SDGs 大学プロジェクト × Shiga Univ.

滋賀大学の紹介

滋賀大学は、滋賀県彦根市、大津市の二つのキャンパスを持ち、データサイエンス学部、経済学部、教育学部の3学部を有する国立大学法人です。社会の持続的な発展に貢献し、新たな社会を切り開く価値創造を担う人材を育成するために、「未来創生」型の新しい文理融合教育に取り組んでいます。
滋賀大学での学びでは、多様な学問分野を深く学ぶとともに、総合的な視野に立ち、現代社会に必要とされる基礎力であるリベラルアーツやデータサイエンス・AIリテラシーが重視されており、専門×データサイエンス・AIの掛け合わせにより分野横断型の応用力の獲得を目指すことができます。また、社会との連携にも力を入れており、社会・地域・産業界とのネットワークを積極的に活用した学習を通して、環境保全に関する研究など、地域や社会の課題に対して積極的に取り組んでいます。このような活動は、世界を導く新たな価値創造を体験から理解するとともに、実践に必要な知識・能力の獲得の機会を提供しています。

SDGsに取り組んだきっかけ

ー滋賀大学では、SDGsに関連した取り組みを行っているそうですね。先生方の意識も高いとのことですが、他の大学と比べてどのような取り組みを行っているのでしょうか?
産学公連携推進課: そうですね、本学には伝統的に環境系の研究をされている先生方が多くいることから、意識的に環境問題に取り組んでいます。また、滋賀県もSDGsの推進に力を入れており、大学全体で取り組む流れになっています。
実は昨年の7月に、SDGsの特設ホームページを設けました。また、今年度から新しく竹村学長が就任し、大学全体のコンセプトとして「未来創生大学」を掲げており、湖国から世界へ広がる知の拠点としてSDGsに取り組む方針を打ち出しています。
ー滋賀大学でSDGsを浸透させるためにどのような取り組みを行っているのでしょうか?また、課題感や学生たちのSDGsに対する理解についてもお聞かせください。
産学公連携推進課: 本学では、様々なSDGsに関する取り組みを行っているにもかかわらず、十分に周知できていない気がします。また、キャンパスが彦根と大津に分かれているため、キャンパス間でも取り組みの共有が難しいという課題もあります。
しかし、SDGsに取り組む企業との関わりを持つ場面や、学生が企業を選ぶ際にSDGsが重要視されるようになってきたため、学生にももっとSDGsついてしってもらいたいと感じています。
大学の取り組みがはじまった2019年当時は、SDGsについてあまり聞いたことがない学生が多かったのに対し、2020年以降は、中学・高校でSDGsの授業が取り上げられるようになり、学生たちのSDGsに対する理解度が段々と上がってきています。

ただし、SDGsを知っているだけで、自分ごととして行動に移すことができる学生はまだ少ないようです。大学の先生の中にも、自分の研究がSDGsに該当するのかということについては気づいておられない先生もおられます。
地域連携教育推進センターでは、SDGsという言葉よりも「サステナビリティ」という言葉を使うようにしています。単なる流行語にとどめるのではなくSDGsの理念を継続して実践していきたいという思いがあります。

SDGs施策の内容

もったいないパントリー

ー地域連携教育推進センターでは、学生の教育プログラムにどう組み入れるかが重視されているとのことですが、まずはフードパントリーが始まった経緯について教えていただけますか?
産学公連携推進課: 本学では「もったいないパントリー」として活動しているフードパントリーでは、学生が持続可能性を考えることを大切にしています。フードパントリーは、食品ロスを減らすために大学内に食品庫を作り、必要な学生たちに無料で提供する取り組みです。
当初は地元のフードバンク彦根さんから定期的に食品庫で配布する食材を提供してもらっていましたが、現在は大学生もボランティアとして呼びかけに参加し、フードバンク彦根さんに協力しています。
その後、参加していた学生たちが、サステナビリティ研究会というグループを作り、「食品のロスを減らそう、必要な人に届けよう」を合言葉に 大学内で食品ロスを食べ物に困っている学生たちに配る活動を行っています。

サステナウィーク

ーなるほど、それと並行してサステナウィークという取り組みもされているそうですね。具体的にはどのような内容がありますか?
産学公連携推進課: はい、サステナウィークは2019年から始めた取り組みで、毎年概ね11月にに約1週間かけて、サステナビリティをテーマにした講演会、ワークショップ、体験、上映会などのイベントを開催しています。地域連携教育推進センターが事務局になり、学生や教職員からなる実行委員会が主催しています。教員から学生への啓発活動の意味合いだけではなく、SDGsやサステナビリティに関心のある学生たちが、自分たちの関心ごとを他の学生に広く知ってもらうことも意図しています。
サステナウィークの事務局ともなる地域連携教育推進センターは、サステナビリティ的な活動に取り組む場所だけではなく、企業や地域と学生の交差点として、学生が自分たちのやってみたいプロジェクトを企画し、実行することも奨励しています。例えば、経済学部やデータサイエンス学部で学ぶ学生には、ビジネスや企業の視点も取り入れながら、持続可能な社会づくりとなる取り組みを目指すように指導もしています。
また、学生たちは大学内で自由に出入りできる地域連携教育推進センターを利用して、様々なニーズで活動しています。その中には、ボランティア活動に参加したい学生や、食料を必要としている学生などもいます。

