
SDGs 大学プロジェクト × Joshibi University of Art and Design.
目次
女子美術大学の紹介

女子美術大学は、神奈川県相模原市と東京都杉並区にキャンパスを有する私立大学で、通称「女子美」と呼ばれています。女子美は、世界にたった2つ、アジアで唯一の「女子だけの美術大学」になります。1900年(明治33年)に「芸術による女性の自立」を建学の精神の1つに掲げて創立されました。
創立者である横井玉子の志を引き継ぎ、技術や表現についての学びはもちろん、アートやデザインの原点である発想を引き出す多様な教養を身につけることを大切にしており、クリエイターやアーティストのみならず、考える力、生きる力を備えた、社会のあらゆる分野で貢献できる人材の育成に努めています。
また、本年(2023年4月)、杉並キャンパスに開設した「共創デザイン学科」では、多様な領域の人々と一緒に新しい価値を創造することができる「共創型リーダー」を目指した学びの場を提供し、卒業後はデザインスキルをベースにビジネスの中核で活躍できる能力を身につけるなど、将来のキャリア形成を視野に入れた取組みを行ってまいります。
また、本学での学びを通じて、生命や環境を大切に思い、平和で人間性豊かに文化的な社会の創造を先導できる人財を育成するとともに、大学自らもこうした社会の創造を目指し学生とともに歩んでまいります。
SDGsに取り組まれたきっかけ
SDGsへの取り組みは、環境問題への貢献の側面から着手しました。9年前(2015年)に行った工業廃材を新たな価値ある物に再生する「美サイクルプロジェクト」の初期の試みが、後のSDGsへの関与の起点となりました。
このプロジェクトは、若い女性の視点から工業廃材に新たな命を吹き込み、再利用価値を高めるアップサイクルデザインに取り組んだものです。また、環境への貢献をデザインを通じて実現することを目指す中で、学生たちにも環境への意識を醸成させたいと考え、「エコデザイン」をテーマにした授業を開始しました。
その結果、学外からも高く評価される成果物を生み出すことができました。更に、実地経験として企業様の工場を見学させて頂き、物の製造工程と廃材が生まれる理由について学び、そこで頂いた廃材を用いたアップサイクル作品の制作といった充実した授業も展開しています。
SDGs施策における新しい「共創」のカタチ「美サイクルプロジェクト」の誕生

SDGsの目標の中には、「不平等をなくすこと」や「働きがいのある社会の実現」といった重要なテーマが含まれています。これらに貢献する活動についてお話しいたします。
数年前のエコプロ展での出来事ですが、埼玉県の埼玉福祉事業協会「杉の子学園」の施設長様が、女子美のブースに展示された学生たちのアップサイクルデザインに大きな関心を寄せられました。その際、施設の利用者にもアートの創作ができる可能性があるというアイデアが交わされ、この出会いが後に「杉の子学園」と「女子美」が協力して創作活動に取り組む契機となりました。
さらに、このプロジェクトの進行中に、「楽しさと温もりを感じるライフスタイル」を提唱する「B-COMPANY」とも連携が生まれ、産学連携を超えた新しい「共創」の形が生み出されました。これが「美サイクルプロジェクト」の原点です。
「美サイクルプロジェクト」では、協力して製作に携わる「杉の子学園」の利用者の方々に対して、売上金の一部を還元し、自立支援を促進しています。初めは、「女子美」の学生がデザインしたアップサイクル製品を「杉の子学園」の利用者が制作し、「B-COMPANY」で販売する流れでしたが、実際にプロジェクトが進行する中で、利用者の方々のアートの才能に感銘を受け、仕組みの見直しを行うこととなりました。
現在は、「杉の子学園」の利用者が描いたデザインを「女子美」の学生が実現化し、それを「B-COMPANY」で販売する仕組みとなっており、これを「美サイクルプロジェクト」の第二弾として展開しています。
▼美サイクルプロジェクトについてはこちら 美サイクルプロジェクト - 【公式】B-COMPANY ONLINE SHOP
SDGsと「女子美」の環境教育について
廃材を魅力的かつ価値のある物に再生するアップサイクルデザインは、SDGsの目標の1つである「つくる責任、つかう責任」の達成に寄与する取り組みであると考えます。学生たちは、創作材料である廃材が元々の製品の製造過程でどのように排出されるかを、工場見学を通じて学びます。
例えば、不織布という創作に使用する素材について考えてみましょう。これは印刷工場において印刷機の洗浄に使用されるもので、洗浄によってインクが付着します。通常、この付着したインクがあるために不織布は廃棄されることが一般的です。しかし、そのインクのニジミがデザイン的に魅力的に利用できることから、この不織布をアップサイクルデザインによってアクセサリーやバッグなどの新たな製品に再生する試みが行われています。
また、使用されずに廃棄されるだけの車のエアバッグをバッグに生まれ変わらせるアップサイクルデザインも行われています。
こうした創作活動を通じて、学生たちは自然にSDGsの目標達成に向けた取り組みを行っています。また、本校の環境教育では、町工場や企業、障害者支援施設である「杉の子学園」、販売店である「B-COMPANY」など、様々なパートナーシップを築いています。これにより、SDGsの達成目標の1つである「パートナーシップで目標を達成しよう」という側面も学生たちがプロジェクトを通じて学ぶことができる環境が整っています。
SDGsを取り入れた後の成果・変化
SDGsの理念を理解することで、学生たちはより広い視野で社会を知る機会を得ることができると考えています。また、アップサイクルの実践を通じて、社会を支えているのは一般的に目にすることの少ない町工場などの中小企業であることに気付くことができます。この事実を認識することには重要な意義があると思います。実際に町工場を訪れる際、社長自らが歓迎してくださり、貴重なお話を伺う機会が多くあります。町工場の経営者たちは、皆様芯が強く、高い志を持って仕事に取り組んでいらっしゃることが。こうした経験を通じて、学生たちは大いなる刺激を受けていることでしょう。
同時に、町工場で目にする様々な種類の廃材は、日常では出会うことのない素材であり、これに触れることで新たな視点を得ることができます。また、廃材を提供してくださる町工場の企業側は、学生が創作したものを見て「廃材がこんな風に使われるのか」と驚きと喜びを感じてくださいます。こうした反応を通じて、学生たちはより貢献したいという意欲を抱くようになり、この気持ちがアップサイクルへの取り組みを後押ししているのではないかと思います。さらに、SDGsの考えを理論的な知識だけでなく、実際の経験を通じて実感できることの意義は大きいと考えています。
現代社会において、多くの企業はSDGsを理解し、実践できる人材を求めていると思われます。社会貢献と経済的利益のバランスを取ることが重要視される中、SDGsの理念を理解し、具体的な行動に移せる人財の育成は非常に重要です。このため、今後もより一層SDGsを取り入れた取り組みを進め、学生たちにその意義を深く理解させていきたいと考えています。
今後の展望について
クリエイターにとって、SDGsの考え方を身に付けることは必須になっていると思います。また、自らの創造性を世の中に役立たせるということは、本学のミッションでもありますので、様々な方法と機会を通じてSDGsへの理解を深め、その理念を身につけ、卒業後は本学での学びを礎に社会で活躍してもらいたいと思っています。
本学では、今後も引き続きSDGsの理念を教育に組み込み、未来のリーダーやクリエイターたちが「共創」を通じて社会に貢献できる人財となるよう育成してまいります。