社会貢献活動 × Kobe Gakuin University. -Part 2-

神戸学院大学の紹介

神戸学院大学は、「真理愛好・個性尊重」の建学の精神のもと、「自主的で個性豊かな良識のある社会人の育成」を教育目標に、創設者である森茂樹博士の意思が今日まで受け継がれています。

1966年に栄養学部のみの単科大学としてスタートし、現在は10学部・8大学院研究科11,000人余りの学生数を擁する神戸市内で最大規模の文理融合型私立総合大学へと発展してきました。

神戸学院大学には、ボランティア活動、国際交流、社会連携など、充実した学生生活が送れるよう教職員や専門家がサポートしてくれることも魅力の一つです。

本学は2041年に迎える創立75周年に向け、「未来と繋がる改革ビジョン2040―人と、地域と、世界と繋がるために―」をという長期ビジョンおよび全学的戦略「神戸学院大学グランドミッション」を策定し、グローバルな視野に立ち、積極的・創造的・国際的な人材の育成を行っていきます。

社会防災学科設立のきっかけ

今回の取材では、防災を通してSDGsに取り組まれている前林教授にお話を伺いました。まずは、神戸学院大学で現代社会学部社会防災学科が設立されたきっかけをご紹介します。

災害の教訓を授業に取り入れたのが始まり

–先生が防災に取り組んだきっかけを教えてください。

28年前に発生した阪神・淡路大震災です。当時、私は、人間形成論という教育分野の教員をしていましたが、震災がきっかけで防災に取り組むようになりました。震災当日、授業のために大学に向かいましたが、街は極めて深刻な状況に見舞われていました。当然のことながら授業は休講となり、大学に来ていた教職員の中で、学生の安否確認を行うことが急務となりました。私も、学生たちが住む神戸市内や淡路島内を歩き回りました。

当時は、社会貢献の観点から行動に至るのではなく、むしろ状況に迫られた必然的な行動でしたが、この経験が、防災という社会貢献活動を人間形成論の授業の一部として取り入れるきっかけとなりました。

のちに、大学がこのポートアイランドキャンパスを作るということになった際に、当時の学長から、私が授業で取り入れている防災のことを含めたプログラムを作れないか、という提案をいただきました。それで、学際教育機構という組織を立ち上げ、その中に防災・社会貢献ユニットという人材育成プログラムを作りました。このプログラムは、防災に関連する知識やスキルの習得を目指し、防災と社会貢献に特化した専門コースとして位置づけられています。

この取り組みは約10年間にわたり、その後、現在の現代社会学部の社会防災学科へと発展いたしました。阪神・淡路大震災からの教訓を、ただの教訓とはせず、学問的な視点から研究し、将来の世代に教育として継承し、次に起こりうる災害に備えるという大きなコンセプトのもとに展開されています。災害が発生した際に、社会への貢献が可能な人材を育成することが最大の目標です。

また、社会防災学科では、国内だけでなく、海外実習も行っています。社会貢献を広い意味でとらえて、世界の貧困なども含めた国際協力まで研究と活動の幅を広げています。私が理事長を勤めるNERCというNPOには、社会防災学科の教員半数以上に会員として関わってもらい、学生とともに国際支援活動を行っています。

震災を体験していない世代に教訓をつないでいく

阪神・淡路大震災から時間が経過し、現在の多くの学生は震災後に生まれ、実際にその出来事を経験していません。このような背景から、震災を経験していない世代に対して、震災の教訓をどのように伝え、防災に結びつけていくかについてお伺いしました。

–震災を体験していない学生たちに、震災の教訓を自分ごととして伝えていくために、どのような取り組みをされているのでしょうか?

