SDGs 大学プロジェクト × Shibaura Institute of Technology.

芝浦工業大学の紹介

工学部、システム理工学部、デザイン工学部、建築学部の4学部16学科体制の私立大学になります。2014年には文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)事業に私立理工系大学で唯一採択されており、日本のグローバル理工学教育を牽引しています。

現在は、100周年を迎える2027年にアジア工学系大学のトップ10にはいるという目標に向かって教員と職員と学生が協働で前進しています。

SDGsを推進するようになったきっかけとは?

芝浦工業大学の出来事 (システム工学部開設からの歩み)

そちらを話す前に、前提となる芝浦工業大学の出来事をご説明いたします。
遡ること1991年にシステム工学部を開設しました。
システム工学部とは、他分野・異文化と相互理解・交流し、社会や世界の問題解決に取り組み、高い倫理観を持った理工学人材を育成する学部になります。その10年後になる2001年3月に「ISO14001」の認証を取得しました。いまでは、「グリーンキャンパス」という表現を様々な大学で利用されていると思いますが、「グリーンキャンパス」という言葉は本学(芝浦工業大学)で商標登録(商標登録第4584482号)をさせていただいてます。「ISO14001」のこの取り組みを通じて、省エネルギーや、「環境科目」の設定による学生教育などを実現し、貴重な経験となりました。
2008年にはシステム工学部生命科学科が増設され、翌年2009年に”システム工学部”を”システム理工学部”に変更いたしました。分野を横断し新たな枠組みを考えることができることとプロジェクト実践教育を重点的に行っており、社会人基礎力の基礎力をコンピテンシーとして身に着けることをゴールに学部がスタートしました。
システム理工学部では、「総合的問題解決力」、「コミュニケーション力」、「グローバル人間力」と「異文化理解力」を身につけた人材を育成することをテーマとしております。「異文化理解力」ではやはり異文化を理解して グローバルな視点で発想し行動する能力、「グローバル人間力」というところでは性別・宗教・民族の違いに配慮した行動をとり、多様な価値観からなる集団を共通の目標に向かって纏まっていくことができるをテーマに挙げておりました。期待される効果としては、建学の精神(社会に学び、社会に貢献する技術者の育成)に似た「世界に学び、世界に貢献する立者」を挙げております。「多様な価値観からなる集団を共通の目標に向かって引っ張っていくことができる」を目標に取り組みました。

2015年 国連サミットでSDGsが採択

そういったなかで、2015年には国連サミットでSDGsが採択されたという流れになります。
この翌年(2016年)には前述の15年間継続した「ISO14001」を返上し、独自のEMS(環境マネジメントシステム)体制へ移行いたしました。「ISO14001」では「民間企業」を対象とした環境マネジメントの基準であり、費用、人数、場所など大学等の教育機関には向かない側面がありました。そこで本学としては、教職員だけではなく「学生」を参画させることを実現、さらに大宮キャンパスに限定されていた対象地域(サイト)を全キャンパスに広げました。
独自のEMSは環境に関する教育や省エネルギーの実現、教職員・学生が環境改善を実現するための研鑽といった取り組みを推進することに加え、持続可能社会の実現に向けた取り組みが求められており、ついては本学のグローバル化を踏まえ、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)17項目を本学の新しい目標ととらえ、全学的に取り組むこととしました。

大学としての取組みとして、2019年より始動しているTHEインパクトランキングに初年度より参加していることや、2021年に設立された文部科学省の「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」にも参画しております。
また、昨年(2022年)環境省の「脱炭素先行地域」にさいたま市、国立大学法人埼玉大学、及び東京電力パワーグリッド株式会社の4者で共同提案として申請させていただき、採択いただいております。
今、2030年に向けたさいたま市の「地域脱炭素」活動の一環として、「カーボンニュートラル」達成に向けた取り組みを行っております。

世界の時流を鑑みて立ち上げた学問が、SDGsと重なる部分が多かったということでしょうか?

はい。日本で初めてカタカナを使った学部が、本学のシステム工学部になります。
伝統的な工学部はそれぞれの学問分野を掘り下げていく方式でしたが、実社会はやはり複雑であるため、それぞれの専門性を突き詰めることも大切ですが、最終的に実際の社会の課題解決をしていくためには、様々なことを組み合わせ、統合する必要があります。学問と社会課題解決の実践との橋渡しを行うことが重要であるということが、学部設立の理念の重要な背景のひとつではないかと考えています。

SDGsの施策内容について、教えてください

学問によるSDGsへの取り組み

例えばシステム理工学部では、「SDGs入門」、「SDGsとサステイナビリティ」といったSDGsを深く学ぶための授業があります。学生がよりSDGsを学べる環境を整えています。また環境システム学科のカリキュラムの中では、「環境フィールド実習」や「SDGs・環境マネジメント実習」などの実践的な学習の機会を設けています。実習においては、さいたま市内の学校などと連携し、学生主体でSDGsや環境に関する普及啓発活動を行って頂くことでSDGsや環境に関する意識をより高め、省エネルギーやごみの分別などの環境行動の促進を図っています。
「大学コンソーシアムさいたま」が主催している「学生政策フォーラムinさいたま」には大学として積極的に参加しています。市内12大学がさいたま市との連携を結んで、毎年さいたま市長に対して学生チームが政策提案をおこなう、地域連携や教育の観点からも重要なイベントと位置付けられています。本学は2018年から連続して最優秀賞や優秀賞を受賞しています。今年度は「高温化する夏季においても安全に安心して歩けるまちの実現」と題した政策提案を行いました。このように研究教育活動を通じて、積極的に地域との連携も行っております。

