SDGs 大学プロジェクト × Hiroshima Institute of Technology.

広島工業大学の紹介

広島工業大学は「新たな価値を創造するものづくり」を通して、豊かで安心な社会に貢献できる技術者を育成しています。

本学は創立から60年にわたり、鶴学園の「教育は愛なり」という建学の精神、「常に神と共に歩み社会に奉仕する」という教育方針のもと、高い倫理観を持った「社会に奉仕する」技術者の育成をめざして教育にあたってきました。

2020年4⽉には、⼤きく変化する社会で未来を切り拓くことのできる技術者を育てる新教育プログラム「HIT.E ▶2024」をスタート。「専門⼒」「⼈間⼒」「社会実践⼒」を養成するこの教育改⾰では、学⽣が能動的に学び、経験を重ね、⾃ら成⻑し続けられるよう重点を置き、社会で活躍できる総合的な⼒を養い、これからの時代で真に活躍できる技術者の育成をめざしています。

卒業生との連携の強化や、社会とのつながりを重視した学びを進めており、地域社会における教育や研究の拠点、すなわち地域社会の創造の拠点となるべく努力しています。

このように広島工業大学は、学生の成長をサポートし、持続可能な社会に貢献できる技術者を育てるために、情熱を注いで教育と研究に取り組んでいます。

SDGsに取り組んだきっかけ

広島工業大学は、1993年に全国初となる環境学部を設立しました。現在は多くの大学が「環境」を冠する学部を持っていますが、当時、日本の大学において環境学部は初めてでした。それまで本学は工学部のみで、工学分野に焦点を当てた教育研究活動を行っていました。環境学部の設立には、本学の創設者である鶴襄先生の強い意向が影響しており、彼は工学技術だけでなく環境問題や自然保護にも熱心な関心を寄せていたことが環境学部設立に繋がったようです。

広島工業大学は工科系大学として科学技術を重要視していますが、便益の追及だけでなく自然環境への配慮を重視する姿勢が根付いています。工学は社会への貢献が大きな意味を持ちますが、本学は社会への貢献だけでなく環境問題に対する意識も高いのです。

SDGsは、環境だけでなく経済など多岐にわたる側面を意識しています。2018年ごろから学内でSDGsの重要性が広まり、2020年に正式にSDGs推進センターを設立しました。このセンターは環境だけでなく経済や社会に関わる目標も意識して、教育・研究をはじめ大学が取り組む様々な活動の中でSDGsへの貢献を推進したいと考えています。

私立大学はそれぞれ独自の建学の精神を尊重していますが、本学の場合は「教育は愛なり」が建学の精神です。SDGsの「誰一人取り残さない」という理念は、本学の「教育は愛なり」という建学の精神に相通じるものであるという点からも、本学がSDGsに積極的に取組むのは必然と言えるでしょう。

SDGsの活動に取り組むまで

まずは、それぞれの教員が行っている研究が、どのようなSDGsの具体的な課題や目標と結びついているのかを明示することにしました。

大学教員が自分の研究テーマを語るときには専門的な見地から述べがちで、往々にして一般の方々からすると具体的な社会的ニーズとの関係が分かりづらいことがあります。そこで関連するSDGsを示すことによって、私たちの研究や教育の内容と社会のニーズとの関係が分かりやすくなると考えたのです。

また、教員が自らの研究を社会的意義の面から再確認する契機にもなり、学内での理解や協力は得られやすかったと感じています。こうして、本学は2020年9月に「SDGs推進センター」を設立しました。

SDGs推進センターの核心メンバー

SDGs推進センターの設立に際し、教員スタッフだけでは不十分と考え、学長に相談のうえで、事務職員も教員と対等なスタッフとして入って頂きました。教育研究の専門的な活動だけでなく、大学が関わる活動全てにおいてSDGsを意識する必要があり、そのためには事務職員の方々にも意識を共有していただく必要があります。大学構成員全体でSDGsを意識することが大切なのです。そして、大学の中で最も重要な構成員である学生を、どのように巻き込んでいくかが重要なポイントだと考えています。

昨年の秋、コロナの影響が収束し始めた頃から、学生たちに声をかけ、仮称「SDGs推進学生幹事団」を立ち上げました。現在12名の学生が積極的に参加しています。参加学生たち自身によって団体名も考案され、「SDGs Action Members(SAM)」と名付けられました。この学生グループは、学生らしい視点でできることを考えながら、活動を進めています。SDGs推進センターのスタッフは正式には教職員に限られていて、SAM学生は正式スタッフというわけではありませんが、実質的にはSAM学生と共に協力して諸活動を推進しようと考えています。

