
社会貢献活動 × Kobe Gakuin University.
神戸学院大学の紹介

神戸学院大学は、「真理愛好・個性尊重」の建学の精神のもと、「自主的で個性豊かな良識のある社会人の育成」を教育目標に、創設者である森茂樹博士の意思が今日まで受け継がれています。
1966年に栄養学部のみの単科大学としてスタートし、現在は10学部・8大学院研究科11,000人余りの学生数を擁する神戸市内で最大規模の文理融合型私立総合大学へと発展してきました。
神戸学院大学には、ボランティア活動、国際交流、社会連携など、充実した学生生活が送れるよう教職員や専門家がサポートしてくれることも魅力の一つです。
本学は2041年に迎える創立75周年に向け、「未来と繋がる改革ビジョン2040―人と、地域と、世界と繋がるために―」をという長期ビジョンおよび全学的戦略「神戸学院大学グランドミッション」を策定し、グローバルな視野に立ち、積極的・創造的・国際的な人材の育成を行っていきます。
学生の未来センターとは

神戸学院大学では、学生生活の不安や悩みを抱える方々のために、総合相談窓口である学生の未来センターを設置しています。
このセンターでは、さまざまな悩みを抱える学生の支援に取り組んでおり、必要な場合には大学内の様々な部署と連携しながら解決に向けたサポートを行っています。
また、やむなく大学を退学する選択をした学生に対しても、将来について一緒に考える支援を行っています。学生生活において困難を感じたり、大学を休学したい・中退したいと思ったときは1人で悩まずに学生の未来センターに相談してください。
センターでは神戸市からの後援をいただき、学生の未来に向けた総合的なサポートを提供しています。学生の未来センターは、在学中の学生だけでなく、さまざまな事情で大学を退学した学生も対象としています。
この点が他の大学との違いであり、どんな悩みがであっても、1人で抱え込むのではなく、一度相談してください。相談することで、思いつかなかった解決方法が見つかるかもしれません。
さらに、神戸学院大学の内外や地域との連携も行われており、それぞれの学生に適した学内外の支援機関を紹介することも行っています。
立ち上げの経緯
2019年に、私は大阪府で生活困窮者レスキュー事業に従事し、生活困窮の人々のケースを長期間にわたって分析していました。最初は高齢者が多かったのですが、徐々に年齢層の若い人たちもその対象に含まれるようになりました。
そこでこの傾向に疑問を持ち、調査してみたところ、高校や大学を中退してしまう人が多いことがわかりました。これまで多くの相談に応じてきた中で、そのような問題に気づき、個人的な取り組みでは対応しきれないと感じたため、大学の一つの相談窓口として、総合支援、総合相談の窓口を設置し、センターを立ち上げました。
寄せられる悩み
学生の未来センターに寄せられる悩みは精神的なものから経済的なことまでさまざまです。経済的な部分で例を挙げると、奨学金の問題や支援制度における授業料の援助を受けながらも、自分で生活費を稼ぐためにアルバイトに力を入れすぎてしまい、単位を取得できなくなるという悩みが寄せられます。
最近の傾向としては、比較的大学に入りやすいことも影響しているかもしれませんが、大学の勉強についていくのがつらいという悩みや、思っていた内容とは異なる学びに対する悩みも増えてきました。
大切にしていること
お悩み相談というと、悩みを吐き出したら終了というようなイメージがありますが、学生の未来センターでは、ただ相談に乗るだけでなく、解決を目指してサポートしています。
通常の相談は時間をかけて進めると思われるかもしれませんが、当センターで大切にしているのは、学生がどんな問題を抱えているのかを早い段階で把握し、適切な支援機関を見極めることです。そのため、短期間で学生の状況を把握することに意識を向けながら相談に乗っています。「誰も取り残さない」という考えを基に、困っている学生に適切な情報を提供したり、適切な機関を紹介したりすることも行っています。
