
SDGs 大学プロジェクト × Yokohama City Univ.
目次
横浜市立大学の紹介

横浜市立大学は、神奈川県横浜市にある公立大学であり、緑豊かなキャンパスで知られています。国際教養学部・国際商学部・理学部・データサイエンス学部・医学部など、多様な学問領域をカバーしています。また、2018年には首都圏初となる「データサイエンス」学部を開設しました。
横浜市立大学は、地域との連携にも力を入れており、横浜市を中心とする神奈川県内で行われる多彩なプロジェクトやイベントに積極的に参加しています。また、留学制度も充実しており、海外の大学との交流にも力を入れています。
学生生活においても、様々なサークルや部活動が活発に活動しており、学生同士の交流を深めることができます。また、就職支援やキャリア支援にも力を入れており、学生の将来の進路に対するサポートも充実しています。
横浜市立大学は、グローバルな視野を持ち、地域に貢献する人材の育成に取り組んでいます。将来に向けて豊かな知識と経験を身につけ、社会で活躍するための力を培うことができる、魅力的な大学です。
SDGsに取り組まれたきっかけ

Interviewer: 取り組まれたきっかけについて教えてください。
Interviewee: はい、横浜市立大学は、横浜市が設立した大学です。横浜市は2018年度内に内閣府より「SDGs未来都市」に選定され、SDGsを推進している都市であることから、大学もその方針に沿って進んでいます。学長からは、2020年に、SDGsを全学的な取り組みとして進める方針が発表されました。SDGsの専門的な組織はありませんが、大学全体で目標達成に取り組んでいます。
Interviewer: 学長自身は、どのようなきっかけでSDGsを始めていこうというようなお考えになったのでしょうか。
Interviewee: 学長ご自身はSDGsについて社会的な要請が高まる中で、大学としても全学的に進めていくことが必須であるとの認識をされていました。そうした中、学長が出席している国の会議などでも、社会的責任や持続可能性について議論が進んでいること、また横浜市がSDGs未来都市であることなども踏まえ、学長が就任された、2020年にSDGsを全学的に取り組む方針が発表されました。
SDGsを推進する最初の一歩
Interviewer: SDGsを推進するうえで、最初に行った取り組みは何でしょうか?
Interviewee: 大学では、まず学生や教職員が行っているSDGsの取り組みを調査することからはじめました。また、本学には、病院が2つ(附属病院と附属市民総合医療センター、以下センター病院。)ありますが、病院部門におけるSDGsの取り組みも集約をしました。そして、法人全体としてどのような取り組みをするかについては、国の「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」に参加し、地域人材や国際化に関する情報収集を行いました。他の大学と情報交換を行うことで、自分たちの取り組みに生かすことを考えています。
Interviewer: 新しいSDGsの施策を打ち出すのではなく、現在抱えているリソースや積み重ねてきた実績からSDGsのどこに該当するのかを再確認したということですね。具体的には、大学全体の活動を把握し、教育や研究の中でどの目標達成に寄与するのかをシラバスや研究においても17のゴールに紐づけたということですか?
Interviewee: はい。大学全体の活動は教育・研究も重要になりますので、例えば教育の部分では、各科目がどの目標達成に関係するのかをシラバスに記載し、研究においても先生方の研究がどの目標達成に資するのかをマークして紹介するようにしています。そして、去年から全教職員向けのSDGsの研修も始めています。
Interviewer: シラバスにSDGsに紐づく内容が盛り込まれたとのことですが、学生からの反響はあったのでしょうか?
Interviewee: SDGsに対する学生たちの興味関心は高く、各授業で学んだことを元に、SDGsにどう貢献できるかという観点から様々な活動が生まれています。
Interviewer: SDGsが評価項目の一つとなっているような科目もありますが、大学の教員から見たSDGsはどういう風に受け止められているのでしょうか?
Interviewee: 個々の教員によって異なると思いますが、自身の研究をSDGsに関連付けることで学生や社会の関心が高まり、「この研究がどんな社会課題解決につながるか」を明確に示せるようになったのではないでしょうか。企業側からもSDGsに関する取り組みが注目されており、教育分野においてもSDGsを直結させる取り組みが進んでいます。
SDGs施策の内容
薬の適正使用に向けた情報発信
Interviewer:「世界患者安全の日」 のイベントについて教えていただけますか?
Interviewee: 9月17日の「世界患者安全の日」に合わせて、病院内で薬の安全や正しい使用法などについての啓発活動を行いました。「世界患者安全の日」は、「患者安全を促進すべく世界保健機関(WHO)加盟国による世界的な連携と行動に向けた活動をすること」を目的として、2019年にWHO総会で制定されました。患者安全を促進することへの人々の意識、関心を高め、国際的な理解を深めるとともに、普及活動を推進しています。2022年のテーマは「Medication Safety(安全な薬物療法)」で、スローガンは「Medication Without Harm(害のない薬物療法)」でした。
Interviewer: どのような活動を行いましたか?
