
SDGs 大学プロジェクト × Takushoku Univ.
拓殖大学の紹介
拓殖大学は、東京都文京区(文京キャンパス)と東京都八王子市(八王子国際キャンパス)にある私立大学です。創立は、1900年(明治33年)で、日本の私立大学としては歴史が古いひとつです。
学部は、文系4学部、理系1学部の5学部(商学部・政経学部・外国語学部・国際学部・工学部)があり、幅広い分野で教育・研究を展開しています。
創立以来、力を注いできた国際教育の一環として、専門性の高い授業や実践的な演習を取り入れたカリキュラムが特徴的で、14カ国の外国語科目、長期留学や海外語学研修など国際社会を学ぶプログラムも充実しています、これらの教育を通して、真の国際人を育成することに取り組み続けています。
文京キャンパスは、文京区本郷にあり、東京ドームや上野公園などの有名観光スポットにも近く、アクセスが良いため、学生生活を充実させることができます。
緑豊かなキャンパスで、伝統と歴史ある教育を受け、豊かな人間性を育むことができる拓殖大学。多様な学部やプログラムが用意されているため、自分の興味や目標に合わせた学びができます。
SDGsを意識するようになったきっかけ
-SDGsを意識するようになったきっかけを教えてください。また、SDGsという言葉が日本で浸透していることについてどう思いますか?
石川 准教授:私自身がSDGsに取り組むようになったのは、もともと開発問題に関心があったからで、その延長線上にSDGsが掲げられただけであって、特別なきっかけがあったわけではありません。ただ、当然「持続可能な開発」という概念の重要性は感じていて、次代を担う世代として、学生たちにはSDGsをより意識していってほしいのです。世代は違えど、私自身も同じ時代を生きる者として、学生たちとSDGsについて考え、意見を交わし続けています。
私は現在、拓殖大学国際学部の教員をしており、”私たちの社会がどうあるべきか”というテーマをゼミ生とともにディスカッションを行うこともあります。SDGsの追究は、私たちの生き方や在り方を問うことだと考えているからです。結局、持続可能な社会とは、みんながハッピーになる社会であり、そのために自分自身がどう生きていくかを考えていくことだと思うのです。
ともすれば、言葉だけが先行しがちですが、SDGsが単なる流行で終わってほしくないと願っています。SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された時がスタートではなく、それまでの永年の議論の積み重ねの上にあるものなのです。私自身は1992年に開催された国連環境開発会議(UNCED:地球サミット)の頃からですが、その重みを感じながら、貧困や環境、人権、紛争などの持続可能性の問題に取り組んできました。
2019〜20年にかけての10ヶ月間、石油に依存しない社会に移行していこうというトランジションタウン運動発祥の地、イギリス・トットネスで家族と共に過ごしました。まさにサステナブルなまちづくりに取り組んでいる場に身を置くことは貴重な経験でした。しかし、そこではあまりSDGsという言葉を耳にすることはありませんでした。トットネスと人たちと触れ合うことで気づいたのは、そもそもSDGsなどを掲げずとも、彼らはサステナブルな生き方・在り方を実践できていたのです。日本ではSDGsが浸透しているのは素晴らしいことですが、それが文化となっているトットネスに比べ、どこかファッションとしてもてはやされ、浮かれた感じがあるように感じます。
-SDGsに取り組むようになったきっかけは、先生自身の関心から来ていたということですね。SDGsが世界的に注目されるようになった理由について、何かご存知ですか?
石川 准教授: そうですね。むしろ注目されるようになったというよりは、社会が求めるものが形となっていったというふうに私は捉えています。私たちが生きている間に起こった課題に対し、世界中の人が真摯に向き合って対話する過程で出てきた社会の要請なのではないでしょうか。先ほども話したように、私が持続可能な開発の問題に取り組むようになったのは1990年代頃からです。その頃、学生であった私は国際協力に興味があり、将来は国連職員になりたいとも思っていました。まだSDGsという言葉はなかったですし、一般の人たちが国際協力やNGOに興味を持つようなことはあまりなかった時代です。今でも十分な理解があるとは思っていませんが(笑)、SDGsへの認知が広まったおかげで、そのような問題に対する意識が少しずつ高まってきていると感じます。事実、LGBTQ+への理解は進みましたし、搾取されないような働き方改革のような動きが出てきたりしたのはその証です。
そうした現代のいい風潮を学生たちと感じ取り、共有することで、彼らが実際に未来を形作っていく人材となっていくよう、期待をしています。
学生チャレンジ企画
-持続可能性について取り組んでいらっしゃると思いますが、具体的な取り組み内容を教えていただけますか?
