
SDGs 大学プロジェクト × Tokoha Univ.
目次
常葉大学の紹介


常葉大学は、1980年(昭和55年)に開学した常葉学園大学と、同法人内の浜松大学と富士常葉大学の3つの大学が統合し、2013年(平成25年)4月に「常葉大学」としての新たな歴史をスタートした静岡県内最大の私立総合大学です。
現在、静岡市内に3つ、浜松市内に1つ、計4つのそれぞれ特色の異なるキャンパスを有し、10学部19学科、大学院4研究科6専攻、約7,500人の学生がそれぞれの知識と感性を豊かに育むため、多様な学びの場において自由に考え、日々様々な活動に挑戦しています。
本学では、美しい心を持って、より高い目標に向かってチャレンジし、学び続ける姿勢、すなわち「より高きを目指して~Learning for Life~」の建学の精神の下に、社会人に欠かせないコミュニケーション能力や問題解決能力を磨き「知」と「徳」を兼ね備えた「知徳兼備」、環境問題、エネルギー問題、少子高齢化、グローバル化などの多くの課題解決のための「未来志向」の教育を進めるとともに、地域社会や企業との連携した「地域貢献」活動を推進し、地域社会の中核を担う有能な人材育成のため、教職員が全力で学生を支援しております。

さらに、2022年度から「MIRAI TOKOHA」を旗印に掲げ、「Beyond the Limits」を合言葉に、学部・学科ごとに特色のある教育や個別最適化教育の推進と、学生の地域貢献活動の支援強化など、6つのプロジェクトをスタートさせました。
人生100年時代を迎え、「Society5.0(※1)」というこれまで経験したことのない新たな時代を生き抜いていくためには、従来の常識にとらわれない柔軟な思考と多様な視点が必要となり、高い問題解決能力が一層求められることになります。
本学では、「主役は学生」をモットーに、入学から卒業までのあらゆる場面で学生が自由に考え、様々な活動に挑戦できる機会を設けていますので、学生達には主体的に学び、常に向上心を持って物事に果敢に挑戦していってもらいたいと存じます。
(※1)Society 5.0(ソサイエティ5.0) … 現実空間と仮想空間が一体となり、さまざまな社会問題の解決と経済発展を実現する社会のこと。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、政府の「第5期科学技術基本計画」において日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。
SDGsに取り組まれたきっかけ

本学は教育理念の1つに「地域貢献」を掲げており、これまで学生や教職員の多くが様々な地域貢献活動を行ってまいりました。
学生や教職員の地域貢献活動を発信することは、地域に根差す大学としての存在を示すこととなり、SDGsと教育研究活動を結び付けることは、世界的な取り組みへの全学的なアクションを表明することになるというの目的の下、これまでの地域貢献活動とSDGsのひも付けを行い、取組事例を大学の内外に発信するため、「地域貢献センター(※2)」を拠点とし、各学部学科から選出された教員で構成する地域連携推進委員会において、個々の活動の可視化と発信に向けた議論を行いました。
地域貢献活動とSDGsは親和性が高く、常葉大学全体の取り組みとする地域貢献活動の取組事例発信企画「常葉大学×SDGs - 地域とともに持続可能な社会の実現へ -」として掲載がスタートしました。これらの取組は教職員だけでなく、学生主体の取組も発信することで大学全体の取組として実施することができました。
(※2)地域貢献センター … 2018年の静岡草薙キャンパス開設を契機に、地域社会の動向やニーズを的確に捉え、常葉大学が地域連携の拠点となって地域課題を解決する中で、学生の主体性を育てるとともに、これまで以上に開かれた大学として、組織的に地域への貢献を促進するために開設された。
SDGs施策
本学の学生や教職員が日常から行っているSDGsとかかわりのある取り組みや活動を大学全体で集約して本学ホームページにて発信しており、2022年度は51件を紹介しています。その中の幾つかについてご紹介します。
地方自治体等との連携


