
SDGs 大学プロジェクト × Yokohama City Univ. -Part 3-
目次
横浜市立大学の紹介

横浜市立大学は、神奈川県横浜市に位置する緑豊かなキャンパスを有し、開国の地である横浜にふさわしい、開放的な学風が魅力の公立大学です。
2028年に創立100周年を迎えるこの大学は、国際教養学部、国際商学部、理学部、データサイエンス学部、医学部の5つの学部を擁しています。特に、データサイエンス学部は2018年に首都圏で初めて開設されました。
横浜市立大学は地域との連携にも力を入れており、県内で開催されるプロジェクトやイベントへの参加、地域の課題解決を目指す研究事業、学生によるボランティア活動などが積極的に行われています。また、世界各国の大学や研究所との交流も盛んで、多様な留学プログラムが用意されています。
学生生活においても、様々な部活やサークルの団体が活発に活動しており、学生同士の交流を深めることができます。また、就職活動をはじめとするキャリア支援にも力を入れており、学生の将来の進路に対するサポートも充実しています。
横浜市立大学は、グローバルな視野を持ち、地域に貢献する人材の育成に取り組んでいます。将来に向けて豊かな知識と経験を身につけ、社会で活躍するための力を培うことができる、魅力的な大学です。
「神奈川産学チャレンジプログラム」の最優秀賞受賞プロジェクトがイベントで実現!
2024年の3月30日と31日、江ノ島電鉄の極楽寺駅前広場にて、江ノ島電鉄株式会社と横浜市立大学の学生チームとのコラボによる、マルシェ「えのまる」が開催されました。
今回は、学生チームのリーダー・植木真優さんとメンバーの日比野真奈さん、斉藤心花さんに「えのまる」についてお話を伺います。

ー「えのでん・えのまるプロジェクト」の企画がどのように生まれたのか教えてください。
植木真優さん(以下、植木さん):きっかけは、「神奈川産学チャレンジプログラム」というコンペに大学のゼミ活動の一環として出場したことです。
「神奈川産学チャレンジプログラム」とは、神奈川県に拠点を置く企業が抱えるそれぞれの課題に対して、学生が解決策を企画・提案するというもので、37社の企業から課題が提示されました。
その中で私たちが取り組んだ課題が、江ノ島電鉄の「公共交通を活用した高齢者の外出機会の創出や促進策の提案」でした。この課題を選んだ理由は、江の島は横浜市立大学からも比較的近く、江の島を走る江ノ電には親しみがあったこと、また私たちが所属している原広司ゼミ(医療経営論)のテーマが、健康や医療に関するもので、高齢者の外出促進に関係があったことからでした。
日比野真奈さん(以下、日比野さん):高齢者の外出促進策を考えるにあたり、最初に実施したのは、江ノ電沿線に住む高齢者の方々へのインタビューです。「江ノ電を利用して外出していただくための方法」を探るために、七里ヶ浜駅や湘南海岸公園駅、他にも駅近くのスーパーなどで取材を行いました。
具体的には、どのような時に外出したいと感じるか、または外出を避けたいと感じるか、一人暮らしで孤独感を抱いている方が、孤独感を解消するために他の世代の人々と関わりたいと思うか、さらに具体的にはどのようなイベントがあれば外出したいと思うかといった内容のアンケート調査を実施しました。
アンケート調査をもとに、地域の皆さんの声から生まれた企画が、江ノ電の駅で朝市を開催しようという「えのでん・えのまるプロジェクト」です。「えのまる」という名前は、「江ノ電が主催するマルシェ」という意味のほかにも、地域のみなさんが朝市に集う枠組みを作る、という意味合いも込めて付けました。
ー「神奈川産学チャレンジプログラム」に提案された企画が実現するのは、かなり珍しいことだそうですね。
植木さん:企業(江ノ島電鉄株式会社)が開催したいと考えていたイベントのイメージと、私たちの提案した企画がマッチしたことが、実現の大きな理由だと思います。
企業と連携しながら地域の人々と魅力を結ぶマルシェを実現


ー「神奈川産学チャレンジプログラム」での提案の段階では、どのような企画内容だったのですか?
植木さん:実際に行われた「えのまる」マルシェのコンテンツ以外に、提案の段階では、ヨガや運動のスペース、日用品の販売、学生ステージなど、実現には至らなかったものがありました。
私たちが企画した中から一つ、二つ採用したものと江ノ電さんがやりたいと考えていたものを合わせて、「えのまる」のコンテンツが出来上がりました。

