
SDGs 大学プロジェクト × Matsuyama Shinonome College , Matsuyama Shinonome Junior College.
目次
松山東雲女子大学・松山東雲短期大学の紹介


松山東雲女子大学と松山東雲短期大学の母体である松山東雲学園は、1886(明治19)年初代校長であるニ宮邦次郎の女子教育に対する熱い祈りによって作られた四国最初の女学校である松山女学校が発祥です。
本学園が長い教育の歴史を通じて特に重視してきたのが、『新約聖書』の「コリントの信徒への手紙Ⅰ」第13章に説かれた、信仰と希望と愛に生きることの大切さです。ここに建学の精神を見出し、スクールモットーとして「信仰・希望・愛」を掲げ、女子教育にたゆまぬ努力を重ねてきました。学章はクローバーとマツの葉が図案化されたもので、クローバーの3つの葉は「信仰・希望・愛」を表し、マツの葉は大学名の「松山」に由来しています。
また学園名の「東雲」は、1932(昭和7)年に松山女学校として創立された学校が四年制の高等女学校となる際「松山東雲高等女学校」と名づけられた頃から使われています。現在、松山東雲中学・高等学校のある地域一帯の町名が「東雲」であったことと、聖書においても「われしののめを呼びさまさん」とあることも命名の理由です。松山東雲女子大学と松山東雲短期大学は同じ敷地内にあり、愛媛県松山市の郊外に位置しています。
松山東雲女子大学について

1992(平成4)年に松山東雲女子大学を開学しました。2024(令和6)年には、地域イノベーション専攻を新設し、人文科学部心理子ども学科に3専攻(子ども専攻・社会福祉専攻・地域イノベーション専攻)を有しています。
子ども専攻では、子どもの育ちと教育・福祉の諸課題に対する深い理解と対人関係能力を培い、複雑、高度化する子育て支援ニーズに応えることのできる高度な専門性を備えた保育者を育成しています。
社会福祉専攻では、長年のソーシャルワーク教育の実績をもとに、これからの社会をより良くする力を育てます。必要とされる予想外の状況に対応できる社会的・総合的な視点での分析力・観察力・洞察力を高め、状況を変えていく課題解決力・組織形成力を身につけることをめざしています。
地域イノベーション専攻では、さまざまな視点で社会を捉え、データサイエンスの手法を用いて社会的価値の創造ができる女性人材を育成します。実際に地域が抱える社会課題は何かについて愛媛県とも連携し、地域社会に触れながら自分の目で見たもの、肌で感じたものや対話を通して課題を明らかにする力を身につけていきます。
松山東雲短期大学について
松山東雲短期大学は、1964(昭和39)年に開学しました。現在は、保育科・現代ビジネス学科・食物栄養学科の3学科を開設しています。
保育科が目指す保育者の養成は、子どもの発達がわかる実践者です。保育者としてひとり立ちをするための学びを深めるために、体系的・総合的に学べるような教員を揃え、保育のスペシャリストを育成できるよう心がけています。
現代ビジネス学科では、ビジネスに関する知識とスキルを身につけるだけでなく、協調性・創造性・主体性といった人間力を伸ばすことにも重きを置いています。また、本格的なAI時代の到来に備えたICT運用能力の育成や、将来の進路を早期にイメージするためのキャリア教育にも力を入れ、地域社会に貢献できる女性を育成しています。
食物栄養学科では、食を通じて地域に貢献できる「食のスペシャリスト」を育成するために食べ物・栄養・健康を科学する幅広い専門知識と優れた技能と品格を兼ね備えた人材の育成に力を注いでいます。
SDGsを意識するようになったきっかけとは?
桐木陽子 副学長:松山東雲女子大学、ならびに松山東雲短期大学は、2012(平成24)年に愛媛銀行と地域産業の振興や教育・文化の発展等に対する貢献を目的とした連携協力協定を締結しました。
また、2022(令和4)には同協定内容にSDGsの項目を加え、SDGsをはじめとする現代社会が直面している課題とその解決策を探究する課題解決型学修の強化・充実に努めるとともに、人材育成・産学振興・地域づくり等さまざまな分野において相互に協力することで、地域及び地域産業の振興・文化の発展等に貢献することを目的とし連携協力協定を再締結しています。連携協力している事項としては、主に以下の6点があります。
- SDGsの実践・推進に関すること
- 地域産業の振興に関すること
- 教育・文化の発展に関すること
- 人材育成に関すること
- 地域づくりに関すること
- その他両者が協議して必要と認める事項
共通カリキュラム科目である「現代社会とライフデザイン」を愛媛銀行の寄附講座として開講し、愛媛銀行行員が数コマ講義を行い、グループワークのファシリテーターとして授業に関わるなど、企業と大学の協働体制で授業を運営しています。
本学も加盟している松山市SDGs推進協議会は、全員参加で持続可能な地域を創っていくため、産・学・民・官・金などの多様なステークホルダーがそれぞれの立場で意見交換し、パートナーシップを形成できる場として2020(令和2)年にスタートし、本学の教職員や学生たちも積極的に参画しています。
「SDGs推進コンダクター」として登録している学生たちは、要請のあった小学校に出向いて授業をしたり、松山東雲短期大学食物栄養学科の「しののめベジガール」は、離島・中島を中心に活動を展開している分科会に参加しています。また、本学教員が発起人の一人である「ジェンダーギャップ解消ラボ」では、地域のジェンダーギャップを解消するために学習会を継続的に開催し、学生たちも参加しています。
社会連携の取り組みについて
松山東雲女子大学・松山東雲短期大学では、社会や地域との連携を深め、地域に根づいた取り組みを積極的に推進しています。
例えば、子どもや保育・社会福祉・食物栄養を学ぶ学生ならではの視点から、愛媛県や松山市などに対し、大学の強みや学生たちの学びになるような取り組みを実施しています。
どのような取り組みをしているのか、具体的にお話を伺いました。
松山市からの委託事業「しののめ広場たんぽぽ」

