
SDGs 大学プロジェクト × Sonoda Women’s Univ.
目次
園田学園女子大学の紹介


園田学園女子大学は、1938年に園田村の村長であった中村龍太郎が、当時、女性には限られた学びの機会しかなかった時代に、女性の教育を推進するために設立されました。
現在は、4学部7学科で、女性のキャリアを育む様々な学びを展開しています。養護教諭、体育教諭、看護師、管理栄養士、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭といった専門性の高い資格取得のほか、2021年4月には、全国でもめずらしい女子大の経営学部を開設。女性の働き方が大きく変化している現代だからこそ必要なビジネススキルを身につけられる学部として、スタートしています。
本学では、すべての教育活動に「経験値教育」を取り入れており、教室で学んだ知識を社会での実践を通じて実感し、多様な人々の考えや行動に共感しながら、次の学びにつなげる循環型の教育が特長です。
大阪梅田から約10分、神戸三宮から約20分、最寄り駅からは徒歩10分というアクセス至便なキャンパスは、都心にありながらも緑豊かで、居心地の良い環境が整っています。
全国レベルで活躍する強化クラブの練習環境として、スポーツセンターやテニスコート、ソフトボールグラウンド、陸上トラックなども充実しています。
2022年3月には、新校舎「欅和館」が誕生。グランピングをコンセプトにしたコモンズ、大講義室(ホール)、コンセプチュアルパウダールームなど、学生の声を反映させた新しい学習環境が提供されています。
さらに、ニュージーランドのクライストチャーチに海外の拠点となる「そのだクライストチャーチキャンパス(SCC)」を設置。SCCを拠点にしたユニークな短期研修や語学留学なども実施しています。
今回は、近年積極的に行っているSDGsに関する取り組みをご紹介します。
高大連携「SASプログラム」

SASプログラム(SONODA Action for the Sustainable Program)とは、進路選択を控えた高校生に向けて大学の学びと社会との繋がりを知る機会を提供する高大連携プログラムです。
実際に身近に起きている地域の課題を知り、解決に向けて自分の興味のある分野ではどんなことができるのかを考えることで、知識や視野の幅を広げることを目的としています。
このプログラムは「保健医療」「スポーツ」「こども教育」「ビジネス」「ライフスタイル」の5分野を設けて1年間を通して全24回の授業構成で行っています。
1学期は分野を決めずに様々な分野の社会人や業界人の話を聞き、多方向の視点から課題を見ます。地元の百貨店や商店街、スポーツ関係の団体、市役所・保健所の方が講師として高校を訪れ、地域や組織の課題を講義を行います。
2学期からは、課題に取り組む領域を決め、5,6名のグループに分かれて課題について考えます。ここでは、ひとつの分野でも別ジャンルにまたがって大学の教員の話を聞けるようにすることで、知識を広げ、決めた領域を深掘りしていきます。
2学期の後半から3学期にかけては深堀りして考えた内容を基にプレゼンテーションを作成し、最後に発表という流れでプログラムは進んでいきます。
このプログラムでは、進路選択の部分をかなり意識して行っています。将来なりたいものが決まっている生徒でも、その選択が間違っていないか、視野を広げることで確認することができます。同じ医療問題でも、看護師からのアプローチや食事からのアプローチ、教育からのアプローチなど、様々な見方をすることで課題感や取り組みが変わることを感じてもらいたいと思っています。
SASプログラム開発の経緯
以前から高大連携は行っており、毎年大学教員が高校に行って授業を行っていました。しかしながら、これまでの実施内容に関して、1年生から3年生まで同一の授業内容を提供し、大学の90分の授業を高校の50分に短縮して行っていたことから、その有益性について疑問の声が寄せられておりました。
2年前、学習指導要領の改定が行われ、学習内容において探究に力を入れる内容に変わり、それに伴って、2年生の授業に探究を取り入れることになりました。
また、単に大学の教授の講義だけでは、学生の専門分野からの視野が広がりにくいことから、授業の進行方法も変更しました。具体的には、地域の課題に通じた現場の専門家の方々にお話しいただき、高校生が「自分ごと」として捉えることができるように、外部の講師を招いてプログラムを実施するようにしました。
一般的な模擬授業は、基本的には講義形式で行われることが一般的ですが、探究型授業はゴールの性質がまったく異なります。探究型の授業は、解答を導き出すために必要な情報を獲得するという意識で講義に臨みます。この点において、一般的な模擬授業とは明確に異なり、その特徴を有しております。
このプログラムは昨年から始まったばかりであり、その過程で改善を続けながら進行しており、まだ最終的な形には至っておりません。現在、5つの領域を設けていますが、視野を広げることを目的としたプログラムであるため、領域の区分や選択方法については改良の余地が存在していると考えております。
高校生からSDGsについて考える意義