富士市が2021年10月に「自転車活用推進計画」を策定し、「自転車に乗ることが楽しくて笑顔になるまちふじ」を目指して、安全に安心して自転車を利用できる環境づくりや自転車の利用拡大による市民生活の質の向上、自転車を活用した都市の魅力・地域活力の向上などの施策を進めています。
この富士市の施策に対して、学生の柔軟な発想力と行動力を活かし、富士市が積極的に取り組むE-BIKE(※3)を活用した自転車観光やポタリング(※4)等を通じて、地域活性化に貢献することを目的に「自転車を活用した地域活性化」事業を実施しました。
具体的には、マーケティング施策として、E-BIKE等を活用した地域活性化を捉え、ターゲットや施策内容、施策のもたらす効果等について検討を行い、同時に、全国の自転車を活用したまちづくりの先行事例を調査・分析し、成功事例の共通点・特徴をメンバーで共有しました。
これらを踏まえ、初心者・中級者を対象に具体的なサイクリング・ルートを設定し、おすすめの観光スポットや飲食店を調査し、フィールドワーク(※5)を企画。フィールドワークでは、初心者コース、中級者コースそれぞれ2グループに分かれて、事前にルートの確認を行い、飲食店に取材のアポイントをとりました。
この活動は、住み続けられるまちづくり、目標11に紐づけた活動になります。
当日は、実際にE-BIKEなどの自転車に乗っておすすめの観光スポットや飲食店を取材するとともにコースの検証を行い、課題および地域への提案をまとめました。


また、浜松市では、東京2020パラリンピックのブラジル選手団の「ホストタウン(※6)」となっており、本学浜松キャンパスは男子ゴールボール(※7)の合宿地になっていました。それを機に、本学学生らが、視覚に障がいがあるブラジル選手団に対し、浜松市の観光資源をわかりやすく、楽しんでもらえるよう「音」で発信するオリジナルの動画コンテンツ製作し、浜松市の魅力を紹介しました。この活動は、人や国の不平等をなくそうという目標10につながる活動であるといえます。
(※3)E-BIKE … ロードバイクや、MTB、クロスバイクなどのスポーツサイクルを電動アシスト化した自転車のこと。広義では「電動アシスト自転車」のことだが、一般的に「電動アシスト自転車」といえば軽快車(いわゆるママチャリ)タイプのものを指すのに対して、E-BIKEはスポーツサイクルがベースになっている。
(※4)ポタリング … 目的地を特に定めることなく、気分や体調に合わせて周辺を自転車で巡ること。一人や家族連れ、気の合う仲間同士で、近郊を「散歩」程度に軽くサイクリングすること。和製英語。
(※5)フィールドワーク … 学内(キャンパス)を離れて、フィールド(研究対象の現地)を訪れ、フィールドの事情を直接観察したり、関係者から話を聞いて、問題点を明らかにし、解決策を探る調査手法のこと。
(※6)ホストタウン … 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、スポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興等に資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図るために、地方公共団体を「ホストタウン」として登録する国の制度。
(※7)ゴールボール … パラリンピック特有の種目であり、視覚に障がいがある人を対象に考えられた球技のこと。1チーム3人の選手が、鈴の入ったボールを転がすように投げ合って、味方ゴールを守りながら、相手ゴールにボールを入れて得点を競う競技。選手全員が視野や視力といった障がいの程度の差が出ないようにアイシェード(目隠し)を付けている。
地域貢献センターの学生支援
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「地域貢献センター」では、今まで以上に地域に開かれた大学を目指し、組織的な地域への貢献を促進して、地域社会のニーズを的確に捉え、本学が地域連携の拠点となるよう取り組むとともに、学生が地域とのつながりを持つことで実践的な教育を推進し、地域社会に貢献できる人材の育成を図ることを目的としています。
本センターの学生に対する支援事業の1つ「とこは未来塾-TU can Project-」は、学生の自主的なプロジェクトに対し教員アドバイザーによる助言や金銭的な支援などを行うもので、学生ならではのユニークな「視点と発想」と「熱意と創意」に満ちた自主的・自発的な取り組みを促進して、地域社会への貢献を果たすとともに、学生の社会性の醸成につながることを期待しています。例年、各キャンパスから多数の応募があります。
この事業を活用した取り組みの中で、SDGsに繋がるプロジェクト「『健幸かるた』を用いた小学校での健幸教育支援」は、浜松市が企画する「浜松ウエルネスアワード2023(※8)」で大賞を受賞しました。
未来を担う子どもたちの「ウェルネスリテラシー(※9)」を高めるため、学生が企画制作した「健幸かるた」を活用し、自ら浜松市内の小学校などで出前授業を行い、楽しみながら地域社会への貢献につながる取り組みとなりました。