社会貢献推進室 野上 室長:松山東雲学園では、松山市ひろば型地域子育て支援事業の委託を受け、2007年1月に桑原キャンパス内に「しののめ広場たんぽぽ」を開設しました。
「たんぽぽ」というネーミングには、「つい誘われていってみたくなる」ような温かさのある広場をめざしていきたいという願いが込められています。またたんぽぽは根を地中に深く張り、葉は中心から四方八方に広がったり、タンポポの綿毛を見ると、どの子も「ふーっ」と吹きかけてみたくなったりする子どもの能動性を大事にした場所でありたいという願いからも命名されています。
地域の子育て中の親と子どもが集い、出会いや学び合い・支え合いの場として提供しています。0歳(3ヶ月以上) ~ 概ね3歳の子どもとその家族が「たんぽぽ」を訪れ、子育てについての相談や子育てに関する情報の提供のほかにも、月に1度子育てに関する講座の開催や絵本の読み聞かせイベントも開催しています。
講座については、子育て支援のプログラムであったり、女子大学には子ども専攻、短期大学には保育科という幼児保育の専門家が多数いますので、その教員たちの手助けを受けながら学生が講座を開講したり、ボランティアで参加したりという連携も構築できています。
さらに特徴的なのは、絵本の読み聞かせについてです。絵本の認定絵本士を目指す学生たちもいるため、教員が絵本の読み聞かせを中心とした講座をしたあと、学生たちがその講座をフォローするといったイベントの計画もしているようです。
「たんぽぽ」では、専任保育士7名が在籍し(常時2名体制)、1日あたり約10〜20名が来園する人気の施設となっています。つい誘われて行ってみたくなるような温かさや、何かしてみたくなるようなワクワクドキドキ感につながる場の提供を常に心がけています。
キャンパス内には「たんぽぽ」だけでなく「松山しののめ認定こども園」も併設しています。このような認定こども園や子育て支援の地域広場があるのは大変珍しく「たんぽぽ」には専任の保育士だけでなく学生も参加しているため、常に子どもと触れ合える恵まれた環境で学びを深めることができます。
愛媛県子育て支援員研修とは
野上 室長:子どもが健やかに成長できる環境や体制を整備するために、子育て支援の担い手となる人材を確保すること。その他にも子育て支援の仕事に関心を持ち、従事することを希望する人に対し必要となる知識や技能を修得するための研修を実施するなどして、保育人材の確保を目的としている国の事業で愛媛県より委託を受けて運営をしています。
「しののめ防災ガール」による防災パンフレットの作成
桐木 副学長:地域社会において防災・減災への意識が高まる中、本学においても防災教育に力を注いできました。2019(令和元)年度には、学生有志が集まり「しののめ防災ガール」を結成し、本学体育館において学生たちだけで避難所運営することに挑戦しました。
地域の方々や高校生たちにも協力していただき実施し、そこで得た気づきをもとにひとり暮らしの学生たちにも役立つポケットサイズの防災パンフレットを作成しました。防災パンフレットの表紙にあるキャラクターは、「しのうさ」という本学広報に出てくるキャラクターで、学生たちがすべて手作りで作成したものです。
作成した時期は、ちょうどコロナ禍で、学生対象の全学的な避難訓練や防災の講話等がことごとく中止されていましたので、ポケットサイズのパンフレットは大変役立ちました。「何か防災対策してますか」など、パンフレットをもとに防災について学生たち同士で話し合ったりもしていたようです。
パンフレット作成後は、災害時に役立つ「防災ポーチ」について話し合いました。これらの活動は、本学のHPにアップしていていつでも見ることができるようにしています。
2024年4月1日開設!松山東雲学園 児童クラブ