組織によるSDGsへの取り組み

SDGs推進室とSDGs推進委員会の構築

SDGsに関する様々な施策や、SDGs宣言、ロードマップ等を組織的に動かしていくためにSDGs推進室を設置しました。また、大学としては、より教員と職員と学生が一体となって活動していく必要があると考えておりましたので、全学的な教職学マネジメントを支える組織としてSDGs推進委員会という委員会を学内に設置させていただきました。
SDGs推進委員会のメンバーには、各学部の学部長や関連する専門領域の先生方などにも参加いただいております。

SDGs学生委員会-綾いと-の立ち上げ

学生が自主的に、自らの力で企画や立案を行うプロジェクト活動があります。本学では学生プロジェクトと呼ばれておりますが、学生プロジェクトの中に2019年に発足したSDGs学生委員会-綾いと-という組織があります。『一人でも多くの人に問題意識を持ってもらう』ために活動している団体です。具体的な活動としては、東大宮クリーン大作戦や東大宮駅周辺の清掃活動を行ったり、廃材の森というプロジェクトでは地域のこどもたちと一緒に使わなくなった材料で、キーホルダーを作ったりとSDGsに特化した活動を行っております。
-綾いと-の活動のなかで一番大きかったのは、2019年に開催させていただいた次世代SDGsフォーラムがあります。さいたま市の市長や本学の学長、慶應義塾大学の蟹江憲史教授にもご参加いただいたフォーラムになっております。

基調講演、パネルディスカッション、ワークショップ、分科会と様々なことを行いましたが、約350人の関係者の方々にご協力いただいて、実施いたしました。
SDGs推進室も大学としてバックアップして、より実践的に取り組みができるように体制を整えております。

学生のSDGsの認知度はもともと高かったのでしょうか?

-綾いと-とは、大宮キャンパス(システム理工学部)に所属している学生が非常に多く、
環境についての教育を多く受けられているためか、自ら活動していきたいという声が多く挙がっていたのでSDGs学生委員会-綾いと-として立ち上がったという経緯があります。
また、大学生に限らず高校生や中学生も日常や授業の中で自然とSDGsに触れておりますので、SDGsネイティブ(様々な社会問題の解決に高い関心を抱く人々)が多い印象です。

カリキュラムによるSDGsへの取り組み

全開講科目のシラバスに、「SDGs関連項目」としてそれぞれの科目がSDGsのどこに貢献するかも記載いたしました。いまでこそ、SDGsを記載しておりますが、以前より環境に関する科目や地域志向の科目等を明記したり、アクティブ・ラーニングとして「受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうような要素」がある科目にはその旨を明記する等、科目の特性と位置づけを積極的に整理して発信する試みを行っており、SDGsもこうした取り組みに沿う形で発信しております。
環境システム学科の事例も紹介致します。環境システム学科は、学科の理念や学問領域がSDGsと関連していることもあり、早い段階からSDGsを意識したカリキュラムの構築に取り組んでまいりました。2017年にはカリキュラムを大幅に改訂いたしました。

カリキュラムを作成するにあたり、特に工夫したことはありますか?

世界各国の共通目標としてSDGsの達成に寄与しつつ、学科としても独自の「SDGs」(S:サービスラーニング、D:デザイン思考、G:グリーンインフラ・エンジニアリング、s:システム思考)を教育の基本方針として掲げることで、国際社会と地域社会の課題解決のための手法を学ぶ場や機会を提供しています。
SDGsで掲げられた社会の課題は、それぞれが相互に関連しています。そのため、対象とした問題の所在をどう捉えたか、そして複数の問題がどのように絡んでいると考えたのか、システム的思考で対象を捉え、議論をすることが不可欠です。いずれもこれまでの社会システムで解決できなかった難題でもあります。だからこそ統合的な解決を図るための新しいアプローチが求められることになります。複数課題を同時解決するような新機軸が必要です。また、ひとりひとりの行動が全ての課題と繋がっていますので、すぐに行動を起こすこと、実践すること、そして目の前の学びと自分自身の将来目標、そして社会の未来とを結びつけて考えることが重要です。
「地域志向活動型アクティブ・ラーニングのカリキュラムマネジメントとSDGs達成に向けての地域課題解決策の実践」と題した学内での特徴的なプロジェクトも展開しており、この中では学生主体のSDGs協働プロジェクトによる地域課題の解決策の実践やSDGsスタディツアーの実施、「サテライトラボ上尾」や「すみだテクノプラザ」といった地域の拠点における活動に学生が精力的に取り組んでいます。

今後の施策について

2026年に開業予定の新施設

2026年に大宮キャンパスに完成予定の新施設があります。
新施設は学生や地域住民が利用できる健康維持の設備や、環境配慮型施設として、PVの設置や高効率の機器の導入を検討しております。
また、ZEB(Net Zero Energy Building:ゼブ)の導入を検討しており、
建物全体としてもSDGsに取り組みを行っていく予定です。

既存施設の見直し

既存施設の見直しについても、照明器具のLED化による効率改善や、既存の冷暖房設備を更新することで機器の高効率の省エネを図っていく予定になっております。また、太陽光パネルの設置も本学の方で検討を行っておりますので、設備の見直しを行ってまいります。