カッパのニラミ

ー去年、環境問題に取り組む学生たちがいたそうですね。どのような活動をしていたのでしょうか?
産学公連携推進課: はい、そうですね。滋賀大学のボランティアサークル「マスターネイチャー」の学生たちが、子供たちに環境問題について啓発するために、オリジナルの紙芝居「カッパのニラミ」を作りました。紙芝居を作成して子供たちに啓発する活動を行っていたそうです。
ーなるほど、素晴らしい活動ですね。地元のメディアでも取り上げられていたそうですが、これらの活動はすべて学生たちが自主的に行っていたのでしょうか?
産学公連携推進課: はい、そうですね。学生たちは自分たちで企画を立て、地域のイベントに参加するなど、すべて自主的に行っていました。教員や学校からの指導は受けていなかったそうです。
ーなるほど、それはすごいことですね。学生たちが自主的に行動しているということは、大学がボランティア活動を推奨しているということでしょうか?
産学公連携推進課: はい、大学では地域連携教育推進センターを設置し、学生たちが外の世界で学ぶことを推奨しています。大学の授業でも、外の人と関わることを目的とした授業が多数あります。また、ボランティア活動も積極的に紹介されています。

SHIGA UNIVERSITY × SDGs

ー大学のホームページで公開されている「SHIGA UNIVERSITY × SDGs」という動画は、大学生の自主的な作成ではなく、大学の授業の一環で作成されたものなのでしょうか?
産学公連携推進課: はい、そうですね。この動画は、大学の授業に参加している学生たちが、大学の先生や職員をSDGs的な視点で取材する企画の一環として制作されました。授業の中で学生たちは、SDGsに関連するテーマを取り上げ、自分たちの視点からSDGsについて考えることができます。
また、この動画制作の背景には、大学の先生たちが自分たちの活動がSDGsに繋がっていることに気づかないことがあったため、学生たちが取材を通じてSDGsの視点から先生たちの活動を再確認することもありました。
ーなるほど、授業の一環で制作された動画なんですね。しかし、この動画のクオリティが非常に高いため、企業とのタイアップで制作されたのではないかと思われます。どうなんでしょうか?
産学公連携推進課: 実際の動画制作自体は学生たちが行いました。ただし、動画のブラッシュアップや最終的なチェックは、情報メディアを専門とする本学の非常勤講師が行いました。また、動画中に登場する画像も、学生たちがイラストレーターを駆使して、自分たちで作成しています。

取り入れた後の成果・変化

ー学生たちがSDGsについて学ぶことで、どのような変化が起きたのでしょうか?
産学公連携推進課: はい、そうですね。まず、学生たちはSDGsについての知識を得て、それが具体的に地域の現場でどのように関係しているかを理解していきました。そして、地域に出て活動する中で、SDGsが自分たちにとっても関係があることを実感し、自分ごととして考えるようになったんです。
さらに、その地域でできることを考え、実践することで、自信をつけ、滋賀県という枠組みを超えて、グローバルな視点で考えられるようになる学生もいました。アンテナの感度の高い学生たちは、早い段階で自分ごととしてSDGsに取り組むことで、自己成長を遂げたんですね。
ー先生方の中でも、SDGsに対する感度が高い方がいらっしゃいますね。そういった先生方からは、取り組みの連絡がありますか?
産学公連携推進課: はい、確かにそのような先生方がいらっしゃいます。時々私たちにも連絡をくださり、こういう取り組みをしていますと報告してくださいます。そのような活動の運営費を支援することもあります。
特にSDGs関連のイベントだけでなく、研究などで社会実装できるかどうかにも意識を向けています。単なるイベントではなく、教育学部の先生方が小学生向けに「学⼒・学習チャレンジアプリ 」を作っている例があります。
このアプリを使うことで、その子供がどの程度の学力レベルにいるのかすぐに分かるようになっています。教育学部としての成果にもなりますし、教育の質の向上につながる取り組みでもあります。将来的には、滋賀大学だけでなく、さらに多くの地域や学校でも活用できるようになると良いと思っています。
ー滋賀大学の学生の進路として、教育学部は主に先生になり、経済学部やデータサイエンス学部の学生は多くが企業で働くと聞きます。そういった学生たちにとって、大切にしていることは何でしょうか?
産学公連携推進課: そうですね。私たちは、学生たちが考え方を身につけることを大切にしています。実際に活動したり、環境ゴミ拾いや食品廃棄物の削減などの活動を行うこともありますが、私たちが本当に大切にしているのは、サステナビリティについて考えることです。
「誰一人取り残さない」という言葉は知っていても、それが具体的に何を意味するのか、現実的にどのように実現するのかを学生たちに経験してもらい、自分ごととして考え、自分の言葉で表現することを促しています。大学生活の4年間で、持続可能性についてじっくりと考える機会を提供し、持続可能性の考え方を企業活動に取り入れる学生たちを育成したいと思っています。

今後の施策

ー他の行政や大学との交流や情報交換について、どのような機会があるのでしょうか?また、滋賀県立大学との関わりについて教えていただけますか?
産学公連携推進課: 他の大学や行政との交流や情報交換については、学生たちが主体となって研究会などを通じて行われています。例えば、3月23日にはサスティナビリティ研究会がロケットストーブを滋賀県立大生と共同で作るといった活動が行われます。学生同士の交流は比較的フレキシブルに行われています。
また、地元の中小企業との協力も試みられています。去年までは中小企業のSDGsの取り組みを学生と一緒に考えるという活動が行われていましたが、企業側もSDGsに飽きてしまっている傾向があります。大手企業ではSDGsをやっているというアピールになるため、本質的にサステナビリティを実践している企業との関わりがまだ不十分です。
このような状況下で、私たちはサステナビリティをより浸透させるために、例年とは異なる切り口や内容を取り入れたサステナウィークを開催する予定です。具体的には、芸術や福祉、農業など、経済学部やデータサイエンス学部ではあまり触れることがない分野のものを取り入れたプログラムを企画しています。大学全体としては、地域との関わりを強めながらSDGsを推進することを目指しています。