Interviewee: 9月の1ヶ月間をイベント期間とし、大学附属の2病院で薬の安全性について啓発する活動を行いました。具体的には、病院内各所に正しい薬の使い方に関するポスターの掲示、入院患者さんに豆知識を付した食札の配布、どなたでも閲覧可能な専用Webサイト(下記参照)の公開、などの取り組みを行いました。またセンター病院では2日間限定で、学生にボランティアとして協力してもらって来院者にチラシを配ったりするなど、ウィズコロナ・アフターコロナを意識した活動を行いました。この活動は医療者と患者さんがともに医療チームのメンバーとして、パートナーシップで治療にあたるということを伝えることに主眼があり、まさに17の目標達成に向けた取り組みでもあります。
Interviewer: どのような効果がありましたか?
Interviewee: 来院者の皆さんにチラシやポスターを見ていただくことで、薬を正しく、安心・安全に使っていただくきっかけづくりになったと考えています。また、学生がボランティアとして積極的に協力してくれたからこそ、イベント成功につながったと思います。
▼詳しくはこちら 世界患者安全の日イベント「めざせ、おくすりの達人」 知って得する!くすりとの上手な付き合い方
学生へのボランティア情報の発信やコーディネート、独自プログラムの企画・運営
Interviewer: 市大生専用のボランティアサイトがあると聞いたのですが、本当でしょうか?
Interviewee: はい、登録することで、本学の学生に対して募集があるボランティア活動の確認をはじめ、学生の興味関心に応じたボランティアへの参加などができるようになります。
Interviewer: なるほど、そのようにして参加するボランティア活動は、どのようなものがあるのでしょうか?
Interviewee: 様々な活動がありますが、例えば、NPO法人が行っている子どもの学習支援を本学の学生がサポートするというものがあります。また、横浜マラソンのような地域のイベントにもボランティアとして参加しています。
Interviewer: なるほど、そのボランティアサイトへの登録人数はどのくらいでしょうか?
Interviewee: 例年は平均して400名程度の登録者がいましたが、近年はコロナ禍の影響もあり200名〜300名弱程度に落ち込んでいました。しかし、今年度はコロナも少し落ち着いてきたこともあり、600名近い学生が登録しています。この登録者数は過去最高の規模です。
Interviewer: なるほど、なぜ今年度は多くの人が参加したのでしょうか?例えば、広報活動や学生へのアクションを促す取り組みがあったのでしょうか?
Interviewee: ボランティアに係る周知活動はウェブサイトなどで定期的に行っていました。ただ、それ以上に、学生自身がSDGs等の理解や関心を高めていること、また、近年は授業でもZoom等のオンラインツールの活用が増えていますが、学生がオンラインで情報を得ることが当たり前になってきたことが影響していると考えています。SDGsへの関心という面では、2021年度から、ボランティア支援室が企画・運営する4つの協働プロジェクトや独自プログラムで学生に課題提案したことも大きかったと思います。他にも、コロナ禍で活動が制限される中でも、これからできることを主体的に考え、行動ができる学生が増えていることも要因と思われます。
▼詳しくはこちら ボランティア支援室
データサイエンティスト育成プログラム:YOKOHAMA D-STEP
Interviewer: データサイエンティストを育成するための事業を行っているそうですね。具体的にどのような内容なのでしょうか?
Interviewee: はい、横浜市立大学は、2018年に首都圏で初めて「データサイエンス」を冠した学部を設立しました。そして、東京理科大学、明治大学と共同で、「文理融合・実課題解決型データサイエンティスト育成」プログラム(YOKOHAMA D-STEP)を2018年度から2022年度に実施しました。これは、文部科学省「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」に採択されて展開したプログラムで、横浜市内はもちろん、日本全国の実社会での課題をデータサイエンスで解決できる人材の育成を目指すものです。この事業では、産学官連携のもとで、5年間で約200人の高度データサイエンティスト、約800名のデータエキスパートを実践的に育成することを目標に掲げました。
Interviewer: それはすごい目標ですね。具体的に、どのような方法で育成するのでしょうか?
Interviewee: この事業では、横浜市立大学にあるデータサイエンス学部の知見を活かし、大学間、産業界、行政と協力して、社会の第一線で活躍できるデータサイエンティストを育成するために、3つの教育プログラムを開設しました。また、実践的な課題解決力を養成するため、行政やビジネス課題を用いながら、PBL(Project Based Learning)と呼ばれる問題解決型学習を取り入れています。具体的には、課題設定からデータ収集、分析、プレゼンテーション、実装までの一連のプロセスに対応できるように、受講生の社会展開力を育成することに力点を置いています。オンラインでの学習の場も提供しているので、社会人も参加しやすいようなプログラムになっています。
Interviewer: これは、社会人なども参加できると言うことでよろしいですか?