また、来室時にはできるだけ緊張しない雰囲気を作り出し、話を否定せずに丁寧に聞くことも心掛けています。
過去にも、3年間にわたってフォローした学生さんが、7年半かけて大学を卒業し、望んでいた会社に就職した事例がありました。留年という周囲から取り残されるような環境で、私たちのような機関が手を差しのべてくれたことで、本当に助けられたと喜んでくれました。その話を聞いて、私たちの活動が意義あるものであると感動しました。
もちろん、悩みは個人によってさまざまであり、大小さまざまですので、途中で来なくなってしまう学生さんもいます。これからも課題が残っていることを理解しています。
地域連携・協力
学生の未来センターでは、神戸市社会福祉協議会や若者サポートステーション、企業などと連携・協力している強みを生かして、学生を適切な機関に紹介をしています。
たとえば、退学を余儀なくされる学生に対して、企業と連携してインターンシップや企業や行政が用意するプログラムに参加させ、さまざまな経験を積むことで次のステップに進むことができるようサポートしています。
偶然にも本学は過去からさまざまな機関と以前から連携しており、すでに個々の機関と信頼関係を築いている方々が多くいます。そのため、必要な時には簡単に連携ができ、京都に次いで大学の多い神戸市において、私たちの取り組みがとても重要だと感じられており、市の協力的な姿勢があります。行政とのコネクションもスムーズであり、神戸市社会福祉協議会とも以前から繋がりがあったため、提案した課題に対しても積極的に動いてくれることで、大変助かっています。
居場所の重要性
近年、居場所にまつわるさまざまな問題が表面化してきています。こどもの孤食・中高生の不登校・高齢者の孤独死。どの年齢層においても、居場所の欠如は本当に社会的な問題だと感じます。日本は先進国の一つであるはずなのに、自殺率が高い国としても知られており、居場所を確保し、悩みを打ち明けられるようなパートナーを見つける仕組みをどう作り上げるかが大きな課題となります。
さらに、現在の大学の取り組みだけでは社会問題を解決するのは難しい現実があるので、このような活動を社会全体に広く知ってもらうことが必要です。また、SDGsの重要な理念である『誰も取り残さない』社会への実現には、Society 5.0となり技術が向上した今でも、困っている人々に適切な情報を届けることは非常に難しいと感じています。
だからこそ、早い段階からの教育や適切な情報をキャッチする力の育成が重要であり、日本の教育の仕組みやカリキュラムには改善の余地があると感じて思います。社会の変容が激しい現代において、核家族化が進み、地域間の交流も減少していることも課題です。文化の継承やつながりの大切さを考えると、人々が多様な環境で出会い、つながるチャンスを持つことが重要であり、そこで築くつながりは危機対応やレジリエンスにも大きく影響を与えると考えます。
幸福度の指標においても、日本はなかなか上がらないことがあります。幸せを追求することだけでなく、日本の弱い面や強い面を理解し、他の国との比較も行う必要があると感じます。日本の所得分布が非常に偏っていることも問題となっており、特に若い世代で最初の一歩が踏み出せない人々が多いという事実もあります。こうした現状を把握し、社会全体に目を向けることで、誤った見方や評価を避けることが重要です。
今後の課題と展望について
近年、ようやく若者の困窮も少しずつ理解されるようになりました。将来の課題として、若い段階から必要な人々に適切なサポートを提供することが求められます。
若者の困窮は、大学の問題だけでなく、社会全体の問題と捉えるべきです。しかし、一つの大学で若者の困窮に取り組んだとしても、社会全体の問題を解決するには限界があります。
そのため、神戸学院大学の学生の未来センターが行っているような活動を社会全体に広く知ってもらう必要があります。
『誰も取り残さない』だけではなく、若い人たちが自分の夢を追いかけながら、未来を見据えて前進することができる社会が実現できるよう、変化する社会と大学がどのように関わっていくべきか、これからも考えていきたいと思います。