また、本学では2023年度から「とこは人材育成プロジェクト」をスタートさせました。
このプロジェクトは、学生達の日頃の地域貢献活動やボランティア活動を何らかの形で評価したいとの思いを具体的な形にするものであり、静岡県教育委員会が主催する「静岡県青少年指導者級別認定事業」の1つとして実施しており、活動内容や時間に応じて、青少年指導者の「初級」または「中級」という資格として認定されるものです。
認定されることで学生達の励みにもなり、今まで以上に地域貢献活動が活性化していくことを期待しています。
(※8)浜松ウエルネスアワード … 浜松市が目指す予防・健幸都市の実現に向けた浜松ウエルネスプロジェクトの推進に大きく寄与し、他の企業や団体等の模範となるウエルネス・ヘルスケアに関する事業及び健康経営に関する取組を表彰するもの。
(※9)ウェルネスリテラシー … 健康で、生き生きと、幸せに暮らすことを意味する「健幸(ウェルネス)」についての情報を探したり、活用したりする能力のこと。
地域・企業等との連携事業

地域や企業と連携して実施している活動も多くあります。
本学健康プロデュース学部健康栄養学科の学生は、食品ロスを意識した商品化開発プロジェクトとして、地元で無農薬栽培されているレモンのうち、傷があったりサイズが大き過ぎたりして廃棄していたレモンを活用した製菓用加工品「浜松レモン4ミリ角ミンス」(平出章商店)と、浜松市が収穫量日本一を誇っているセルリー(セロリ)の「規格外品」として廃棄される部分を活用した「れもん小町」を、和洋菓子司「入河屋」の技術協力を得て商品化させて、地産地消と食品ロスの解消というSDGsに資する取り組みを行いました。
このプロジェクトは、浜松市長との懇談会でも紹介し広くメディアにも取り上げられました。また、昨年12月に浜松市がSDGsの達成に向けた取り組みを促進するために実施した「SDGs 未来都市・浜松オープンミーティング」において、取組事例として発表しました。
このプロジェクトは、地域住民や学生をはじめ若者に対する地元農産物への理解や食品ロスの削減の必要性、SDGsに対する意識を高めることを期待し実施しました。また、地元企業と地元農産物を使用したこの活動が地域活性化につながることを期待した取り組みとなりました。

また、本学草薙キャンパスでは、学生評議委員会の取り組みとして、外部から様々なゲストを招いたSDGs講演会を開催しました。
第1回目には、静岡市の職員の皆様を講師としてお招きし、2回目には静岡大学教育学部の田宮縁教授を、3回目には企業(SMBC日興証券株式会社と株式会社静鉄ストア)の方々をお招きして、SDGsとは何か、具体的にどのようなSDGs活動を実践されているのかについてお話しいただきました。
これにより、学生それぞれが社会や地域にどのように貢献できるかを考える契機を提供しました。


これらの事例をもとに、静岡市が、2021年から開催している「SDGsユースサミット」に、当該学生も参加しました。このサミットでは、本学のSDGs活動についての事例紹介やパネルディスカッションに参加し、積極的な情報発信を行いました。
さらに、社会環境学部の学生が学生リーダーとして参加している「三保松原 3Ringsプロジェクト」では、富士山世界文化遺産の構成資産に登録されている「三保松原」の景観保全のための清掃活動とその活動の輪を広げる取り組みをしています。多くの方が参加することで、三保松原の魅力発信につながり、また、より良い保全形態になることが期待できます。SDGsの11番目の項目の「住み続けられるまちづくりを」の達成を目指した取り組みとなり、地域での活動を行っている団体の幾つかに積極的に関わる中で、地域とのつながりと地域貢献活動に取り組んでいる様子も発信しています。
浜松市内の大学連携