学内におけるSDGsの浸透度

学内におけるSDGsへの認知度は、大変高まっていると言えます。各教員の研究テーマがSDGsのどの目標(Goal)や課題(Target)に関連するかを考慮するとともに、教育面でも、関連する授業科目についてはシラバスに関連するSDGsを明示的に記載しています。SDGsと関連する授業科目を示すことで、学生たちが自分の専門分野とSDGsとの関連性を意識することにつながっていると思います。全ての研究テーマや授業がSDGs関連というわけではありませんが、SDGsに関わる部分は分かりやすいようにしています。

例えば、1年次の必修科目である「自校教育論」という授業では、学長や理事長による講話だけではなく、各学部の専門分野とSDGsの関連性についての講義が行われます。このような取り組みを通じて、学生も自然とSDGsについての認知を高めていると感じます。

学生の主体的な関与を促す方法

本学では、各学年に約1000人の学生が在籍しています。学部や学科も異なる状況の中、全員が同時に行動を起こすことは難しいですが、誰かが積極的に行動を始めると、他の学生も触発されることがあります。大切なのは、中心となって牽引していく学生を育てることではないかと考えています。SDGs Action Members(SAM)は全学の学生グループであり、学部に関わらずメンバーを募集しています。SAMのメンバーが成長し、中心となる存在となってくれることを期待しています。

現在のSAMメンバーの構成は、情報学部が5人、環境学部が5人、工学部が2人と、学部にやや偏りがあります。そのため今後は、より幅広い学生が参加できるよう、センターとしても学生の活動をサポートしていきたいと考えています。

SDGs推進センターの設立と運営成果

この章では、2020年に設立されたセンターについて触れていきます。

センター設立による学生の意識の変化

SDGs推進センターが設立されたのは2020年のコロナ禍で、学生へ直接的に関わることが難しい状況にあり、なかなか思うようにセンターの活動が進められない時期がありました。しかし昨年SAMを結成したこともあり、学生のSDGsへの意識は少しずつ変わってきていると感じます。

今後もセンターでの活動と合わせて、センターを通してSAMへ、そしてSAMから全学生へ、SDGsの活動を広げていきたいと感じています。

地域や企業と連携する活動について

2022年の3月にはSDGs推進センターが企画し、海のSDGsである「ブルーエコノミー」をテーマにして公開シンポジウムを実施。学外の研究者も招いて、広島市の中心部で一般市民向けに開催しました。

海洋における「CO2除去」や「再生可能エネルギー」、「環境」、「行政主導の具体策」についての話題提供のほか、瀬戸内地域におけるブルーエコノミーや持続可能社会についてパネルディスカッションを実施するなど、一般の方にも大きな関心を持っていただける機会となりました。

その他では、地域の一般市民との接点として、公開シンポジウムの他に公開講座、シティカレッジなども毎年開催しています。

SDGs推進センターでの活動以外でも、工業大学である本学は地域の企業との産学連携を重要視して様々な活動を行っています。

例えば本学では2018年に、大学の研究成果を社会に還元するとともに、産学官の共同研究や人的交流など有機的な連携を深め、地域の活性化や産業振興、人材育成といったさまざまな課題の解決に向け貢献することを目的としとして「広島工業大学地域連携技術研究協力会(HITスクエア)」を設立しています。

人材育成に寄与するリカレント教育の推進や、共同研究・プロジェクトによる地域活性化に注力するなど、大学全体で、持続可能な社会の実現に向けて地域や企業と連携を深めていきたいと考えています。

将来への展望と取り組みの方向性

本学には、学生が自主的に企画を立て、審査の結果、プログラムが採択されれば最高100万円が支給される「HITチャレンジ(学生自主企画プログラム)制度」があります。今年度のHITチャレンジにおいて、SDGs Action Members(SAM)が提案し、学内でペットボトルの分別回収を推進する活動が進行しています。

この活動は、ペットボトル本体、ラベル、キャップの3つに分別した回収を推進するものです。学生たちは関連する廃棄物処理会社のリサイクル工場を見学するなどして、3分別しての回収が素材再生に有効であることを学びました。この3つに分別回収するためのごみ箱の作成・設置や、分別回収の重要性を啓発するための講習会開催や広報活動などを進めていく計画です。

また、毎年11月に行われる学園祭では、昨年に続きフリーマーケットを予定しています。廃棄されるであろう物を他の人が有効に活用する取り組みを、今年も実施する予定です。

このように、学生たちの自主的なSDGsに関する活動をサポートするとともに、今後も持続可能な社会を目指し、SDGs推進センターとして学内外に働きかけていきたいと考えています。