SDGs 大学プロジェクト × Nippon Institute of Technology.

日本工業大学の紹介

日本工業大学は1907年に設立認可された東京工科学校を始原とし、1967年に埼玉県宮代町に開学しました。現在は基幹工学部、先進工学部、建築学部の3学部7学科体制となっています。

本学は開学以来、「具象から抽象へ」を掲げ、現物に触れることを重視してきました。この精神を再編した「実工学の学び」を軸として、実験・実習、製図といった自ら手を動かす体験学習と理論を並行して学ぶカリキュラムを展開しています。

その具体的事例の1つが、シミュレーションではない実際のものづくりを体験する「カレッジマイスタープログラム」です。学生は興味・関心がある工房に所属し、1学年から3年にわたり企画、設計、製作・施工まで一貫して取り組みます。現在は13工房が活動しており、SDGs関連の工房も設置されています。

EMS(環境マネジメントシステム)・SDGs活動の経緯

本学の本格的な環境マネジメント活動は、大規模太陽光発電システム導入を契機に、環境マネジメントの国際標準規格であるISO14001の取得を目指すことになったのが始まりです。このため、1999年からNIT環境マネジメントシステムの立案に着手し、2001年6月正式にISO14001-1996版の認証取得に至り、ISO14001 の運用は2018年5月まで継続しました。

環境マネジメント活動はISO14001のもとで大きな進展を見せました。とくに脱炭素社会に向けた取り組みである再生可能エネルギー導入等においては、他の大学で見られない大規模の太陽光発電(310kW)設備を2000年に導入しました。さらに、2009年に150kW、2011年に60kW、2013年に57kWと順次設備増強を行い、総発電能力を580kWとした結果、キャンパス電力使用量の約8%を賄うまでになりました。その間、BEMS*(Building and Energy Management System)の導入や照明高効率化・空調インバーター化等の省エネ化を進め、さらに資源の有効活用を目的とした雨水利用(中水)のトイレ洗浄設備導入など、環境施設の充実を特徴としたキャンパスへと発展を遂げました。また、2001年に学生組織としてスタートした学生環境推進員会による地域連携活動や埼玉県森づくりボランティア参加など、キャンパス内に留まることなく活動の幅を拡げています。

BEMS*とは:建物内のエネルギー利用状況を見える化し、機器や設備を最適にコントロールするための仕組みです。

外部評価

このような全学による環境活動の評価として、CCC(Campus Climate Challenge)実行委員会主催の2010年全国第2回エコ大学ランキングで「私立大学部門第1位」、同2012年第4回で「全国総合順位第1位」(のちに「5つ星エコ大学」受賞)を受賞しました。さらに、2016年エネルギー管理優良事業者「関東経済産業局長賞」受賞や、2016年74回電気使用合理化表彰「電気使用合理化推進者」受賞、他にも低炭素杯2017年「優秀賞」を受賞しました。

学生団体の外部評価

学生環境推進委員会の活動の1つである「リサイクルショップ」が評価され、2016年久喜宮代衛生組合主催の「ごみを減らしてきれいな街づくり」表彰制度の「資源リサイクル推進団体部門最優秀賞」を受賞しました。また長期に亘る学生環境推進委員会による学生主体の環境推進活動が評価され、「令和元年度彩の国埼玉環境大賞優秀賞」を受賞しています。

サステイナブルキャンパスとしての見える化

キャンパス活用ではキャンパスの丸ごと「エコ・ミュージアム」化をうたい、様々な環境施設や防災設備、ビオトープなど環境へ及ぼす影響が目に見えるキャンパスとして創造しています。この「エコ・ミュージアム」化は、在学生に対しての環境教育に加えて、地域の方々にも環境への理解や意識を深めて頂くことを狙いとしており、さらにはコミュニケーションの場としても活用しています。