石川 准教授: 拓殖大学には「学生チャレンジ企画」という学生支援の制度があります。社会課題に対し、学生が面白い解決アイデアを提示したら、最大で30万円の活動資金を出してもらえるというものです。
私のゼミでも毎年のように企画を出し、何度か採択されたことがあります。例えば、2019年度には「笑って学ぼうSDGs!」という企画が優秀企画に選ばれました。当時、ゼミにはお笑い好きな女子学生がいて、芸人の力を借りて、SDGsの認知を高めようと言い出したのです。まだ今ほど認知度が高くなかったこともあって、そういったアプローチの必要性があったのです。貧困や社会問題にまじめに取り組むことも大切ですが、私たちはもっと多くの人が参加できる場を仕掛けたかったのです。
石川 准教授: 最初は、吉本興業に問い合わせをし、協力をお願いしたのですが、ギャラが高く、それだけで支援金がなくなってしまうので、泣く泣く断念しました。すると、この企画を面白がってくれた他学部の先生が、地元八王子でお笑い芸人をマネジメントしている方に繋げてくれ、良心的なギャラで協力してもらうことができたのです。そして、とうとうオープンキャンパス内の一企画として、高校生対象のクイズ形式のお笑いワークショップの実現へと漕ぎ着けたのです。当日はおよそ60人もの高校生とその保護者が参加してくれました。ワークショップでは、たくさんの笑い声が洩れ、「笑って学ぶSDGs」という名にふさわしいイベントになりました。参加した高校生からは、「面白かった」「楽しく学べたのでSDGsに興味が湧いた」という意見が寄せられ、ねらい通りの成果を得られました。また、このイベントは日本経済新聞の「SDGsを促進する大学」という欄にも掲載されました。
様々な苦戦をしましたが、高校生のSDGsの認知度を上げる一助となり、最終的にはお笑い芸人と共演したという経験も得られ、素敵な機会となりました。同じ未来を担う高校生たちにインパクトを与えることができたことに加え、プロジェクトを通じてどうやって社会が回っているかに気づいたり、人は意外と動かないこともあるという「ある種の失敗」も経験できました。こうした自分たちが課題だと思ってることをどうやったら解決できるのかという経験や学びが、社会に飛び立っていった後にとても活きてくるのだと思います。
-学生チャレンジ企画というプロジェクトの起こりをご存知でしょうか?
石川 准教授:その辺は企画した側ではないので分からないのですが、私の印象では、拓殖大学の職員には「拓大愛」と呼んでいいような熱さを感じます。学生たちに何かしたいとの強い思いがあったら、なんとかしてあげたいというおせっかいにも似た感情が湧き上がってくるようなのです。そうした熱意を支援する文化が根付いているように感じます。また、大学が社会貢献を求められるような時代の要請もあったと思います。そうした背景の中で、学生チャレンジ企画が生まれたのではないかと思います。大学が学生たちの熱意やアイデアを支援し、社会貢献につながるプロジェクトを実現することで、大学と社会をつなげ、世界をより良くしていくことができると考えられたのではないでしょうか。
-色々なチャレンジをするときの学生の熱量ってどこから来るのでしょうか?
石川 准教授:今年のゼミ生が12期になりますが、正直な話、そこは永年の課題で、どうやったら学生たちの熱量を上げていけるのか、試行錯誤している段階です。
例えば、先日、ゼミの春合宿を行ったのですが、全員が参加してくれるわけではありません。参加したとしても渋々参加してくる学生もいます。それでも、参加してしまえば、最終的には「何かヒントをもらったぞ!」というような、本当に生き生きとした表情をおおよそが見せてくれます。
学生たちは、たかだか20歳になるまでの経験しかないので、その限られた範疇での興味関心で動きます。食事に例えれば、自分が好きなものしか食べず、手っ取り早く取り入れる「偏食」と「ファーストフード」の傾向があります。それは心身に対して決して健康であるはずがありません。彼らがもし30歳や40歳になったら、きっと20歳と同じ判断はしないでしょう。経験値を増した未来には、選択肢を増やした成長した彼らがいるはずなんです。だから、時に意思とは逆の選択をしたくなるよう、仕向けることも必要です。学生たちが多くの”気づき”を得る場に乗っけてあげることが、教員の大きな役割だと感じます。教えることよりも、コーディネーター的な役割が大きいのかもしれません。学生たちが経験できる場所を提供し、そこにうまく乗っけてあげれば、自動的に成長していくものです。最も重要なのは、その場で納得のいくまでとことん対話することと、自分自身への問いかけだと思います。
高校生へのメッセージ
“SDGsに取り組むようになったきっかけ”でも触れましたが、ゼミ立ち上げから一貫して「持続可能性」の問題に取り組むことは、私たち自身のあり方・生き方が問われているのだと話してきました。持続可能な社会の実現に向けて、今後も、将来を担うゼミ生とともに、関心のある社会課題を議論し合い、解決への道を模索できたらと考えています。
単に机上で勉強するだけでなく、「失敗」も含めた多様な経験を得る、つまり本質的な学びを追究したいと望む高校生の皆さんと一緒に活動できる日を楽しみにしています。