本学をはじめとする浜松市内の学生たちは、大学・学部、専門領域の垣根を越え、持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた展示や体験イベントを通じて、『SDGs未来都市・浜松』の推進に取り組んでいます。2023年9月23日(土曜日) 24日(日曜日)、イオンモール浜松志都呂店で、『わが街はままつ大学生交流フェスタ2023』を開催しました。
このイベントは、浜松市内大学地域貢献ネットワーク(常葉大学、浜松学院大学、静岡文化芸術大学、浜松医科大学)と学生実行委員会が主催し、常葉大学を含む25団体、計250名の学生が参加しました。今年で3回目の開催となり、地域の大学と連携した学生主体のイベントとして、浜松市の未来を拓く重要な一歩となっています。
本学浜松キャンパスからは、経営学科、健康栄養学科、こども健康学科、心身マネジメント学科、健康鍼灸学科、作業療法学科のゼミやサークルから9団体が参加し、さらに陸上競技部やボランティアサークルThunderBirdsも積極的に参加しました。
SUN&LEAF(こども健康学科)は、SDGsの12番目の目標である『つくる責任つかう責任』をテーマに、紙パックやペットボトルキャップを使用したカスタネットなどの楽器を作り、音楽と共に楽しい演奏会を開催しました。


中津川ゼミナール(経営学科)は、地元の資源である天竜木材を使用した商品の販売を通じて、SDGsの15番目の目標である『森の豊かさを守ろう』を実践。さらに、天竜木材の活用方法に関するプレゼンテーションやクイズも行い、会場を盛り上げました。
今後も、大学連携を通じて、浜松市および地元企業と連携し、地域の発展に向けて積極的に貢献していく予定です。このような取り組みが、浜松市内の大学と地域社会の結びつきを強め、持続可能な未来を築く一助となることを期待しています。
SDGs施策と学生とのつながりについて
学生達には、SDGsを「自分事」にして捉えて、まずは自分でできることから取り組んでもらいたいと思います。その上で、本学で学んでいることを社会の課題と結び付けて、個人の範疇からさらに枠を広げ、学部やゼミ、グループなどの団体としてできることに取り組み内容を拡大していってもらいたいと存じます。
また、これらの地域貢献活動やSDGsに関する取り組みについて、学生時代に経験したことを強みとして、社会に出てからも地域に貢献できる人材となり、地元と深い関わり合いを持つことで、将来地元に就職し、地元で暮らしてもらえればという思いもあります。
SDGsを取り入れた後の成果と変化


本学では、2022年度から「グリーン・プロジェクト」として、節電や節水など、身近なところからSDGsに繋がる取り組みを学生一人ひとりに呼びかける啓発活動を実施しております。
本学全体の取り組みとして、節電を働きかけたり、学生が学内を見回ったりして、使っていない電気を消したりするなどの取り組みを行っております。
また、浜松キャンパスでは、昼休みの時間に学内にアナウンスを流して節電を働きかけ、草薙キャンパスでは、SDGsの7番目の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という目標に関するマイルールを1人1つ設定してもらい実行することにしています。
そして、これらの取り組みに関連して、学生自ら1,000人規模のアンケート調査を行いましたが、その中でマイルールが実行できたかどうかの問いについては、90%以上がマイルールを実行できたとの回答が返ってきたことから、学生自ら考え、行動に移すことで、SDGsに関して改めて考える良い機会になったものと実感しており、今後も継続して実施していきたいと考えています。
今後の施策
SDGsの取り組みは、特別なものではなく、日々の生活の中でどれだけ繋がりがあるのかという意識を持っているかということなので、まずは「自分事」として身近なところから取り組むとともに、地域の課題を学生達が見つけて、発展的に取り組んでいく中で、大学の使命としての教育研究や地域との連携を図り、社会貢献・地域貢献につなげていきたいと考えています。
本学は10学部19学科からなる総合大学であり、それぞれの学部の専門性を活かして、健康福祉、教育、経済、環境など、様々な分野でSDGsの17の達成項目に貢献できると考えます。本学の地域貢献と紐づけたSDGsの取組を積極的に情報発信するとともに、教職員として学生達の将来につながるようなサポートをしていきたいと存じます。