このように、2001年から17年にわたるISO14001の運用のもとで、学外からの高い評価と毎年安定した環境保全、環境改善効果が得られるようになったことで、本学では学内に環境マインドが十分に浸透してきたものと判断し、2018年6月1日に、本学独自の日本工業大学環境マネジメントシステム「NIT-EMS(Nippon Institute of Technology – Environmental Management System for Sustainability)」に移行し、柳澤章理事長から「NIT-EMS自己宣言」を発出(写真1)しました。

これまでの環境活動に留まらず、本学独自の新たな環境推進活動に加え、社会課題解決に向けた幅広いSDGs目標達成に向けても学生・教職員が一丸となり、さらなるサステイナブルキャンパスの充実を目指しています。

写真1:理事長臨席で「NIT-EMS自己宣言」会議

大学によるSDGs戦略

SDGs活動補助金制度

写真2:「EMS全員大会」で学生が発表

EMS(環境マネジメントシステム)の目標管理の中に、SDGsの視点を盛り込んでいる点は、NIT-EMSの特徴の一つになります。この制度はSDGs17ゴールの目標達成に向けた、本学独自の諸研究・活動を支援し、SDGs活動の活性化を促すものであり、各学科・学群からそれぞれ1件(計8件)の研究が採択されています。また、全教職員を対象に、本学の環境活動について共通理解を深める目的で実施している「EMS全員大会」では、この制度を活用した研究の成果発表をメインイベントとし、研究を担当した学生自身が発表(写真2)を行います。教員のサポートを受けた学生達が、SDGsテーマと位置付けた研究に取り組むことで、SDGsを身近に捉えることができる意義がある制度です。

▼詳しくはこちら
SDGs|日本工業大学

SDGs委員会の発足

写真3:NIT-SDGsホームページのトップ

2020年10月、当時の成田健一学長のトップメッセージとして掲げられた理念「人に寄り添う技術者をめざし、SDGsの達成へ」(写真3)を具現化するための組織として「SDGs委員会」を立ち上げました。ここでは、これまで取り組んできた環境保全活動(NIT-EMS:日本工業大学環境マネジメントシステム)を、より範囲が広いSDGsの多様な目標達成のためのツールと捉え、学生を中心とする諸活動に対する支援と定期的なモニタリングやレビューを行い、SDGs情報の発信や近隣地域を巻き込むコミュニケーターの役割を果たすものとして位置付けています。

SDGs戦略と学生とのつながりについて

学生によるSDGs活動への取り組み

日本工業大学では、ISO14001認証を始めた2001年に、学生組織として学生環境推進委員会も発足しています。この学生委員会では、利根川堤防強化を目的とした森づくり、町との協働で行われる夏祭りや子ども大学といった地域連携活動への参加、新潟県の大学生で構成された新潟環境ネットワーク(N-econet)との「海洋プラスチック問題」の解決に向けて始めたプロジェクトである「全国学生清掃週間(NSCWeek:National Student Cleaning Week)」活動(写真4)の実施、毎年12月に東京ビッグサイトで行われる国内最大規模の環境系展示会イベントの「エコプロ」への出展(写真5)、さらには学生有志のワークショップによる社会課題解決活動「SDGsキャンプin日工大」などを展開してきました。その中から、ここでは、3つの大きなプロジェクトについて具体的に紹介をします。

▼詳しくはこちら
学生環境推進委員会活動記録|日本工業大学の取り組み

リサイクルショップ

当プロジェクトは、SDG12(つくる責任 つかう責任)目標達成に向けた取り組みであり、毎年、春に開催しています。この活動では、その年度に卒業する学生の不要となった家具、家電などを引き取り、学生達の手でクリーンアップしたものを新1年生を対象に展示(写真6)し、希望者に無料で配布・配達を行っています。これは、リユース・リサイクルを身近に感じてもらうという、環境意識向上のための活動ですが、新入生の経済的な負担を軽減することも目的のひとつです。2016年には、「久喜宮代衛生組合ごみを減らしてきれいな街づくり表彰」資源リサイクル推進団体部門において最優秀賞を受賞しました。また2023年には、物価高の背景により、この活動がメディアで話題となり、NHKをはじめとして日本テレビ、TBSなどのニュース番組(写真7)に取り上げられました。