そもそも、自分が経験していない教訓は伝えられない、ということ自体を超えていかなければ、防災は成り立たないものなのです。だからこそ、学問体系として積み上げて繋げていくということが必要です。

古い時代から、歴史が語り継がれてきたように、人間には自分が経験していないことや教訓を理解して語り継いでいく力があります。社会貢献に使命感や興味がある学生たちは、体験した人の話に感情移入もできますし、自分なりに整理をして吸収していきます。語り継ぐ仕組みを作れば、教訓というのは受け継がれるものなのです。実際に、現在は学生たちが語り部として、子どもたちに震災の教訓を伝えています。

学生たちが行う社会貢献活動

ここでは、学生たちが行う社会貢献活動について、さらに詳しくお話を伺いました。

災害時の支援

国内で災害があった際には、学生たちはボランティアとして活動します。大学内には、学生のボランティア活動を継続的に支援する組織である「ボランティア活動支援室」があり、社会防災学科以外の学生もボランティア活動に参加することができます。

まず、教職員と社会防災学科の学生が先遣隊として現地に入り、次に一般のボランティアの学生が入るという流れです。このような手法により、未経験の学生が直ちに被災地に赴くことを避け、専門的な知識を有する教員および学生が最初に活動することが徹底されています。

東日本大震災が起きた際は、当時まだ現在の学科ではなく防災・社会貢献ユニットの時代でしたが、ボランティアとして活動しました。初めの半年間ほどは、ほぼ毎週、東北に行っていましたね。その後、活動頻度は段階的に減少し、2週間に1度、2年目からは月に1回というように、段階を経て回数は減らしていきましたが、今まで 100数十回にも及ぶ回数で東北地域へのボランティア支援を実施してきました。

また、大規模な水害や熊本地震などが発生した際にも、活動しました。
この3年間は新型コロナウィルスの影響により、ボランティア活動が制約されそのような活動はできませんでした。しかし、これからは 災害被災地域への支援を必要とされる際には、その地域においてできる限りの貢献を行っていきます。

啓発活動

多くの人に防災の大切さを伝えるために、啓発活動も日頃から行っています。

幼稚園から高校までの教育機関において、学生が出前授業形式で災害への備えや災害時に命を守る方法についての防災教育を実施しています。これは、次世代を担う若者たちが、さらなる世代に対して防災に関する教育を行うという、重要な活動です。

また、学生たちで構成されたチームによる啓発活動も行っています。「防災女子」という女性メンバーのチームは、週に1回程度の頻度で、様々な場所で啓発活動を展開してます。また、「Seagull Rescue」という男女混合のチームもあり、日常的に啓発活動を実施しています。

他の大学に先駆けた行政との取り組み

ポートアイランドキャンパスにおいて、消防士を目指す学生たちが学生消防団を結成し、消防団の分団として活動しています。これは、非常勤の特別地方公務員としての活動になり、現在では他の大学でも実施されているようですが、本学が日本で初めてこの取り組みを開始しました。

–他の大学よりも先駆けて、行政と関わる組織を設立できた背景は、どこにあるのでしょうか?

やはり、阪神・淡路大震災を経験したということで、大学としての使命感があるのだと思います。特に西区にある有瀬キャンパスは、阪神・淡路大震災の震源地に一番近い4年制大学です。自分たちが被災したということだけでなく、この経験から何か社会に対して貢献できることはないか、という使命感が大きいですね。

さらに、兵庫県や神戸市、神戸市に所在するJICAや防災関連のNGOやNPO、マスコミなどには、防災に関する授業に関わって頂いています。防災・社会貢献ユニットが始まった20年前から続いています。
他の都道府県や市町村では、行政が大学の授業に継続的に関わるというのは、なかなか難しいことだと思いますが、活動の立ち上げ当初から、行政も民間も非常に協力的でした。兵庫県自体が被災しているので、我々と同じような使命感があるからだと思います。

SDGsの観点から

この章では、SDGsという概念が社会に浸透することによって、防災という社会貢献にどんな変化があったのかをお伺いしました。

防災が目指すところは、SDGsそのものである

–防災の取り組みは、20年前から始められていましたが、SDGsというキーワードが浸透したことによって、何か変化を感じることはありましたでしょうか?