野上 室長:地域との連携を強め、よりいっそう社会から求められる学園にという方針のもと、2024年1月「地域連携社会貢献推進室」を設置しました。推進室の最初の事業として、地域行政からの要請もあり、本学キャンパス内に小規模(定員20名)ではありますが、児童クラブを設立しました。
保育者養成校であり、今年度から小学校教諭免許、特別支援学校教諭免許の取得(通信制)も可能となった本学の強みを活かしながら、子どもたちが安全に安心して過ごすことができる生活の場となるよう取り組んで参ります。
自治体との協働プログラム、地域社会が抱える課題解決をめざした取組み
桐木 副学長:愛媛県の最南端に位置する愛南町とも包括連携協定を締結し、様々な教育活動を展開しています。2022(令和4)年度には、共通カリキュラムの「インディペンデント・スタディ」において、課題解決型授業を展開しました。
愛南町の水産物の潜在的な魅力を引出し、新たな創作品の提案等をはじめ、町内の水産業さらには町の活性化に資するような取組を提案すべく学生たちが研究を続け、水産物の活用を通じた交流人口の増加による活性化について提案をしました。今年度は、バロック真珠をつかった創作品の開発、愛南マラニックのおもてなし食の開発プロジェクトを実施する予定です。
この他にも、松山市、松山市社会福祉事業団との協働で、こどもの居場所づくり事業「でら小屋」を実施しています。また、東温市にある愛媛県立みなら特別支援学校の学校行事を学生たちが支援しています。宿泊学習や交通安全教室、運動会などにボランティアとして参加し、先生方からご指導をいただきながら子どもたちと交流し、学びを深めています。
学生主体のボランティア同好会「しのモン応援隊」


野上 室長:2016年に発生した熊本地震をきっかけに被災地支援プロジェクトとして立ち上がった学生主体のボランティア団体です。
2018年7月に発生した西日本豪雨再学ではすぐに現地入りし、被災地の子どもたちの遊びを通した心のケア活動を行いました。また、最近では2024年1月1日に発生した能登半島地震においては、「離れていてもできること」をメンバーで話し合い、すぐさま学内で募金活動を行い、日本赤十字社愛媛県支部に災害義援金を届けました。
支援技能や資質を高めるための研修を受講し、教職員や卒業生の応援も得たりしながら、継続的な支援活動を続けています。
社会貢献の意欲を高める学校での取り組みについて
桐木 副学長:学生からのアイデアとして、キャンパス内で自由に使える傘の設置があります。
キャンパス内は渡り廊下などの連結が不十分な箇所があり、天気が悪い日には校舎と校舎の間を移動する際、傘がないと非常に不便なことがありました。そこで学生たちから「移動時に自由に使える置き傘を置いたらどうか」という提案があり、キャンパス内の随所に設置しました。
自転車置き場やバイク置き場などにも設置し「自由にお使いください」という意味あいで設置したところ、傘が無くなることもなく、学生たちが雨に濡れることもなくキャンパスの移動に役立っています。
またキャンパスを訪れた外部の方も、自由に使える傘にもかかわらず、傘が無くならない様子に驚嘆したこともあります。外部の方は「このように自由に使える傘があると、大体減っていくが、このキャンパスは減らないんですか」と驚かれたほどです。
本学ではこのような置き傘の設置だけでなく、学生たちが自ら率先して何かを提案したり、良い環境をつくるための提案は、その実現を後押しできるよう取り組んでいます。
今後の展望について
桐木 副学長:2022(令和4)年度後学期から、本学で開講する科目(一部)を高大連携科目として高校生の受入れを開始しました。初年度は、同一法人内の松山東雲高等学校の生徒を対象として、共通カリキュラム科目から3科目を提供しました。2023(令和5)年度からは、中予地区の高等学校に本制度について周知し、高大連携科目制度を拡大しています。
松山城のふもとに位置する松山東雲学園大街道キャンパスには、松山東雲中学・高等学校があり、出張講義等連携を強化してきましたが、クラブ・部活動等においても、今後は協働できる事業を増やして学生や生徒たちの交流を深めていきたいです。
学生たちの社会に貢献したいという気持ちを大切にしながら、大学での学びと実践を融合させる機会を今後も増やしていきたいと思っています。