Interviewee: はい、その通りです。最近では、社会人でも学び直しやスキルアップをすることが求められるようになっています。そのようなニーズに応えるために、リカレント教育というプログラムが注目されています。このプログラムは、卒業証明書を取得することはできませんが、理数の知識やスキルを履修したことを証明する証明書を取得することができます。このような証明書は、就職や転職、昇進などの場面で有効に活用されることがあります。横浜市立大学の「文理融合・実課題解決型データサイエンティスト育成」プログラムも、リカレント教育の一つとして位置づけられます。このプログラムには、社会人だけでなく、協定校の大学院に在籍している学生も参加することができます。また、本プログラムを修了することで、高度なデータサイエンティストやデータエキスパートに必要なスキルを習得することができます。そのため、就職やキャリアアップにおいても、有効に活用することができるでしょう。なお、YOKOHAMA D-STEPは2022年度で終了しますが、2023年度からは本学独自の取り組みとして「DSリカレントプログラム」の提供を開始する予定です。
▼詳しくはこちら データサイエンティスト育成プログラムの募集開始!文部科学省「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」始動
ブリスター回収ボランティア

Interviewer: BLUE SEED PROJECTという使い捨てコンタクトレンズの容器(以下、ブリスター)を広く回収するプロジェクトをやっているとのことですが、どのような経緯でそのような取り組みを始めたのでしょうか?
Interviewee: コンタクトレンズメーカーである株式会社シード様に声を掛けて頂いたことがきっかけで開始されたプロジェクトになります。昨今、世界のプラスチック消費量が増加しており、海洋環境への影響が増している中、シード社ではBLUE SEED PROJECTという、メーカーを問わずブリスターを回収し、リサイクルする取り組みを行っています。回収したブリスターは、プラスチック資源として何度もリサイクルし続けられ、また、物流パレットの強化剤としても使用されます。SDGs12、14の目標達成に貢献する内容でしたので、本学でもこの取り組みに共感し、プロジェクトを推進することになりました。
Interviewer: なるほど。そのプロジェクトを広めるために、どのような活動が行われたのでしょうか?
Interviewee: まずは、学内で本プロジェクトの説明会を行ったところ、1年・2年生を中心に多くの学生が関心を持ち、学生団体Clover(シーラバー)が立ち上げられました。
この学生団体の学生たちが、シード社の社員の皆さんと意見を重ね、キャンパスにブリスターの回収箱を設置し、さらには学校内での広報活動や学園祭「浜大祭」でのイベントなどを通じて、この取り組みを広めています。環境保全を考えるだけでなく、学生たちが社会に貢献することの意義や、企業との連携による実践的な学びを経験することもできる、貴重な活動だと考えています。
サステナブル・シーフード

Interviewer: 学生が発案したSDGsに関するプロジェクトの紹介をお願いできますか?
Interviewee: はい。具体的には、「サスシープロジェクト」というSDGsに関する取り組みがあります。このプロジェクトは、授業で取り扱った”とある企業でのSDGsの活動”を学生が知り、大学でも同様の活動をしたいと先生と相談して始まりました。
このプロジェクトは、サステナブル・シーフードの普及を目的としており、過剰漁獲や途上国での不適切な漁業による魚介類の利用を避け、水産資源や環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業や責任ある養殖によって生産された水産物(魚介類)を使ったメニューを提供しています。MSC/ASC CoC 認証の取得事業者のグループに加わり、大学の生協食堂のメニューとして提供され、学園祭「浜大祭」でも特別メニューが販売されました。学生団体の「TEHs」(テフズ)がこのプロジェクトを実現し、大学生活協同組合や学生支援課などからも協力が得られました。国内大学初のプロジェクトであるため、メディアでも取り上げられました。今、注目を集めているプロジェクトです。
▼詳しくはこちら 「今日、サスシーにしてみない?」 横浜市立大学が、生協食堂にサステナブルシーフードを導入するまで
今後の施策
Interviewer: 今後、貴学がどのような取り組みを行っていく予定がありますか?
Interviewee: SDGsに取り組むということは、新たに特別なことをするわけではなく、大学におけるすべての取り組みがSDGsに繋がっているという意識を持つことが大切だと考えています。教職員を含め、意識を共有するために、昨年は研修を行いました。今後は、進めている事業に対するSDGsを軸とした情報の整理や、キャンパスのゼロカーボン化に取り組んでいく予定です。大学という枠組みにとらわれず、個人単位でもしっかりとSDGsに取り組んでいけたらと考えています。