これまで、防災は特殊な分野として認識されてきました。しかし、実際には、防災はSDGsに最も深く関連している分野の一つであることを理解する必要があります。

日本国内でも海外でも同様で、どれだけの努力を積み重ねても、大規模な災害が発生すれば、その成果は瞬く間に水の泡と化してしまいます。持続可能性を脅かす要因として、大まかに2つの要素が挙げられます。それは、戦争と災害です。これら2つの要因は、何十年もの歳月を費やして築き上げられた地域、国、そして人々の努力を一瞬で壊す可能性を秘めています。戦争は人間の愚かさから生じますが、災害自体はどうやっても止められないわけです。

災害が発生した場合、被害をいかに最小限に抑え、持続可能性を継続していくかということは、人類にとって重要な課題です。これこそがSDGsの本質であります。
その際、一部の人々だけを救うのではなく、「誰一人取り残さない」という価値観が不可欠です。大規模な災害が発生すると、途上国や国内においても、高齢者や障がいを持つ人々が特に影響を受けやすくなります。

社会全体が、誰一人を取り残さずに協力し、困難を共に乗り越える意識を持つことが極めて重要であり、これこそがSDGsの本質です。学生たちにも、この考え方をもとに使命感を持って活動してくれることを期待しています。

–SDGsを背景としたことによって、学生たちの活動の変化はありましたでしょうか?

学生たちは、勉強以外にも興味を持つことが多く、日々忙しい生活を送っております。ときに、この多忙さがボランティア活動の継続を難しくさせることもあります。

ボランティア活動は本来、自主的に始めるものですが、一度取り組み始めた場合、強制力がないにしても責任を持つべきです。それは、始めた社会貢献活動が、その地域や関係者にとって必要でなくなるまで継続することで、その意義があるからです。

そのことを、常々、学生たちにも伝えています。SDGsを背景としたことによって、やりだしたことに責任もって自分たちでやっていこうという意志は、以前よりも高まっていると感じます。

今後の展望

–今後の展望や、高校生に向けてのメッセージをお聞かせください。

学生たちは、卒業後、多くが防災関連の職に就く一方で、そうでない者も引き続き防災や社会貢献に携わってくれています。こうした卒業生を含む広範なネットワークを、一層丁寧に構築していくことを目指しています。

他大学や異なる組織との連携を通じて、学生同士が連携し、ネットワークを更に広げていけるような活動をサポートすることを検討しています。新型コロナウィルスの影響が落ち着いたので、ようやくそこに向けて動き出せるタイミングが来ました。

高校生へのメッセージ

人間は、1人では生きていけません。一方で、人間は、自分が一番大切な生き物でもありますから、自分のために生きるのはもちろん大切なことです。ですが、半分は自分のため、半分は世のため人のため、という意識を持つことが、 きっと世の中をよくしていき、それが 自分の幸せにもつながるのだということを考えて頂ければと思います。

特に、社会貢献の中で防災に関しては、正確な知識に基づいた行動が大切です。誤った知識に基づいた行動は、自分自身や他人の命を危険にさらすことになりかねません。正確な知識に基づいた行動の重要性を認識した上で、ぜひ積極的に社会貢献活動に参加いただきたいと考えております。

災害時のボランティア活動についてのアドバイス

–災害時のボランティア活動への興味や意識が高いにも関わらず、実際に活動出来ていない学生や、どういう貢献が出来るのかを知らない学生がまだまだ多いのではと思います。災害時にボランティアをしようと考えたときの、情報収集の方法についてアドバイスお願いします。

災害が発生した際、各地域および行政機関はボランティア募集に関する情報をインターネットで提供しています。まず、この情報を確認することが重要です。何よりも、独断で現地に向かわないという意識が非常に大切です。

行政やNPO、NGOが行うボランティア募集に参加するのがよいと思います。個人で現地に向かうことは、迷惑をかけることもあるばかりか、特に災害ボランティアの場合、自身の安全も危険にさらす可能性があります。必ず情報収集を行い、各活動団体の活動に参加し、その指示のもと、現地に向かって頂ければと思います。