ー実施された「えのまる」では、どのようなコンテンツがあったのでしょうか?具体的な内容を教えてください。
植木さん:「えのまる」のコンテンツは、主に5つです。
まず、「はなまるべんとう」の販売です。鎌倉野菜と江ノ電ブレンド米*1を使用した特製花見弁当で、鎌倉市の美食研究家KEIさんが経営されるKEI食堂さん*2に作っていただきました。
「はなまる」という名称は、お花見をイメージした「はな」と、「えのまる」の由来である「みんなが輪になる」イメージの「まる」を組み合わせたものです。使用する食材や内容を考案し、試作段階でいくつかのモデル品を作っていただき、味や見た目について、江ノ電さんとKEI食堂さんとの意見交換を重ねた結果、体に優しく彩り豊かな弁当に仕上げることができました。はなまる弁当は100食限定で販売され、大好評のうちに完売いたしました。
二つ目はお米マイスターによるお米講座です。お米の美味しい炊き方や美味しい食べ方についての講座を行いました。三つ目は、はなまる弁当にも使用されている江ノ電ブレンド米の販売です。
四つ目は野菜の販売で、Rainbows farm kamakuraさん*3が除草剤などを使用せず、土づくりから丁寧に育てられた鎌倉野菜を販売しました。この野菜販売のブースは、私たち学生が担当いたしました。
最後の五つ目は、野菜を使った絵の具のワークショップです。
ーコンペでの企画を実現していくうえで、大変だったことや学びになったことを教えてください。
植木さん:「神奈川産学チャレンジプログラム」で企画レポートを提出した段階では、弁当や地域の食べ物の販売を計画していました。しかし、実際に食べ物を販売する際には、衛生面の問題や容器の選定、販売数や価格、商品説明書の作成など、細かな点を詰めていく必要が出てきました。企画の段階では考えが及ばなかったことが多く、その全てを対応することは大変でしたが、初めての経験だったため非常に勉強になりました。
プロジェクト全体を通して、多くの人とコミュニケーションを取りながら、企画レポートの段階ではまだ抽象的だった内容を現実の形に具体化するスキルを身につけることができたと感じています。
ー実際に「えのまる」が開催されて、地元の方々の反応はいかがでしたか?
日比野さん:告知のポスターを見た方や偶然通りかかった方など、たくさんの方が来てくださり、イベントはとても盛り上がっていたと思います。私たちの作成したチラシを片手に訪れてくださった方も多くて嬉しかったですね。ぜひ今後も続けてほしいという声など、良い反応をいただきました。
心に温かく残った地域の方々との交流

ーこのプロジェクトを通して、印象に残っている出来事を教えてください。
植木さん:たとえば、プレゼン資料や企画レポートの段階では漠然と「野菜の販売ブース」だったものが、実際には鎌倉野菜の販売になったように、自分たちの考えたことが現実の形になっていく過程がすごく面白かったです。
また、えのまる開催当日に、鎌倉FMに電話で生出演させていただいたことも非常に印象深かったです。開催までの過程や「えのまる」への思いなど、さまざまな話題について話をする機会をいただき、非常に貴重な経験となりました。
斉藤心花さん(以下、斉藤さん):「神奈川産学チャレンジプログラム」で最優秀賞をいただいてから実際の企画に移るまでの期間が非常に短く、準備期間も限られていました。しかし、それにもかかわらず、ポスターなどのお知らせのみで多くの地元の方々がご参加くださったことが印象に残っています。これは、鎌倉の温かい地域性と、地元に根付いた江ノ電さんとの良好な関係があったからこそだと感じています。
ポスター作成は、私たちにとって初めての経験でした。プロジェクトの大枠を考えることはこれまでも経験してきましたが、それを具体的な形にするポスターのデザインについては勝手がわからず、難航しました。しかし、江ノ電の社員の皆さんにフィードバックをいただきながら、人目を引き、ポスターを見た人が「えのまる」に行きたくなるようなデザインを共に作り上げることができたので、大変良い経験となりました。
日比野さん:イベント当日、江ノ電さんがウェルビーイングについての調査をされており、私たちもそのお手伝いとして鎌倉市にお住まいの方々にインタビューを行いました。鎌倉市の魅力について質問をしたところ、多くの方々が「自然が豊かで素晴らしい」とか、「山も海もあり、電車が通っているのでアクセスも良い」といった率直な感想を述べてくださいました。これまで、地元の方々とあまり交流する機会がなかったため、子どもから大人までの様々な人々と打ち解けた雰囲気でお話しできたことがとても楽しかったです。
また、野菜販売の際には、お客さんとの会話も楽しむことができました。お客さんから「この野菜はどのように使うのですか?」とよく尋ねられましたが、事前にRainbows farm kamakuraさんにレシピを教えていただいていたので、それをお伝えし、お客さんのお役に立てたと思います。非常に充実感を感じました。
ー「神奈川産学チャレンジプログラム」に出された企画では、毎回開催する場所を変えて江ノ電の利用機会を創出するとありましたが、「えのまる」第2弾が実現する可能性もあるのでしょうか?
植木さん:いまのところ、2回目を開催するという具体的な話はありません。でも、野菜を購入された客さんをはじめ、地元の方々からも「このイベントを続けた方がいいよ」といった嬉しいお声をいただきましたので、もし機会があればやりたいです。
大学はチャレンジできる場所!機会を見つけて挑戦を

ーでは最後に、プロジェクトを支えてくれた方々や地域のみなさん、高校生の読者のみなさんへのメッセージをお願いします。
植木さん:今回のプロジェクトは、私たち5人だけでは決して実現することができなかったものです。私たちの意見やイメージ案を積極的に取り入れようと努めてくださった江ノ電の皆さん、温かく協力してくださった出店者の皆さん、そしてインタビューに応じてくださり、実際にマルシェに足を運んでくださった地元の方など、関わってくださったすべての方に、メンバー一同、感謝の気持ちでいっぱいです。
日比野さん:実をいうと、私が「神奈川産学チャレンジプログラム」に参加したのはゼミの先生に勧められたためで、自分から積極的に出場したかったというのではなく、最初はむしろ大変だなぁという気持ちもありました。でも実際に参加していろいろな方と関わっていく中で、このプロジェクトへの参加が、自分の人生の中で大きな力となっていることに気づきました。
今回のプロジェクトを通して、私自身、大学は今しかできないことが挑戦できる場所だと改めて感じたので、高校生のみなさんには、コンペや留学など、いろいろなことに大学で挑戦してほしいと思います。
斉藤さん:将来、社会に出てどのような職業に就いたとしても、企画する力は必要だと思います。今回のプロジェクトでは、企業の方々に直接いろいろなことを教えていただいたり、私たちが間違っていたときには正しく直していただいたりという貴重な経験を得ることができました。
このような経験を若いうちにできるのは大きなアドバンテージになると思いますので、高校生のみなさんも、機会があればぜひチャレンジしていただければと思います。