民法が改正され、18歳から成人となる今こそ、成人として社会で生きていくために、高校3年間で得た知識や洞察を「遠いところで起こっていること」で片づけるのではなく、身近な出来事にどのように関連付け、理解していくかを意識的に考えることが重要です。大学に行くと研究を進める中で過程が見えてきますが、高校では全ての授業で深掘りすることが難しいため、興味関心のある分野だけでも掘り下げて考えていくことが大事だと考えています。
また、自分で考えたことを表現する力、課題発見をして解決策を考える輪に参画していく姿勢を身につけるためにも高校生の時期からSDGsについて考えることは意義のある取り組みだと考えています。
プログラムに参加した生徒の変化
いまは、各業界の方々の話を聞いて課題を知る1学期が終わったところです。今後は興味を持つ特定の領域に焦点を当て、掘り下げていく段階に入りますので、この段階で大きな変化が見られると期待しております。
学期末に、1学期の講義やフィールドワークを通して、生徒に一番印象に残っていることを尋ねたところ、30%の生徒が塚口商店街の現地見学だと答えました。これは、複合施設やスーパーマーケット、アウトレットなどに慣れている学生にとって、日常生活ではあまり訪れない商店街へのフィールドワークが新鮮だったことを示しています。
また、複合型の商業施設では一番利益が見込める層をターゲットとする一方で、商店街ではもっと生活に直結する、身近な地元に住んでいる人たちをターゲットにしており、こういったターゲットの違いも新たな側面を見ることに繋がったのだと思います。
商店街に次いで印象に残っていたのは、保健所の方の講義でした。講義の中では、世界的に猛威をふるった新型コロナウイルスに関連する行政の対応について学び、実際に保健所が抱えている課題である、誤った情報の拡散に対処する難しさについての話を聞くことができ、生徒たちからも保健所の規模の縮小に疑問の声が挙がりました。
プレゼンテーションについて、まだイメージが不明確な生徒が多い状況です。昨年の2年生(先輩)のプレゼンテーションを見学し、翌年に受講するSASの到達地点を明確にしました。今後、スライドを使用したプレゼンテーションの準備を進める過程で、情報引用の方法や聞き手を説得するための工夫を行う必要があると考えています。
したがって、プレゼンテーションにおける必要となる工夫についてはまだ不明瞭かもしれませんが、プレゼンテーションの最終目標は明確です。今後、より深い反応が得られることを期待しております。
プログラムを通して育成したい人材
現代社会は情報に溢れ、興味を持つ分野の情報に容易にアクセスできる状況ですが、学生はしばしば自身の興味に集中し、他の情報に触れる機会が限られていることがあります。このため、教科書や一般的な情報収集だけではなく、自身の興味を見つけ、それを深堀りしていく力、さらには情報をよりわける力を伸ばしたいと考えています。
また、経験しながら知識を身につけることも大切です。生徒が勇気を持ち、学業と並行して実際に行動し、経験を通じて知識を獲得する能力を育成したいと考えています。興味のある分野において知識を深めつつ、幅広い視点を持つ総合的な生徒を育て上げることを目指しています。
今後の展望

大学の専門分野に精通した教員から高校生の段階で学びを得ることは、非常に有益な経験と言えます。生徒たちには高大連携プログラムを通じて、深く学びながら地域や社会に目を向ける人材になってほしいので、まずはいろいろな所にアンテナを張れるような授業を探り、生徒の主体に即した学習活動を展開し、課題解決の発信を自分たちの言葉で行い、相手を説得するすることができるよう指導していきます。高校教員と教務部の緊密な連携により、学年全体でプログラムを推進し、生徒の進路選択や学問領域の選定に貢献したいと考えています。
来年、初めてSASを受講した先輩(OG)が大学に入学することから、実際に高校を訪れて彼女らにファシリテーターおよびSA(学生アシスタント)となって、授業進行の一翼を担ってもらう構想です。プログラムを経験した大学生が高校生と交流することで、高校生の学びに深みが増すばかりでなく、大学生として自己成長を振り返る機会となるでしょう。このような交流を通じて、SASプログラムがその理想に近づくことを期待しています。
海外提携校とのSDGsプレゼンテーション・コンテスト
大学内でも多くの取り組みを行っているのですが、一例として2022年度に開催したSDGsプレゼンテーションコンテストをご紹介します。
これは、新型コロナウイルスの世界的な流行により、留学が制限された状況下において、海外提携校と連携・交流をはかるため国際交流センター主催で開催されました。
このコンテストは、本学の学生が4つの海外提携校の学生とペアを組み、SDGsの17の目標から選んだテーマに対して、目標の達成と課題の解決に向けたアイデアを練り、それを発表するプロジェクトです。本番では、1つの発表で本学の学生は英語を用い、一方、海外の学生は日本語でプレゼンテーションを行いました。審査員からの英語・日本語での厳しい質問への応答も審査の対象となりました。
これまでにZoomを通じて2回の開催を行いましたが、参加した学生たちは2か月にわたる準備期間、本番、そして質疑応答を通じて、提携校の学生同士の絆も深めるだけではなく、人前で英語を話す自信をつけることができました。
さらに、異なる文化で生活する海外の学生たちの視点は、本学の学生たちにとって非常に新鮮で、日本で当たり前と考えられていることが、必ずしもそうではないという新たな価値観を提供する機会を作ることができたと考えています。
このほか、企業と連携して学内にリサイクルBOXを設置したり、尼崎市やNPO法人とまちづくりに携わるプロジェクトを行うなど、大学全体でもSDGsの取り組みが増えてきています。SDGsプレゼンテーションコンテストも今後、コロナが落ち着いて現地への留学も可能になったことから、オンラインとは異なるアプローチで、さらなる企画も検討していく予定です。