードバックを取り入れることで、より実践的な教材として改良を加えていくつもりです。このように、学生たちの思いを尊重しつつ、教育現場との連携を深めていくことで、より良いSDGs教育を提供していきたいと考えています。