リユース傘プロジェクト

SDG12(つくる責任 つかう責任)の目標達成に向けた活動「リユース傘プロジェクト」は、本学機械工学科3年の学生が考案(写真8)したものです。落とし物傘や研究室で眠っている余り傘を再利用し、急な雨で困った際に「NIT-SDGs」シール貼付の傘を、誰でも無料で自由に使えるシステムです。2022年の12月からキャンパス内4か所にリユース傘専用傘立てを設置し、運用を始めました。

また、2023年6月にはこのプロジェクトに賛同をいただいたアクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社から492本の遊休傘を寄贈して頂き、キャンパス内24カ所にリユース傘専用傘立てを拡大しました。6月9日にアクサ白金本社で行われたAXA Week for Good寄贈式(写真9)では、考案者の林大翔さん、学生環境推進委員会委員長の赤澤颯さん、竹内貞雄学長(当時:学長補佐)が招かれ、同社の安渕聖司代表取締役社長から記念パネルを受け取りました。このリユース傘の運用管理と定期メンテナンスを学生環境推進委員会が担っています。さらに、当プロジェクトは、学生によるSDGs活動としてテレビ埼玉により取材・放映もされました。

◇背景
国内の傘の年間消費量は1億2000万~3000万本にのぼり、年間で警視庁の遺失物センターに約30万本届くのに対し、返却率はわずか0.9%に留まります。また、とある廃棄物処理工場では月に20~30トンの傘が焼却処分されています。(日本洋傘振興協議会から引用)さらに、約60cmのビニール傘は、製造から焼却までの過程において、692g-CO2が排出されるというデータもあります。(環境省廃棄物・リサイクル対策部/3R原単位の算出方法より)

▼詳しくはこちら
学生考案のリユース傘レンタルシステム開始

▼詳しくはこちら
本学に492本の傘が寄贈 ~リユース傘プロジェクトに賛同のアクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社より~

大学生の力を活用した集落復興支援事業

福島県主催の集落支援事業プログラム(2023年度)に日本工業大学学生環境推進員会が採択されました。本事業は、高齢化や地域の担い手不足が進んでいる集落において、大学生の持つ発想や行動力、専門技術・知識を活用して、集落地域の復興と活性化を図ることが目的であり、SDG11(住み続けられるまちづくりを)のゴールに直結します。

2023年9月に学生環境推進委員会のメンバーと有志の学生を含む11名で、福島県の只見町塩沢・十島地区を訪問しました。現地では、集落環境を調査し(写真10)、現地の抱える問題などを体感してきました。地域の方たちとの意見交換の場(写真11)では、地元の豊かで美しい自然を守りながら、どう地域を活性化していくかをテーマに、学生一人ひとりが色々な気付きとアイデアを出し合うなど、活発な意見交換が行われました。引き続き2024年度には、学生による地域活性化の提案をもとに、現地での実証事業を実施する予定です。

▼詳しくはこちら
令和5年度福島県「大学生の力を活用した集落復興支援事業」採択

今後のEMS・SDGs活動

日本工業大学は、次世代を担う優れた人材の育成・教育の場であることを標榜し、あらゆる意味でそれにふさわしい、より良いキャンパス環境を構築するとともに、将来に至る持続可能性を実現することを最大の環境目的としています。

今後、地域の拠点である本学が、国、自治体、企業、国内外の大学等と連携して、人材育成や地域の脱炭素化に貢献することが益々重要になってきます。特に人材育成において、持続可能性に繋がる幅広い研究や活動への支援を引き続き推進していきます。

▼日本工業大学のSDGsについてはこちら
SDGs|日本工業大学

▼日本工業大学の環境への取り組みについてはこちら
環境への取り組み|日本工業大学の取り組み